
小畑次郎さんへ
香典も、供物も、弔問も、次郎さんの遺志で固くご辞退されるとのことなので、せめて弔辞は受け取ってください。一緒につくった芝居みたいに。
次郎さんは僕が生まれたころから芝居をしている大先輩です。自分が演出になってから、そこまで年上の方とご一緒するのは初めてでした。
僕の方は身構えていたのかもしれません。でも次郎さんは偉ぶったり、驕ったりすることは一切なく、いつだって笑顔で、僕との作業に真剣に取り組んでくださいました。本当に素敵な先輩でした。
舞台袖に台本置いて、シーンとシーンの合間にも何度も読み返して、それでも毎回台本通りには行かなくて。「あちゃあ!」なんて仰ってましたけど、それだけ舞台上に生きるのに必死になってくださってたんですよね。
僕以上に、僕が書いた作品を愛してくれた俳優さんでした。そのことがどれだけ僕を勇気づけたかわかりません。もっと観てもらいたかった。もっと一緒につくりたかった。また元気になったら、つくれると思ってました。
次の機会、また今度、がもうないのは分かってます。でもしばらくの間、プロットを考えているときに、次郎さんが浮かぶと思います。そのときは思う存分、僕の妄想小劇場の中で大暴れしてくださいね。もうセリフなんてどうだっていいですから。好きなだけ、好きなことしてください。
次郎さんと芝居つくれて、幸せでした。たくさん勉強させてもらいました。本当に、ありがとうございました。
また会いましょう。妄想小劇場で。
拙作ではありますが、次郎さんと創った作品を置いておきます。未販売だった60分版です。献杯の肴になれば幸いです。
おやすみなさい、お父さん。
2020年4月7日 演劇企画集団LondonPANDA 大河原 準介