可愛いね。
お風呂上がり。脱衣所から出て5秒後に、聞いて!と、ふと思い出した昔の話を夫に聞かせる迷惑な嫁。
小学6年生の時、自分の靴を隠された経験がある。結局、低めの木の下に土を被った状態で見つかった。その日に見つかったか、翌日だったかはちょっと覚えてない。
白くてツヤっとした生地のバレエシューズみたいな靴だったな。買ってもらったのかお下がりだったのか覚えてないが、クラッシックなオシャレ靴だった。
学校現場では「靴隠し」と呼ばれる、よくあるといえばあること。でも、当然先生や両親は私が悲しむのではないかと焦っているのは感じた。
私が夫に伝えたかったのは、その出来事ではなくて、その時の私の心情だ。
「大人たち、大変そうだな。大きなことになってるなあ。もう、いいのにな。」と思っていた。「おおー。隠れてたのか。」程度。でも、そう思っていることは何となく言えなかった。
どうして、悲しくなかったのだろう。全く意地悪される心当たりがなかったからかな。とか、遠慮してたのかな。とか、本当は傷ついていたけど無意識にそう思わないようにしてたのかなとか。
話しながら、どこにも着地できなかったけど。
我が子には、自分の感情を感じ取る力が、きちんと備わってほしい。何の迷いなく、思ったことをそのまま受け入れて、表に出せるように。
いい感情も、悪い感情も、全部出せばいい。子供のうちは、そういう経験がたくさんできますように。
センスオブワンダー。大学の本棚で見つけた言葉はずっと響いている。
そんな軽快な滑り出しから想像できないほど答えのない語りを終え、悶々としている私に、夫が言った。
「可愛いね。」
神か!
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