#6 『闘う』の幕が開く
散歩、買い物以外は家で過ごす。
『ガン』が確定した訳ではないのでお世話になってる先輩、後輩や友達にもまだ何も伝えられないし遊びにも行けない。必然的に家にいるしかない。
家で過ごす時、テレビは特に見たくなかった。
〇〇さんが亡くなったとか、
あの俳優さん〇〇ガンが見つかった…
こう言うのでネガティブ思考に陥る。
そこに追い討ちをかけて流れくるがん保険のCMからの葬儀屋さんのCM。
ネガティブコンボが決まる!
ドラマや映画も見たくなかった。
気分転換にいいかなと見たドラマのクライマックスにまさかの商売敵が『ガン』で亡くなるなんてのもあった。
だから極力テレビをつけない。
これが最善の策だった。
そんなある夜
ゆ「見たかった舞台が生配信だって!一緒にテレビで
みようよ。」
ゆうちゃんが誘ってくれた。
有名な俳優さん達が沢山出演する、なかなか手に入らないハイパープラチナチケットの舞台。
今回は配信もやるのでチケットを買えば家で観れるらしい。しかも割安!じゃあ見てみよう。
でも、ネガティブが来たりしないかな?
ガンの話入ってくるかな?
テレビをつけて配信のサイトにアクセス。
最初は設定がうまく行かず、開演時間ギリギリで調整が完了。
画面には幕の閉じた舞台。
会場もお客さん何十%かの動員でやっているようだ。
なんかワクワクし始めていた。舞台の始まるドキドキ感。
今シーズン組み立てホヤホヤのコタツの上にお菓子とお茶をスタンバイ。
これは家観劇の特権かもしれない。
ブザーがなり開幕。
どーんと豪華なセットが目に飛び込む。
熱を帯びた迸る役者。
生き生きとストーリーが進んで行く。
時々見せる絶妙な間の笑いはとにかく嫉妬しながら
笑った。
どんどん世界にのめり込んで行った。
途中休憩。
前半の感想を言い合う。
面白かったねぇ。歌が素敵だね。
あそこの設定、ストーリーが良かったね。
あの俳優さんにしか出来ない役だねぇ。
病院以来笑った。
ふと我に帰る
あれ?『もしかしたらガン』ってこと、今忘れてた。
笑ってたら忘れてた。
あんなに怖くて不安でどうしようもなかったのに…
なんだこの感じ?
後半も怒涛の展開に岡安ん家は大興奮!
ゲラゲラ笑って時々しんみり、
ハッとしてキュンとして伏線バクバク回収して、
最後は幸福感が包みこむ。
面白かったぁ。
もう家観劇クセになりそうだ!
フライヤーカッコいいし、グッズも欲しくなってるし。
ゆ「岡ちゃん面白かったね?」
岡「うん、これは最高に楽しいかったよ!ありがと」
ゆ「良かった、元気出て」
岡「なんか出てきたねぇー」
『もしかしたらガン』は頭の隅っこに追いやられて小さくなっていた。気分が本当に軽やか、穏やかになってるのがわかった。
舞台の余韻を楽しみながら、携帯で更にお笑い動画なんか見ながら横になる。
うんやっぱり笑うのいいかも。
これはいいぞ!
そして、この日の夜『闘う』の幕が開いた。
つづく
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