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最終話. 神様お願い、もう少しだけ…



私の名前はお片付け薫。お部屋も身体も心も片付ける、お片付け研究家薫です。お部屋をスッキリ綺麗に片付けたら、身体の不調も片付き、心のモヤモヤも片付き、思考までもがクリアになってきた。自分にとって余計なモノ、余計な思考が片付いた時、曇っていた視界が晴れ渡り、空から不思議な囁き声が聞こえ始めた。その囁き声に導かれるまま、私は新たな人生を歩きだす。片付けから始まる不思議な物語。



第一話はこちら↓

https://note.com/okatadukekaoru/n/ne7b0fb9ff425



一変してしまった我が家の暮らしたったが、私の中で変わらなかったのが一つ。
帰国してからも毎日彼と連絡を取り合っていた。モーニングメッセージから始まり、1日に何度もメッセージを送り合い、電話も毎日した。
背が高く、がっしりした体型で、ちょっと強面な外見に反して、すごくピュアで、ロマンチストな一面を持つ彼は、素敵なお花の写真や、綺麗な蝶、可愛い昆虫の写真をよく送ってくれた。そんな彼に私はどんどん惹かれていく。
そしてこれにはびっくりしたと同時に、やっぱりかってちょっと嬉しかった。
次生まれ変わったら、来生では何をしたい?という話になった時に彼は言った。
「僕は来生はもういいかな、今回で終わりでいい。」
びっくりした。まさかそんな言葉が出て来るとは思わなかった。でも当時に嬉しかった。
「えっ!?そうなの?私もだよ!地球はもう十分。」
そして心の中で、大丈夫だよ!と呟いた。

2ヶ月近くこんな生活が続いた。私の心はもう、彼無しの毎日なんて考えられないほど、彼への愛でいっぱいだった。でも、彼への愛が大きくなる毎に私の頭にはあの数字が浮かぶ。。もしあの数字が本当に私の最後の日だとしたら。。。彼とのこの楽しい時間もそう長くは続かないということになる。
それでも私は焦ることはなかった。
『後悔のないように生きる』
いつもそう思っていた私。
妥協することのない人生だった。
日々全速力で駆け抜けた。
子育ても手を抜かず私の中では一生懸命やった。
私は私の人生を全うした。
大げさなほどに全てに真剣に向き合い、真剣に生きてきたから、私は私の遠くないその日をしっかりと受け止める準備ができていた。

彼に会うまでは。。。

思い残すことはなかったの。。

でも、、、

願うようになってしまった。


神様お願い!
もう少し、
もう少しだけ、、
生きさせてください!

気持ちはどんどん大きくなる。
溢れる気持ちを抑えきれなくなった私は、思い切って言ってみた。


「あなたのことが好きです。あなたに会いに、私は来月またインドに行きます!」

もちろん喜んでくれると思った。だってこんなにも毎日メッセージを送り合い、電話で話をし、その会話はまるで恋人たちのようだった。でも、彼の答えは、

「ごめん。君のことは好きだけど、それは友達としてであって、女性としてではない。」

えっ…



「ねぇー!小杉君!聞いてよ!私、振られたー!」

霊視の小杉君は、すっかり恋の相談相手になっていた。

「あんなに毎日メッセージを送り合って、電話もして、ハートマークもくれたよ!おやすみのkissの絵文字も送ってくれたのに、何で?ねえねえ、何で??おばさんを楽しませてくれてたのかな?」

6つ年下の彼、久しぶりに恋をしたおばさんを楽しませてあげようと、私に付き合ってくれていたのだろうか?

「うーん。何ででしょうね?僕にはわからないけど、でも彼はすごく誠実な人だから、もし薫さんと付き合うことになったら、日本に行かきゃいけないんじゃないかとか、色々考えたんだと思います。そしたらちょっと躊躇してしまったんじゃないですかね? で、薫さん、彼を引っ張る何かを感じます。多分前世の関係ですね。」

「あぁ、それでかなぁ?なぜだかわからないけど、会って最初の頃に思ったの、彼を助けたいって。。」

「薫さん、大丈夫ですよ!ツインレイはくっついたり離れたりしますから。」

「えー?そうなの?じゃあまたくっつくってこと?私、チケットもう取っちゃったんだよね。だから彼に会えなくても私はインドに行ってくるよ。」

思い立ったら即行動の私は、もうすでにチケットを取っていた。
久しぶりの恋。そして久しぶりの失恋。
友達としてまた彼と話せたらいいんだけど、今の私にはそれはできない。だから彼にメッセージを送った。

今までたくさんありがとう。
あなたのお陰でとても楽しい日々を過ごすことができました。あなたに出会えたことに感謝しています。
私はすでに、チケットを取ってあるの。だからあなたに会えなくても、私はインドに行きます。
今までのように友達として話せたらいいんだけど、それはまだちょっと無理みたい。だから今回インドに行っても、あなたに会いに行くつもりはないし、偶然会うことがない事を願ってるわ。

最後の一文は、冗談のように絵文字をつけたけど、これが正直な気持ち。私はそんなに大人じゃない。そんなにかっこよくいられない。
全ての出来事は、私の人生にとって必要なこと。
全てが偶然ではなく必然。
だから今回インドに行って、彼には会えないとしても、何かが私を待っているんだ。そんな風に感じている。
彼からはその後も度々メッセージが届いたが、返信をすることはなく、インドに行く日が来た。


「じゃあママまた行ってくるね!」
「うん。気をつけてね!いつものビスケットまたたくさん買ってきてね!」
「うん、わかってる。それだけは忘れないよ!」

また子どもたちとのしばしのお別れ。今回は1ヶ月。すっかりインドに染まってしまった私の人生。今回の旅ではどんな事が起こるのだろうか?

全ては順調に進んでいる。
おっかなびっくりで飛び乗った魔法の絨毯。
怖くて目も開けられず、バランスを取るのが精一杯、ちぎれそうな程絨毯の端を握りしめて乗っていたけど、今ではもう、手を離し、余裕で寝そべって乗ることもできるくらいに私は成長した。
もう何があっても動じない。
残りの人生、楽しんでゆこう!


すーーーーーーっ。
はぁーーーーーー。

飛行機を降りて思いっきり息を吸い込み深呼吸。 

やっと帰って来れた。 

インドに着くといつもそう感じる。
2度目の一人旅は少し余裕さえある。
空港から1人バスに乗り、アシュラムに向かう。

約4時間。
アシュラムに到着。

入口で少し立ち止まり目を瞑る。
自然と口元が緩み、笑顔があふれてくる。私はこのアシュラムが大好きだ。

一呼吸して、目を開き、
よし!と宿泊事務所に向かう。

この道をまっすぐ進み、角を右に曲がって少し歩いたところに事務所はある。
たった1ヶ月しか経ってないけど、すごく懐かしさを感じる。

この時期インドは真夏。
今はすごく暑いから来るな!
インドでてきたお友達は口を揃えてそう言った。でも、絶対平気!そしてその暑さも味わってみたい。実際確かに暑いけど、私にはなんだか心地良い。
照りつける太陽を見上げ、視線を落とし、そして角を曲がる。

足が止まった。

太陽を見たせいで私の視界はオレンジや緑がチカチカする。
でもそのはっきりしない視線の先に、確かに見えた。

すごく背の高い人。
がっしりとした後ろ姿。
特徴ある歩き方。

間違いない。
彼だ。。。


アシュラムに入ってからまだ数分。
前回ここで出会った人とはまだ誰とも会っていない。それが、アシュラムに着いて初めて会う人が彼なんて。。。
やっぱり、運命なのかな?

水飲み場に向かって歩いてゆく彼。
私に気づくことなく水を飲む。
そして水を飲み終えた彼が振り返る。

一瞬時が止まった。

目を丸くして驚く彼。
私は大きなスーツケースをゴロゴロと引きづり彼に近づく。

彼は私の大きなスーツケースに目をやる。

そしてお互いに照れ笑いを浮かべながら、、

Can I help you?

Yes. Please…


神様お願い!
もう少し、
もう少しだけ…


(この物語はフィクションヒューマンドラマです)

第1話https://note.com/okatadukekaoru/n/ne7b0fb9ff425

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門


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