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キャリアカウンセリングに欠かせない『好意的関心』。
相談者に接するうえでは、第一に身につけておきたいあり方です。

好意的関心とは、平たく言えば「この人の考え方や経験についてもっと知りたい! 理解したい!」とポジティブに思う意識のことです。

例えば自社を志望している学生がいるとして、「なんでこの学生はウチで働きたいと思ってくれているんだろうか?」「その考え方は、どのような経験・環境によって培われてきたんだろうか?」「どういう経緯でそのような経験をするに至ったんだろうか?」などについて、ワクワクした気持ちで考えられていれば、好意的関心としてはほぼパーフェクトです。

逆に「ダメなところを探そう」「矛盾点を突いてやろう」といった気持ちで面接に臨んでいる方は、相手への好意的関心が低いと言えます。たとえ年下の学生であっても、相手をリスペクトし、知的好奇心に近いような気持ちで関心を持つことが重要です。

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相手を尊重する気持ち=他者尊重をベースとして、さらに相手に対して肯定的な興味を持つことが大切だと言っています。

例えるなら『いいところ探し』をする感覚です。

この人のいいところがどこにあるだろうか?
本人はネガティブな経験として語っているけれども、話題の中にキラッと光る長所はないだろうか?

そんな視点を持ってまずは話を聴いてみることからはじめるとよさそうですね。

そして、「なぜ?」「どうして?」「何があったの?」「いつから?」「どこで?」「誰と?」といった、たくさんの疑問をもって関わろうとすることが、好意的関心を抱くために大切です。




例えばこんな展開があったとします。

相談者「昨日嫌なことがあってさ・・・」
あなた「嫌なこと?」
相談者「うん・・・実は~」
あなた「そっかー。それは嫌な思いをしたね」

ここであなたは「嫌なこと?」と返していますが、実は頭の中ではこのような疑問が湧いているのではないでしょうか?

・いったい何があったんだろう?
・誰かから何かされたのかな?
・昨日のいつ頃なんだろう?
・何が嫌なんだろう?
・どうして嫌なんだろう?
・どれくらい嫌なんだろう?
・昨日のことを今日も引きずっているんだ…そこまで嫌なの?

これを矢継ぎ早に訊くのは酷なので、まずは言葉を受け取ったという意味も込めて「嫌なこと?」と返したのでしょう。

このようにたった一言を聞いただけで、ここまでいろんな疑問が湧いてくる状態を、『好意的関心を抱く』と呼んでいるわけです。


好意的関心を支えているのは、一義的には相手への興味関心です。
その人に興味関心を抱かない限り、嫌なことへの疑問も湧いてきません。
逆に言えば、人ではなく事や物にしか関心を示さないと、とにかく原因を追究して早く解決したいという考えに縛られてしまいます。

極端な例としてこのような展開もあり得ます。

相談者「昨日嫌なことがあってさ・・・」
あなた「嫌なことなんて早く忘れるに限るよ」
相談者「・・・」

嫌なことを解決したい、いち早くこの相談を片付けたいという気持ちが優先すると、ついこのように「どうしたらよいか」という話へと行きがちです。

問題解決志向が強いと、人ではなく事・物への関心が強くなります。
機械のように原因を究明して、修理交換すれば解決すると考えてしまうために、いち早く問題を解決しようとするアプローチになります。

その結果、相手の気持ちはさておき、まずは問題を取り除くためのアドバイスや提案が先に出てきてしまうんですね。

もしかすると、助けになりたい、力になりたいという思いが強すぎるが故の行動かもしれません。
でも、誰かに相談するということは、まずは話を聴いてほしいというニーズがあるということではないでしょうか?
そのニーズに応えることで、問題を解決すると考えれば、まずは好意的関心を示すことも有効な手立てになり得ると思いませんか?




わたしが好意的関心を抱くためによく利用する方法を紹介します。

それは『5W2H』です。

●When(いつ)
●Where(どこで)
●Who(誰が・誰と・誰に)
●What(何を・何が・何で)
●Why(なぜ・どうして)
●How(どのように)
●How many(いくつ・どのくらい)

えっ?
それってビジネススキルじゃないんですか?
と思われるかもしれません。

確かにビジネスの世界でよく使われている基本的な聞き方のポイントです。しかし、傾聴における好意的関心と共通する部分が非常に多く、実は非常に効果的な活用が可能なんです。


この5W2Hをこのような順番で展開します。

1. What 「何があったんですか?」
2. When 「それはいつのことですか?」
3. Where 「どこで起きたのですか?」
4. Who 「誰が関係していますか?」
5. How 「どのように影響していますか?」
6. How many 「どれくらいの時間や大きさで影響を受けていますか?」
7. Why 「なぜあなたはここまで悩まされているのでしょう?」

こう考えると、次々と相手に訊いてみたいことが浮かんできますよね。
これはすべて「好意的関心」を抱いたときに湧いてくる問いと一致します。

つまり、テクニカルに分析すれば、好意的関心≒5W2Hと言えるのではないでしょうか。


ただし!


大前提として、『悩みや問題は人の中にあって、事や物の中にはない』ということを忘れてはなりません。

例えば、インクの出ないペンがあるとしましょう。それによって字が書けません。このときの悩みや問題はなんでしょう?

ペン自体は悩んだり困ったりしませんよね?
いつだって悩んだり困ったりするのは人なんですから・・・

インクが出ないために“字が書けないこと”が問題であり、“思うようにならないこと”が悩みの種になっています。ペン自体が問題なのではなく、人の中に問題があるわけです。


だから人に焦点を当てて話を聴くことが大切なんです。
問題を見つけようとか、原因を取り除いてあげようなどと、事や物に関心が向いてしまった途端、それは好意的関心ではなく、5W2Hというテクニックになってしまいます。
あえて、『好意的関心5W2H』としたのはそのためです。




今日は好意的関心を抱くためにテクニカルな面からふりかえってみました。

これが自然体でできるようになると、いつの間にか人への関心が向くようになります。

それこそが「あり方」だとわたしは考えています。

いま、わたし自身がそのあり方へと近づいている実感があります。

事や物から、人へ、好意的関心が移り変わってきたのには、きっとキャリカウンセリングの学びが大きく影響していると思います。

この感覚をぜひ多くの方にお伝えしたいですね。




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