私たち人間も自然の一部。地球環境への影響を考えて事業を行うために
シェルグループの新しいミッションにも掲げた「人と自然との共存」。これは、私たち社員一人ひとりに欠かせない視点です。そこで今回は、「人と自然との共存」について、2つのポイントで少し深堀をしてみようと思います。
1.自然がもたらすさまざまな恩恵「生態系サービス」と、2.地球環境の限界のレベル値を表現した「プラネタリー・パウダリー」から、「自然」と「環境衛生サービス」との関わりを考えてみたいと思います。
害獣・害虫も自然界では欠かせない存在
自然から恩恵を受けていることを忘れずにいたい
地球上に生きるすべての生物は、空気や水、土壌など、さまざまな環境を共有し、生態系という関係性をもちながら生きています。もちろん、人間もこの環境下で暮らしています。そして、生態系を守ることは都市の環境衛生ビジネスにおいても欠かせません。
そこで、まずは生態系についてお伝えしたいと思います。
生態系には大きく分けて3つの役割が存在し、それぞれが密接に関係しながら繊細にバランスを保っています。その役割とは、①光合成によって有機物をつくり出す植物などは「生産者」。②植物を食べる昆虫や動物、それらを食べる肉食動物などは「消費者」。③さらには、生産者や消費者の死体やふんなどの排出物を分解して無機物にする微生物・菌類・細菌類などは「分解者」と呼びます。時に、落ち葉や倒木を食べる昆虫やミミズなどの土壌生物も分解者に含めることもあります。
例えば、私たちが害獣・害虫と呼んでいるネズミやゴキブリは、自然界の生態系の中では「消費者」または「分解者」として存在し、土壌に養分を還元する役割を担っています。
「生態系サービス」とは、このような地球上の有機的な生物群集に加えて、日光・気温・水・大気・土壌などの無機的な自然環境が一体となってつくりあげている事象を指します。そしてこの生態系サービスは、私たちの暮らしを心身ともに豊かに支えてくれています。
生態系の概念を知ることにより、「私たち人間の経済活動によって秩序を乱し、この素晴らしい自然の恩恵を損失し、地球を危機にさらしててしまっているのではないか?」という懸念点があることに気付き、危機感をもって事業を推進していく責任があると考えています。
地球環境で、限界に達している項目は?
プラネタリー・バウンダリーの評価から考えること
私たちシェルグループが営む経済活動が、地球環境にどのような影響を与えているのかを考え、周知することも環境衛生サービスを行う私たちの責任だと考えています。
そこで紹介したいのが、「プラネタリー・バウンダリー」という、人間が地球に生存できる領域と限界点を定義する概念です。これは、「気候変動」「海洋酸性化」などの9項目について、「安全領域」から「限界点」までのレベルを可視化したもので、どういった項目で「地球が持ちこたえられなくなる限界」が訪れようとしているのかを知ることができます。
特に「確実に限界点を突破している」とされているのは「生物圏の完全性」「生化学的な循環」の2つの項目で、シェルグループの事業にも深くかかわっている項目です。
「生物圏の完全性が確実に限界を突破している」ということは、わかりやすく言えば「生物多様性の損失が、取り返しのつかないところまで来ている」という意味です。自然が与えてくれる様々な恩恵を受け取るには、生物の遺伝的多様性が必要なのですが、現在40,000種以上の生物が絶滅の危機にあり、とてつもない速度で生物の多様性が失われています。
この、人類が絶滅を早めてしまった生物が担っていた生態系機能が、どのような形で失われてしまったのかはわかっていません。しかし生物の絶滅と同時に、生態系機能も確実に一緒に失われているはずなのです。
「生化学的な循環が確実に限界を突破している」ということは、わかりやすくいえば「地球上における“窒素”と”リン”のバランスが崩れている」ということです。
窒素は、地球の大気の78%を占める主要成分で、生物の体を形成しているタンパク質の合成に不可欠な元素です。リンもDNA構成に不可欠な元素で、生物の成長に欠かせません。必要不可欠な元素であるからこそ、循環によって適切なバランスが保たれている必要があります。
「赤潮」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、海で植物性プランクトンが異常に増殖し、窒素とリンのバランスが崩れ、海の色が赤く見える現象です。
赤潮の発生した海では、大量のプランクトンが魚貝類の呼吸を妨げ、魚や貝が死んでしまいます。そして、その魚や貝が分解していた有機物が分解されなくなり、海に汚れが堆積し、生態系が崩れ、海の水が汚染され、海から得ていた生態系サービスは得られなくなってしまうのです。
本来、窒素の割合は生態系のプロセスにより一定に保たれていますが、人間の経済活動による大規模な化学肥料・農薬・薬品の大量使用によって、生態系がバランスを保つことができる量を遥かに超えてしまっている状態です。
シェルグループの業務で使用する殺虫剤などが、生態系にどのくらい影響しているのか、詳細はわかりません。しかし都市の環境衛生を担う事業である以上、少しづつでも地球規模で持続的な環境衛生管理の手段を模索し、より環境に配慮した手段に変えていく必要があると考えています。
シェルグループも、地球の未来を考えた活動を
私たちの新しいアイデアで
シェルグループは、このような地球の危機を受け止め、その打開策を示す企業でありたいと思っています。現在、地球の環境は悪化の一途をたどっていることから考えると、従来のやり方をそのまま続けていたら地球の危機は免れません。これまでの課題解決のあり方から見直し、新しい方法で事業に取り組んでいく必要があるのではないかと考えています。
同じ時代に経済活動を牽引されている他社の取り組みにも、学ぶべきことはたくさんあります。例えば、産業廃棄物を再生して循環型社会をめざそうという石坂産業さんの活動です。「ゴミ」という概念そのものをなくすという志しのもと、ゴミの資源化に真摯に取り組まれている姿勢に、深く共感しています。
シェルグループも、新しいやり方で未来の自然環境に貢献したい。そんな決意をもちながら、美しい未来を創造するための企業経営に取組んでいきたいと考えています。