「パン好きなパン子さんの話」
毎年クリスマスが近くなるとあることを思い出す。
誰にも言えず心に秘めていたことをはじめて公開します。
遠い昔、素晴らしいできごとが起きました。
人生ってそんな風に展開することあるんだ。
身をもって実感したと同時になんとも言えない責任を感じてしまったクリスマスの夜……。
同僚のパン子さんは埼玉に住んでいる。
パンが大好きなのであだ名は「パン子」。
休日は都内のパン屋さん巡りをしているそうだ。他にも趣味があって、自宅の壁に容赦なくペンキを塗ったり、一部を破壊したりと自分の好きなようにリフォームをしている。賃貸マンションなのに。
近頃はゼラチンにはまっているようで、色や中身をアレンジしたゼリーを毎日食べているらしい。でも真相はダイエットが目的だったみたい。満腹感を得られるようだ。
「もう、美味しいパン食べすぎじゃないの~。」とか言って茶化していた。そんなムードメーカーなパン子さんが大好きだ。
ゼリーのせいか顔は透き通るような水まんじゅうみたい。(関係ないか)もともと顔の血管が浮き出るくらいの色白さんで肌がすごくキレイだけど、色気はあんまり感じなかった。
ある日、パン子さんがランチを食べているときにお金のことをボヤいていた。パンの都内行脚に飽きてきたので、ついに全国行脚をたくらんでいるよう。
「副業とかすればいいんじゃないですかね~。本業に支障なければ問題ないんじゃないですかね~。」と
モグモグしながらかなりテキトーに軽めのアドバイスをした。
注意:「言葉」には責任を持ちましょう「言葉」で人は動きます。
それから数日が経った。パン子さんの容姿に変化が現れたのだ。いったい何が起きたの?ここ最近なんだかキレイになったんじゃない?いつものカジュアルな服装はどこへやら。色違いで形はほぼ同じワンピースばかり着るようになった。しかも少し派手なんじゃない?って思うぐらいの。
そう、なんとパン子さんがはじめた副業は水商売だった。えっと、副業って言ったけどイメージしたのそっちだったか。ごめん、ほんとごめん、わたし、なんてこと言ってしまったんだろと思い、青ざめながら頭の中で自分のバカバカバカと叫んでいた。なぜか自分を責めていた。あまりにも思っていた副業とギャップがありすぎて。
注意:水商売を否定しているのではない。わたしの選択肢にないってだけ。
パン子さんは言った。
「副業とか言ってくれなかったら、思いきれなかったよ。お金もないままでステキな彼氏もできなかったと思うし、人生が変わったの。ほんとありがとう!」
まぁ、なんと!おまけ付き。
まさか、か、感謝されるとは……。思ってもみなかった。
副業をはじめてお金の心配もなくなった上にお店の常連さんとつきあうことになり、幸せな時間を過ごしていたのだ。
恋するとこんなにキレイになるわけね。へ~納得。と共に行動力に感動しつつ、人って背中押してもらいたいだけなのかもってつくづく思った。
そのあと、あまり日が経たないうちにパン子さんはめでたく妊娠して寿退社していった。
退職した日がクリスマスだった。
わたしは毎年クリスマス近くなるとこのできごとを思い出すのだ。
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