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メルケル政権後の第四帝国
9月に議会選を控えるドイツでは3月に州議会選挙が行われた。結果は元々政権与党CDUが州議会与党ではなかったが敗北と報じられ、メルケル首相の退場と共にCDUが政権の座から引き下がる可能性が増してきている。
2017年の議会選挙の結果を受けて2021年の議会選に立候補せず政界引退を宣言しているメルケル首相はコロナ対応の道半ばでの政界引退となり誰がその後を継ぐかは欧州政治において注目の点だ。
コロナ以前はメルケル氏の所属するCDU内で禅譲が行われるかに思えていたが、党内支持はいまいち煮え切らず「メルケル」というシンボルを失ったCDUは政権存続のため新たな方向性を示す必要性に迫られている。
1月の党首選もメルケル中道路線か保守回帰かで候補者が対立し、僅差でメルケル系のラシェット氏が新党首に就任したことも含め、CDU支持の中でも意見が割れており、メルケル長期政権が引き起こした政党の同質化による弊害はしばらくCDUの中にわだかまりとして残りそうだ。
その一方で議会第二党の社会民主党の支持率が伸び悩んでいるというのも注目に値する。議会第二党ともなれば第一党の支持退潮と共に躍進そうなものだが、社会民民主党はメルケル政権との度重なる大連立の弊害で有権者の中で同一視されているのか大きく支持を拡大できていない。
一方で環境政党である緑の党が堅調に支持を拡大している。今回の州議会選挙でも州議会与党として政権続投を果たし、欧州の環境への機運の高まりから今後も支持を拡大していくことが予想されている。
このようなCDUの退潮によって多くの政党が受け皿になろうと無党派層に支持を訴えていく中、CDUよりも右派的と言われるAfDが行政の監視下におかれるとの報道があった。
「戦う民主主義」で知られるドイツは憲法で極右+極左の政党団結を禁止している。今回のこうした動きは政権やドイツ当局がAfDを「極右」と位置付けていることを意味している。ドイツにおいて極右レッテルを貼られることは政治的な偏見を受けることに等しい。
もともとAfDはCDUの中道化とメルケル政権の移民政策に反発する形で登場した経緯があり、このようなことは有権者の政治選択の幅を狭める行為であり、ドイツ国内での言論の幅が縮小する危険性がある。メルケル政権が16年の間に行ったCDUの中道化とCDUよりも右派となる政党の迫害は大きな問題であり、リベラル的権威主義政権だったという見方もできなくはない。
ドイツは戦後長期政権になることが多いが、戦後復興と戦後ドイツの方向性を見出したアデナウアー、東西ドイツを統一しドイツの産業などあらゆる面での成長を生み出したコール、これらに続く長期政権となったメルケル政権が残したのは度重なる政党の同質化による政治選択肢の縮小と権威主義的方針による右派の駆逐ではないか。
ドイツ国内のアメリカへの感情や、中国への接近を行っていた近年、そしてこれまでのドイツの歴史を振り返るに彼らはわりと権威主義への親和性をはらんでおり、また第二帝国、第三帝国の崩壊はいうに及ばず自由主義の否定的な行動へ走ったことからだった。新たな冷戦構造が議論されるこの時代、EUを背景に勢力を拡大した第四帝国はどのような方向へと進むのか。少なくとも歴史からわかることは彼らは最終結果として勝ったことがないということだ。