「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」「リアル・ペイン〜心の旅〜」
映画の感想2本まとめて。まずは大好きなペドロ・アルモドバル監督でティルダ様とジュリアン・ムーアという最高の俳優の共演を観られるなんて贅沢な!と楽しみにしていた「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」から。
安楽死という重いテーマを扱いながらアルモドバルカラーのヴィヴィッドなファッションとインテリア、背後にさりげなく飾られるルイーズ・ブルジョワの作品などが彩を添え、「死を見つめ直すことでやはり生きるとは素晴らしい」という人生賛歌に。ティルダ様演じるマーサの、重病人のイメージを覆すミントグリーンやパープルのニット、最期の目の醒めるようなイエローのスーツ。そんな彼女を支え見守る親友イングリッドはブラウンやネイビーなどのベーシックカラーに差し色の赤のバッグ(多分ボッテガ)というシックな出立ちで、それぞれのキャラクターが衣装にもよく反映されていました。
戦場ジャーナリストとして活躍し恋愛もして、やりたいことはやり切ったからこそ自分が理想とする最期を迎える覚悟ができたのだろうし、それにはお金も必要で親友を危険に晒す可能性も高い。誰にでもできることではないし、エゴイスティックな側面もあって綺麗事だけでは済まされないというのもちゃんと描かれていてよかったです。マーサが唯一心残りだった娘に、彼女の想いが受け継がれるラストは心に残る美しさ。
タイトルにもある「ネクスト・ドア」というのも絶妙で、最期の瞬間まで手を握って見守ってほしいのではなく近くで人の気配を感じながら旅立ちたいというのはマーサなりの気遣いと適度な距離感ということだったのかなと思いました。
ピカデリーで観たので、久しぶりにCafe&Meal MUJI新宿に行ったらメニューが絞られていて少し割高に。でも相変わらずプリンは美味しい。
次はジェシー・アイゼンバーグが監督と主演を兼ねた「リアル・ペイン〜心の旅〜」です。従兄弟同士のデヴィッドとベンジーが、祖母の遺言をきっかけに彼女が住んでいたポーランドの家を訪ねる旅へ。ただの思い出を辿る旅ではなく、観ている私たちもポーランドにおけるユダヤ人の戦いと虐殺の歴史を知る旅に出ているような気持ちに。
旅が進むにつれ、ツアーの参加者である離婚を経験した女性、ルワンダ虐殺を生き延びた男性、そしてデヴィッドとベンジーもそれぞれ異なる痛みを抱えていることが明らかに。ベンジーは明るくて正直で人を困惑させたりもするけれど、魅了する力も持っている。そんな彼をフォローしたり戸惑いながらもどこか羨ましくも思っているデヴィッド。「ユダヤ人虐殺の歴史に比べたら彼らの痛みなんて」とつい比べてしまいがちですが、実際は人の痛みの感じ方や大きさなんてそれぞれ違うしそもそも比べること自体が間違いなのでは?勝手に人の悩みや痛みを推し量ったりしないで、その人の立場になって想像してみること。頭では分かっていても、なかなか実際はできていないと反省させられました。キーラン・カルキンの空港での表情が、なんとも言えない余韻を残す良い作品でした。
見出し画像は節分の豆を不思議そうに見ているおかゆ嬢。今週末もまだ冷えるようなので、皆様引き続き体調にはお気をつけて。