ダービー観戦記 2024

ダービーの朝が来た。
目覚ましより、1時間早く目覚める。
電車に揺られながら、競馬新聞を眺める。
ふと、向かいの席の若者も同じことをしている。
隣の女性が見つめる画面にも出馬表が映っている。
あぁ、すごいな、この人たちもみなダービーを見に行くのだ。
入場を済ませ、東門の競馬博物館へ。
競馬の殿堂と、歴代年度代表馬のパンフレットを受け取る。
ハクリヨウから、イクイノックスまで歴戦の名馬が並ぶ。
イクイノックス、あれほどの馬でさえダービーは勝てなかった。
木村哲也厩舎、去年、スキルヴィングは星になってしまった。
今年は牝馬のレガレイラ、同じ1枠2番に入った。
競馬の殿堂、最新の顕彰馬はアーモンドアイ。
これほどの名馬を育てた国枝栄もダービーには縁がない。
残された月日は2年、今年はシックスペンスを出走させる。
1つ前に選ばれたキタサンブラック、今年は弟のシュガークンが走る。
その前にジェンティルドンナ、最後の有馬記念は戸崎圭太で勝った。
2度の2着、今年は皐月賞馬、ジャスティンミラノが相棒だ。
顕彰者、調教師の欄に、藤沢和雄、レイデオロでダービーを勝った。
産駒のサンライズアース、管理する石坂公一、初めてのダービーだ。
騎手の欄、いつかここに武豊も並ぶのだろう、今年6勝目を狙う。
福永洋一、年間最多勝利騎手9回の天才も、ダービーは勝っていない。
あぁ、天才はいつも関西だ、関東人の私は少し羨ましく思う。
スタンドに戻る道すがら、メイショウタバルの取り消しが目に入る。
乗るはずだった浜中俊、送り出すはずの石橋守、ダービージョッキーだ。
あの歓喜を知っている。
どれほど無念で、悔しいのだろうか。
ダービーだけが競馬ではない。
それでも、ダービー以上の競馬もない。
「逆ポツンを買いました」
ダノンデサイルの単勝を見せて、そう言われた。
横山典弘の後方ポツンの逆、単騎逃げだ。
「Congratsって、何でしたっけ?」
ダノンデサイルの母の父、血統を調べて、あってもいいと頷く。
そうか、何度裏切られても、皆、あの男に期待してしまうのだ。
ダービーが始まる。
エコロヴァルツ、岩田康誠が大外から先頭を奪っていった。
ダノンデサイル、単騎は叶わずとも内の絶好位を取った。
ロジユニヴァースもワンアンドオンリーもあの場所にいた。
サンライズアースが捲る、レガレイラは後方で藻掻いている。
ジャスティンミラノ、戸崎圭太が勝利を目指して追い出す。
ダノンデサイルが、ロジユニヴァースのように内を抉じ開ける。
あぁ、風が吹く、91回目にして、3度目の風が吹く。
ダノンデサイル、横山典弘が最内から抜け出して来る。
あぁ、美しい、腹立たしいほどの美しさだ。
関東に天才はいない。
いるのはいつだって、名手だけだ。

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