秘湯は基本的に山奥にある。
こんな場所を走れるのか?そんな疑問を余所に車が走る。
人生で初めて見る高さの雪。
万が一、車から降ろされたら間違いなく山と一体化してしまう。
それでも秘湯なるものに、雪深い場所に憧れ秋田の山奥までやって来た。
湯治棟、六畳一間。
これだけが自分の空間。その小さな世界が妙に心地良い。
窓から雪に染まった景色を見る。
食事は本陣の食堂に集まり、囲炉裏の傍で。
知らない者同士で食事をする内に、自然と会話が生まれる。
飲んだことのなかった日本酒を振舞われ、これもきっかけと口にする。
山奥まで秘湯を求めてきた者同士、そして宿のおっちゃんの秋田弁がネイティブ過ぎて解らない者同士会話も弾む。
明日どうするか決まっている人、決めていない人。
連泊する人、帰る人、移動する人、様々だ。
まあなんでもいいじゃないか。
ピンとした寒さの中、同じ空を見上げ、同じ湯に浸かり、同じ物を食べて。
人生の中の僅かな時間を共有する、袖摺れの宿を楽しもう。
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