安倍元総理の死去によって起きること
日本の憲政史において最長政権を築き、日本を率いてきた安倍元総理が凶弾に倒れてしまいました。
何よりもまず、ご冥福をお祈りいたします。
突然の報道に多くの方が驚かれたことと思います。私もそうです。
選挙期間中に起きた事件であるがゆえに様々な憶測や議論が起き、SNS上は大混乱となっています。
様々な憶測がされる中で、今回はこの許されざる事件によって今後日本政治にどのような影響があるのかを考えたいと思います。
・今回の参院選について
明後日、7/10に投開票日を迎える参院選にこの事件はどのような影響をもたらすでしょうか。
安倍氏は元総理大臣ですが、その知名度・影響力は大きかったのは事実です。
戦後、選挙期間中に今回のような影響力が大きな人物が死去した例として大平正芳総理が挙げられます。
大平正芳総理は1980年、衆参同時選挙の選挙期間中に死去してしまいました。
この結果、自民党は「香典票」とも呼ばれますが、有権者からの多数の得票を受けて予想を上回る形で大勝しました。
今回もこのようなことが起きるのではないかと考えられます。SNS上では安倍氏を批判していた左翼やメディアが事件を助長したとの意見も散見されました。
このようなことも相まって、左翼政党への票が減少する可能性もあります。
さらに自民党は元々勝利するという予想でしたが、より大きな勝利をする可能性が推測されます。
・自民党内の影響について
安倍氏は自民党の最大派閥である清和研の派閥会長でした。安倍氏は最大派閥の会長として自民党内で大きな影響力を持っていました。
しかし、今回の事件でこの派閥を誰が継承するのかということが問題になってくると言えます。
安倍氏にはカリスマ性があり、自身の選挙区も安定していて有権者からの人気もありました。
このような安定感のある会長でなければ、派閥を率いていくことは難しいと言えます。
では、派閥内のポスト安倍の候補を何人か挙げてみましょう。
候補として挙げるとすればこの5人ではないかと思われます。
派閥会長はそのまま総裁選に立候補して総裁になる可能性もありますので、重要な立ち位置です。また政治力もなければ党内で他派閥と戦えません。
個人的には今回の事件を受けて、岸氏に白羽の矢が立つのではないかと思いましたが、岸氏も体調が不安ですので難しいかもしれません。
下村氏も前回の総裁選にの時に、立候補しながら一番最初に撤退するという恥をさらしてますので総裁候補として派閥会長になるのは難しいでしょう。
そうなると暫定措置として下村氏か塩谷氏(高齢で総裁は狙えない)を会長において、派閥の立て直しを図るなどするのではないかと考えられます。
ここで求心力が低下するとその後の党内での影響力低下にも繋がりますので、大事なところです。
ここでなぜ高市氏の名前が出ないのかと思いの方もいると思います。理由を答えると高市氏は安倍氏の派閥に加盟していないのです。
なので、高市氏が加盟しないことには派閥会長候補にはなれないと思います。
高市氏は安倍氏の支持層を引き継いでいると思うので、高市氏の今後の行動に注目です。今回事件があったのも、高市氏の選挙区である奈良県ですから。
・政権運営への影響
岸田総理にとってこれはどのような影響があるでしょうか。
まず、今回の選挙は大勝すると思います。私が岸田総理の立場であったなら、ここで憲法改正を本格化させると思います。
なぜなら、憲法改正は安倍氏の悲願であったからです。自民党草案作成には安倍氏も関わっています。
この安倍氏の悲願である憲法改正の達成を政治目標に据えて、衆院を解散して勝利すれば、岸田政権は長期政権を狙えます。
続いて国際関係です。今回の事件が他国との関係に直接影響を与えるかと言われるとすぐに影響はないと思います。
しかし、外交において重要な橋渡し役を失ったのは大きな損失です。
今回の事件の後、各国大使や現役国家元首など多くの心配の声がありました。これはそれだけ安倍氏との関係があったことを意味します。
このような海外の要人と面識のある政治家を失ったのは大きな損失で、埋められるものではありません。
また、中国に傾斜するのではなどの心配は安倍氏の支持者による積極的なロビー活動などで十分に防止が可能であると考えられます。
・いくつかの噂・憶測について
今回の事件のあと、SNSを見ていると更に危険な方向の発言がいくつか見られたので、それについて考えます。
1.特定の組織による犯行だ
これは現段階では不明です。何とも言えません。山上容疑者が一定の動機を持って、銃を作成し行動したのは事実です。
ですが、その背後に何か組織がいるというのは推測でしかありません。警察の捜査を待つべきです。
2.反安倍の存在・報道のせいだ
これも何とも言えません。
情緒的にこう判断したくなる気持ちはわからなくはないですが、山上容疑者がどのように動機を形成をしたかは現段階では不明です。
反安倍的報道が彼の動機を形成したのであれば、最も批判されていた時代に犯行に及んだのではないかという仮説も出てきます。
なぜ政権を退いて2年たった今、行動したのかの説明が難しいように思えます。
すべてが仮説なので、動機の構成因子が明らかになるまでは断定できません。
ただし、一定数の批判が攻撃の動機(大義名分)を与えてしまう現象があるのは事実です。
言葉遣いというのは難しいですが、いじめなどにおいても「誰々がやってるから大丈夫だと思った」と加担する例はあります。
今回がそれに該当するのであれな、批判の仕方というのも考えなければいけません。
3.左翼を許すな
「2」とも重なりますが、山上容疑者が左翼なのかは不明です。犯行から推測することはできますが、断定はできません。
むしろ、左翼と断定して治安維持法の復活などについて触れる方がよっぽど危険なように思えます。
治安維持法は左翼狩りの面だけが言われますが、実は右翼側の摘発や自由主義者の逮捕など適用範囲が広がっていったという事実があります。
気になる方は「治安維持法小史」「昭和動乱の真相」などを参考にしてみてください。
ですので、今回の事件を受けて安直に左翼批判を行い言論統制を行うのはかえって民主主義の危機を煽るだけだと思います。
4.海上自衛隊への批判
山上容疑者が元海上自衛官だったということから、海上自衛隊への批判があるようです。
ですが、これもまったく的を得ません。自衛官だったのは約20年前との報道もありました。
単なるラベリングによる批判でしょう。
・終わりに
これを書くかどうか私自身、大変迷いました。不謹慎なのではないかと考えからです。
ですが、書こうと思ったのは、SNS上の惨状を見てです。このテロに対して多様な反応がありました。
その中で、ここで紹介したようないくつかの不穏な噂は目に余るものもあります。
「メディアの報道が影響を与えた」「アベガ―のせいだ」この手の噂は断定できるものではありません。
この事件を受けて、「反安倍」の代表的な方々に直接攻撃している方もいました。気持ちはわかります。
しかし、それでは何も変わりません。重要なことは二度とこのような事件を起こさないように努力をするということです。
批判が事件の理由だとしても、それを封じてしまったら、自由な言論はできません。
もし、今回の被害者が安倍氏ではなく、辻本氏だったら、左派側から同じような攻撃を受けたかもしれません。
だから、批判を封じるのでは解決できないのです。ただ、批判の度合いについて、煽情的な表現というのは注意が必要なことは事実です。
我々が民主主義と法治主義を守るためにすべきことは、犯人を法に則って裁き、犯人のような人間が少しでも少なくなるような社会を民主主義政治を通じて模索することです。
今回の事件で情緒的になって、左派の人々攻撃しても何も生産性がありません。安倍氏の支持者の皆さんは安倍氏の意思を政治で体現するために参加するのです。
暴力による政治の転換は許されません。今回の事件は許されない事件であることは間違いありません。
だからこそ、今回の事件を受けても民主主義を守るために、理性的になり、選挙を迎え、厳粛に犯人が法によって裁かれるのを見守るのが一番だと思います。
最後に、長きにわたって日本を率い、政治において懸命に活躍してこられた安倍晋三元総理に心からご冥福をお祈りいたします。