玉砕の美学 47
2024年11月4週
ジャパンカップ当日は久しぶりに現地競馬だった。珍しくまともな貯金馬がいない日だったので、前日の競馬で何とかしたかったが、そう上手くはいかない。それに、2場開催の最終週で、毎年のことながら難しいレースが多い。勝てる気が全くしないまま電車に揺られていると、乗換駅で、競馬とは別件で知り合った電車の青年(彼は鉄オタなのだ)にばったり会った。
到着までぼんやり話した所、ゴールの周辺に場所を確保して、カメラを構えて地蔵(その場にずっと待機)をするという。飲み物も食べ物も持参して、馬券も前日に購入済み。ドウデュース絡みの馬券を見せてもらった。どうですかね?と聞かれてもなかなか難しい。何て好感度の高い馬券なんだ!というのが、率直な感想だ。
現場にいるのに場内の画面で見る私とは大違いである。(この行為をWINS競馬と呼んでいる。)競馬を始めたばかりと言っても、とても殊勝な行動だ。私にもあんな純粋な時代があった。いや、嘘だ。ない。GⅠレースをゴール前で見たことすら一度もない。何故WINS競馬をするようになったか?馬券を買っていると、馬場の競馬は見づらいからだ。私の競馬は早々に馬券が中心になってしまった。別に後悔はないけれど、多少の羨ましさはある。
さて、そのJCデー当日の東京1R、二歳の未勝利戦だ。◎はヘルヴェティオス、最終的に1番人気だった。相手もショウナンカチドキ、アイアムイチバン、スリーソング、順に4,3,2番人気で、これでは三連複を15点も買っていたら、利益が出ない。他の3頭の中には穴馬もいたのだけれど。
なら、三連単にするかと、朝一からフォームを乱すのである。1-3-6の三連単15点なら、トリガミになることはない。レースはヘルヴェティオスの行き足が遅く、不穏な位置にいたが、ぐんぐん巻き返して、4角では好位、直線で前にいたショウナンカチドキとスリーソングを捕えれば、安目だが的中だ。
その3頭の並びの最内にもう1頭いて、それがクリプトス。13番人気で単勝は301.7倍、私、この馬を3着に買っている。ヘルヴェティオスが先頭に立ち、2着もスリーソング、3着争いがショウナンカチドキとクリプトスで接戦、何とかなっていないか?と願ったが、写真判定にもならずに決着。
その三連単は3,250円、外れるよりはましだが、もしクリプトスが3着なら、1005.7倍、朝一から10万馬券だ。その後はもうどうしようもない。フォームは乱れに乱れ、ずっと好感度の低い馬券を買って負けた。電車の青年は、ドウデュースの勝利に感涙し、ユタカコールをしたらしい。そうか、そうか、そうか。