
演劇というメディア
昨日発表ありました通り、言言 第六回公演『蛇と天秤』は延期することとなりました。楽しみにしていただいた皆さま、すみませんがどうかご理解ください。この決定に関してはメンバー間でそれぞれが思うことを話し合った結果、全員が言言主宰・飯沼由和氏の意向を尊重する。という結論に達しました。彼が今の気持ちを素直に綴った表明の一言一句に納得し、同意しています。 今、公演しているカンパニーの皆さんは万全の対策で臨んでいるでしょうし、まったく異を唱えるつもりはありません。
ただ、私たちは再び集まることが出来る。延期できる。と確信できたのが大きかったんだと思います。僕は2007〜2015年、東京でプロデュース公演をやっていたのですが、この「延期」という決定は東京では難しく「中止」もやむを得ない状況だと思います。
東京では劇場を押さえることも1〜2年がかりで、俳優・スタッフのスケジュールも半年〜1年前に大体決まります。つまり延期するとしたら、稼働率9割を超えると言われている劇場が奇跡的に土日祝日を含む良い日程で空いていて、俳優およびスタッフのスケジュールが奇跡的に空いている、二つの奇跡が起きて最速で半年後。現実的に考えて、1年〜2年後となるでしょう。そうなると座組を解散して、活動継続のための次の一手を考えるのは建設的です。
また、公演の意義・意味という問題もあります。日本の小劇場は新作が多いのですが、それは言い換えると劇作家が「今」を切り取っているわけです。2020年3月に伝えたい言葉は、2022年だと芯を突いていないかもしれない。意義・意味が薄れるのであれば、違う作品にしなければなりません。そうなると「延期」という選択肢はさらに難しくなり、多くのカンパニーが「実施」or「中止」という二択で悩んでいると思います。
実施したとしても、中止したとしても、僕は全てのカンパニー代表者の意志を尊重しますし、敬意を表します。事態の収束を願ってやみません。
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公演を延期するのは初めてのことなので、今は切り替えて、どうポジティブに捉えられるかと日々考えています。
・セリフ入っていて、動機/目的が整理されている状態からリスタート
・考察する時間が増えたので、新しい解釈に辿りつけるかもしれない
・お金が無くても時間をかけて、細部までこだわり抜くことができる
いつもとは違う取り組み方ができるのをとことん楽しむしかありません。男6人のヒリヒリでゴリゴリの対話劇。絶対面白くしますので、少しだけお待ちください。
言言さんのコンセプトは、『言葉一つ一つを大事に。コトコトじっくり。』一度、火を止めることでさらに味は染み込み、濃厚な作品が出来上がると思っております。
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さて、タイトルに書いた「演劇というメディア」に関して、少し私見を。
僕がワークショップをやるときに必ず伝える『演劇の三大要素』というものがあります。それは「俳優」「脚本(劇的行為)」「観客」です。
3つが揃えば演劇が成立する/逆に、3つのどれかが欠けては演劇にならない/観客は演劇を一緒に創るパートナーだ/お客さんを軽視するのは演劇とは呼ばない
なんてことを最初に熱弁してます。
そう、無観客では『作品』になれど『演劇』にならないと思っています。ライブストリーミングや映像配信にしても、お客さんが居ないと『作品』としてもかなりしんどいです。そもそも無観客でも成立するメディアであれば、コスパの良いストリーミングであったり映像であったり配信が主軸になっていると思います。「目の前で起こっていること」が演劇というメディアの一番重要なポイントなのです。第4次産業革命でそれもいつかは変わっていくんだろうけど、今ではないでしょう。現時点では『観客』が必要不可欠だと思っています。
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お客さんが居なければ、演劇は始まりません。
また皆さんと劇場でお会いできる日を心待ちにしております。