対談 池田大作は語る:後へ続くひとのために(昭和44年)(4)小林正巳(毎日新聞記者)
<女性の生き方>
小林 女性を本来、平和主義者として、平和運動の役割を期待されていますが、歴史上実際問題として、戦争の抑止力になっていないように思えるのです。人間の半数が女性だというのに、社会的エネルギーになりえない理由をどう考えられますか。たとえば、エゴイズムなど。
池田 いろいろ考えられますが、わが国の場合、長い間の封建体制のため、女性は表面に出 ず、うちにこもって家庭を守り、子供を育てることに専念していればよいという観念がしみこんできたこと。また、あらゆる技術の未発達と、大家族制度のために家庭内での仕事が忙しく、外に目を向けるゆとりがなかったことも事実です。それに御指摘のように、女性特有のエゴイズムでしょうね。
ところが、戦後二十年をへて、社会機構も大きく変わり、社会体制が、非常に解放的になってきました。家族制度も崩壊し、生活の面でも、家庭における婦人の仕事は、大幅に合理化されてきている。新聞や雑誌でも、婦人が家庭において、日中の余った時間をどのように価値的に使っていくか、といった記事をよく見かけますね。
もういくらでも、社会的に活躍していける余地はあると思うのです。あとは婦人の皆さんの自覚の問題、さらにもう一歩深くいえば、一人一人の生命の内からの解放が、問題ではないかと思う。
実際、女性は全人類の半分を占める大勢力があるわけですから、一人一人が自覚し、高い目的観をもって団結したならば、女性だけの力ででき得ないことなんか、何一つないでしょう。一日も早く、平和主義者としての本領を発揮してもらいたいものですね。
<女性の主体性の確立>
小林 何百万という女性を指導されている立場から 、女性の生き方についてどう考えられていますか。
池田 最近は女性上位時代などといわれていますが、女性の社会的地位はまだまだ低いと思 いますよ。いわんや、これまで、歴史を動かし、社会を悪くしてきたのは、すべて男性であり、女性はつねに圧迫され、苦しめられてきたといっても過言ではない(笑い)。
こうした女性の地位を向上させるという観点に立ってみると、この女性上位などというのは、あまりにも浮わついたいい方です。男性の側も、冷やかし気分で、そんな言葉を口にすべきではないし、女性自身も、ほんとうの地位向上のため、真剣に思索し、努力すべきだと思う。
女性自体の自覚の問題としては、なによりも大きな目的観に立つべきだということです。具体的にいうと、社会的な視野に立った、自分の人生の行き方という問題に関して、確固たる信念をもつことです。家庭という狭いカラのなかで、いつも誰かに頼っていくような、弱々しい自分を思い切って革命することです。
古い言莱で「三従」というのがあるでしょう。子供のころは親に従い、結婚すると夫に従い、年をとってからは子に従う。それが女の一生だということです。
過去の時代のことをいっているようですが、現在でも事情は変わっていない。教育ママなどというのも、ある人にいわせると、やがて自分が頼ることになる息子を頼りがいのある 支えにするための投資だといっている。
そこまで断定するのも、どうかと思いますが、たしかに、一面では、真理をついているのではないでしょうか。
少なくとも、男女同権という以上、女性もまた、自分自身の人生のプランをもち、もし夫がなくなった場合、あるいは子供も一人立ちさせ、自分一人になったときに、どうやって生きていくかといった備えだけはしておくべきでしょう。
<個人と 全体との調和>
小林 女性の主体性の確立ですね。でも、女房が主体性を確立しすぎると家庭のなかのパランスがくずれるということは。
池田 主体性のうえに立って、家庭にあっては夫や子供と調和をつくり、幸福な家庭生活を営んでいく。それがほんとうに賢明な婦人の在り方だと思います。大事なのは個と全体の調和です。それは、個を殺して全体のなかに溶けこむことでもなければ、全体を無視し、破壊して、個を主張することでもないのです。両方をともに 生かしていってこそ、ほんものだと思います。
<美しい女性を創る>
小林 女性の美しさをどうお考えですか。
池田 女性の真の美しさというものの根本は、こうした自己の確立から出発するものではないでしょうか。そして、そういう美しさは生命の内側から発散してくるものであって、決して年齢などに左右されることはないと私は思う 。むしろ、年をとれば、かえって深みを帯び、輝きを増してくるものが本当の美しさだと思います。
その意味から、私は、女性はもっと自分の美しさというものに対して、自信をもつべきだと思う。よく結婚して、家庭に入ってしまうと、少しもかまわなくなったり、少し年をとったからといって、すっかり自信をなくして、それが結果として老けさせてしまっている例があります。
あるいは逆に、表面ばかり飾り立てて、自分の持ち味を殺し、得体の知れない奇妙な姿になってしまっている場合もありますが(笑い)、どちらも同じことだと思います。
確立された個性、洗練された教養、磨きぬかれた英知、人生に対する自信といったものが、生命の内奥から輝きを放っていくと同時に,自分を知り、自分に合った美を強調していくことによって、年齢に応じ、自分に 応じた最高の美しさを持続していけるのではないでしょうか。