vol.15『ほつれる、闇』 エピローグ
ご観劇いただいたみなさま、本当にありがとうございました。今回は御礼と公演を通して気づいたことなどを書いてみたいと思います。
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終演後、アンケートやSNS、面会時などでたくさんの感想をいただきました。賛否それぞれ愛のある言葉があったからこそ最後まで舞台上を磨き続けられたと思います。ありがとうございます。「今までのロンパンで一番好き」という感想も多かったので、嬉しい限りです。次回作でさらに塗り替えたいと思ってますので、次回公演も是非劇場にお越しくださいませ。
せんだい演劇工房10-BOXと下北沢 小劇場「楽園」
上が仙台公演、下が東京公演。映り込む照明灯体で分かりますが、天井の高さが大きく異なります(仙台が4.3m、東京は2.5m)。印象だけでなく、照明の具合も変わってきます。(光を受ける対象との距離が変わるので、同じように照らしていても当然ながら東京の方が明るくなるわけです)
間違い探しのようですが、白い床パネルも東京は45度斜めにしました。舞台美術家が計算してカットしてくれたけど、やはり現場で調整。クレジットには載っていませんでしたが、助っ人で大道具仕込みにきてくれた西村氏が重要な部分を仕上げてくれました。ありがたい。
物理的に劇場サイズが小さくなるため、お客さんとの距離が縮まって声の大きさも変わり、それによって芝居のテイストが変わりました。光の当たり方で役の見え方も変わります。こう並べて見ると、刺激的なツアーだったなと改めて思います。小劇場のツアーだと全然珍しいことではないんでしょうけど、転換・入退場動線・客席の位置すらもまったく違っていたので、乗り切ってくれた俳優/スタッフに感謝です。
リーガルサスペンスという新しいジャンルの執筆と演出
今回はLondonPANDAでは珍しい、笑いにくい舞台でした。旗揚げした2007年から「ポップでブラックでシュールな笑い」を合言葉にしていましたし、僕自身お笑いが大好きでこだわりが強かったので、「ロンパン=コメディ」というイメージのお客さまが多かったと思います。
今回、一部に笑いどころを入れましたが、重要な笑いはゼロにしました。緊張と緩和。抜くから刺さる。を、抜かずに刺す。にしてみました。お客さまに対しての負荷が上がるのですが、それすらも多くの方に楽しんでいただけたようで何よりです。
そうなのです。今までも「刺したい」と思ってやってきました。抜いたところに刺したもんだから、気づかれない場合もありました。それでも抜かなければ楽しんでもらえないのではないか、と思っていました。が、そうではなかったのを「実感できたこと」が今回の一番大きな収穫かもしれません。嬉しかった感想のひとつに、インド人の友人も観に来てくれて「interesting」と言ってくれました。funnyじゃなくてinterestingでありたい、と高校時代から思っていたので、ムンバイ出身の彼にそう思ってもらえたのは嬉しい。
前置きが長くなりました。リーガルサスペンス、と銘打ったのですが法曹界の知識が無く、下調べに多くの時間を費やしました。実際に裁判員裁判の法廷にも見学で訪れたり、弁護士目線の本を何冊か読んだりもしました。当日パンフレットにも書きましたが、「犯罪者」はなんども書こうと思って、断念してきたモチーフでした。今回、ようやく登場はしたけど、描けたかと問われると正直苦しいです。一番見たい部分である狂気が見えないように書いてしまったから。筆の甘さを痛感しています。
演出の面で言えば、劇作担当が接見のシーンを軸に構成しようと最初から決めていたので、動きの少ない芝居になることは目に見えていました。どう刺激的な時間を演出するか、こっそりと踠きました。舞台美術・衣装小道具だけでなく劇中の音(楽曲)も抽象的にし、余白を多めに作りました。その結果、観客席には感じ取ろうとするアンテナが張り巡らせられ、適度な緊張感が生まれたんではないかと思ってます。舞台上に余白じゃない「空白」も見られたので、その辺りは個人的要反省ポイントです。
戯曲の話に戻しますと、プロットはあるものの前から順々に書いて行って、困ったら引き返す。というやり方なので、自分でも思ってもみなかった形になることもあります。今回で言えばラストシーン。書き始めたときにはまったく予想もしていませんでした。
じゃあ、最初はどうなると思ってたんだろう?と振り返るんですけど、まったく覚えてもいません。ちなみに今回から設定も細かくは決めたりしていません。俳優陣には「一番ドラマチックな設定で構わない。僕はおろか、役同士で共有もしなくていい。しないほうが嬉しい。」と伝えました。僕が見るべきなのは外側に出てきたものでしかないので、俳優さんが演技しながら何を考えていても表出されたものが正解なら正解としか言えないのです。内側は俳優さんにお任せするしかない。これからもそうしていこうと思います。
次回本公演(vol.16)に向けて
次のテーマだけは決まっています。今のところ。だけど、「それを描くのは面白そうだ。社会に対してのメッセージ性もいい。」という動機しか浮かんでいないので、「自分の根っこから湧き上がってくる衝動」待ちです。俳優さんをたくさん出してみたいな。という願望もありますが、それも「面白そう」というだけなので、「必然性」待ちです。vol.16は2020年初冬を予定。
その前に4月には英国スコットランドの劇団TrickyHatとの共催で公演があります。こちらも日本中から見にきてほしい企画となってますので、よろしくお願いします。
最後に
Twitter上でいただいた感想まとめました。
『ほつれる、闇』でエゴサするのは今日でおしまいにしようと思います。感想はCoRichの「観てきた!」などに書いていただければ事務所で一人、喜びのダンスをします。Twitterに書いたよ、という方も是非、長文でお寄せください。もれなく大河原が喜びのダンスをします。
*上が仙台公演、下が東京公演となっております。
それではこの辺で。今後ともLondonPANDAを御贔屓に、よろしくお願いします。
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