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【読書感想】前の家族

前の家族 青山七恵 小学館

『むらさきのスカートの女』の感じかなと思う。こちらの話のほうが主人公がふわふわとした感じというか自覚がないような気がして、しかも最後まで不安な気持ちのままですっきりした感じはない。もう少し手前で話が終わっていてもいいかなあと思う、ハッピーエンド廚なので。主人公が違和感を感じてもすべてを正当化というか、肯定して受け入れているというかそうして丸くおさめようとしているところがこわい。

話はそれるが、青山七恵さんの本を他に読んだことがない(はず)のでこの方の本がそうなのか、主人公が文筆業という設定だからか比喩が面白かった。一部引用して終わる。

隠しきれていない頬は杏仁豆腐のように白くて滑らかで、思わずスプーンを入れたくなるような感じだった。

青山七恵『前の家族』、小学館、2023、p.12、(ISBN9784093866934)

さあ帰る帰る、両手で網にかかった魚を追い込むように子供たちの背中を押して廊下に向かった。

青山七恵『前の家族』、小学館、2023、p.70、(ISBN9784093866934)

すでに書かれている文字も、ぼんやりしたアイディアも、カチカチに冷凍された具だくさんのスープのように一緒くたになって画面のなかに冷え固まっている。

青山七恵『前の家族』、小学館、2023、p.162、(ISBN9784093866934)


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