資格さえあれば…… ~ライセンスジプシーという落とし穴~
「資格さえあれば……」
「資格がないからできない」
「資格を取ったらこうなれる!」
資格取得は誰もが憧れるもの。
あなたも一度は「資格が欲しい!」と思ったことがありませんか?
それは「資格が武器になるから」です。
ここでも紹介していますが、資格にはいくつかの種類があります。
ひとつは、資格がなければできない仕事に就く場合です。
これを業務独占資格といいます。
また、企業側が有資格者を置かなければならないというケースもあります。
これを必置資格といいます。
一方で、資格と取らないの名乗ってはいけないというものもあります。
これを名称独占資格といいます。
例えばわたしが持っている「第一種情報処理技術者」は名称独占資格です。システムエンジニアなどに必要な情報処理の能力を問うもので、経済産業省が認めた国家資格です。のちに「ソフトウェア開発技術者試験」→「応用情報技術者試験」と名称を変えて現在に至ります。
でも、この資格がなくてもプログラマやシステムエンジニアとして活躍する方はたくさんいらっしゃいますし、持っていなければプログラムを開発してはいけないというものでもありません。
あくまで実力を示すための資格であり、名乗るためには資格を持っていなければならないというだけです。(一部の企業では資格手当の対象となる場合もあります)
この資格を取ったのは、「教えるにふさわしい人間であることを証明するため」です。プログラマを育成するだけの実力がありますよと、名実ともに知らしめるための資格であり、仕事に就いてから必死に勉強して取ったものです。
現在、わたしがメインとして活用している「国家資格キャリアコンサルタント」も名称独占資格です。「キャリアコンサルタント」「キャリコン」と名乗るためにはこの資格が必須です。(キャリアカウンセラーやキャリアアドバイザーは国家資格を持っていなくても名乗れます)
相談者に対して「国家資格を持っているという安心感を与える」こともできます。また5年ごとの更新が必要で、その間に研鑽を積むことが義務付けられていますから、「常にレベルを維持するための努力をしている」という証明にもなります。
でもここに落とし穴があるんですよね。
それは「資格を取ったらすぐに何かができるようになるわけではない」ということです。
情報処理の国家試験に合格したからと知って、誰でも最新のゲームのようなプログラムが作れるわけではありません。アプリ一つ開発するにも、無数の開発環境や言語があって、それをどう組み合わせて作っていくかはプログラマ自身の実力に依ります。
わたしも授業で教える程度のプログラミングスキルは身につけていますが、それこそ世の中で広く使われるような大規模システムの開発なんて想像も及びません。仕組みはわかっても作れるかは別です。(料理の味や素材はわかっても、それを作れないのと同じです)
キャリアコンサルタント試験に合格したから、すぐに人の相談に乗れて、なんでも解決できるようになるわけではありません。
昨日の学びもそうですが、日々キャリアカウンセリング能力を高めるために自分にできることを考えながら、自己研鑽を繰り返しています。
こういった積み重ねが花開くまでには5年以上はかかりました。いまでこそ相談業務は自信を持って行えますが、合格当初はまだまだ未熟で・・・見当違いな受け答えをしたことも数知れず(笑)
にも関わらず、「資格さえあれば何かができるようになるはず」と思ってしまう・・・
その結果、どんどんと新しい資格を取ろうとお金が出ていくばかりなんてケースもあります。
このように資格ばかりを追い求める人を「ライセンスジプシー」と、わたしは呼びます。
実はこれ、わたし自身のことです(笑)
どうしても新しい資格が欲しくなるんですよね。
それは、自分の新たな面を見てみたいから。
こんなこともできると人に認めてほしいから。
結局のところ、他者からの評価が欲しくて資格を目指すだけなんです。
活かしきれていない資格も数多くあります。
でも反面、その当時は必要だったから取ったけれども、いまは使っていないというものもあります。
例えば、ワープロの授業を担当していた時代にはWord検定を、サービスやマナーを教えていた頃にはサービス接遇検定やビジネス電話検定や秘書検定を、ビジネススキルを教えるためにビジネス能力検定を、それぞれ取得して活かしていました。いまではメインで使うことは減りましたが、それでも問題が解けずに困っているときに助言する際には活かされています。
怖いのは、ライセンスジプシーは資格取得の目的が「資格を取ること」になりがちなことです。
「○○をするために資格を取る」という明確な目的があるのならよいのですが、とにかくまずは資格を取って、それからやることを考えるというのは本末転倒です。まさに「手段が目的になっている」状態ですね。
だから、資格を取ってもその活かし方のイメージがないため、いざ合格したら「どうしよう・・・」となってしまうんです。
そこで、資格を目指すときには改めて自問自答しましょう。
「わたしは何のために資格を取ろうとしているのか?」
その軸さえブレなければ、資格はきっと自分を助けてくれるはずです。
ちなみにキャリコンの場合、「せっかく取った資格を生かす場がない」という声は大変多く聞かれます。
でも試験の際に口頭試問で答えているんですよね。「この資格を取ったらどう活かしたいですか?」と。せっかく語った展望を叶えないのはもったいないです。まずはできるところから始めましょう。
わたしの場合、
・妻との会話で受容・共感・一致を意識して接した
・友人との日常会話の中でカウンセリングスキルを使って気持ちを聴く訓練をした
・ご近所付き合いの中で折り合いをつけるために傾聴に徹した
・地域住民の会合の中で、発言者が何を言わんとしているのかを傾聴し、必要に応じて質問をした
・トラブルに見舞われたとき、相手の怒りを十分に受け止めるためにカウンセリングスキルを活かして関わった
・仕事の中で学生との何気ない会話でも、基本的傾聴の連鎖を意識して関わった
など、特段キャリアカウンセリングではないところでスキルを活かすことを試みていました。
また学びの機会には必ず顔を出し、諸先輩方の活動を勉強させてもらいました。そこから自身で学びの場をつくり、コロナ禍で中断するまでの間は自主勉強会を毎月開催して、キャリアカウンセリングの幅を広げるための挑戦を続けてきました。
もちろん仕事の上でも学生の就職指導により深く関わることで、キャリアカウンセリングを行う場面を意図的に増やしていきました。
こうした行動の積み重ねが、今日のわたしにつながっていると感じています。迷いながら、悩みながら、苦しみながらも、キャリアカウンセリングと真摯に向き合うことで、資格を活かす場面を数多く
ライセンスジプシーの落とし穴は、誰かがチャンスを与えてくれるのを待っているところにあるんですよね。
そうではなく、資格を活かして自ら仕掛けていくことが何よりも大切なんです。それには「資格をどう生かすか」、その前には「何のために資格を取るのか」という目的の明確化が必要なんです。
ただし、わたしに限っては「資格取得が趣味」のため、ライセンスジプシーが一概によくないとも思っていませんが(笑)
今日はライセンスジプシーのお話しでした。
いかがでしたか?
あなたも資格取得の前に、一歩立ち止まって考えてみてくださいね。
明日も佳き日でありますように