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Photo by
ma_ruku
14年目のクリスマス・イブ
イオンには、夫が10人は居る。
よく見かけるダウン、黒いズボン、メガネ、整髪料すらつけていない休日仕様のぼさぼさ頭。
子どもたちが習い事の間に、ふたりで晩ごはんの買い出しに行き、いつのまにかどこかへ消えた夫を探す。夫がカートを押しているので、居ないとカゴがなく困るのだ。
私は右手にブロッコリー、左手に生ハムのパックを持ってキョロキョロあたりを見渡す。ああもう!と思う。まじで似たような男が多すぎる。
イライラしながら、この際、夫にウォーリーの服を着せたろかと思う。見つけやすいし、そもそも似てるし、「すみません、ウォーリー見ませんでしたか」と最終手段で聞けなくもない。見つけたときもたぶん妙に嬉しいし。
ぼーっとした顔で、夫は惣菜コーナーを眺めていた。私に気がつくと、謝るでもなくブロッコリーを受け取るでもなく「お昼、ラーメンにしない?」と真顔で聞いてくる。惣菜コーナーでラーメンに至った思考回路はよく分からないが、朝から雪で寒かったので「いいよ」と返す。辛い味噌を溶かしたとんこつラーメンを想像して、頬がゆるむ。晩ごはんには夫がチキンを焼いてくれるらしい。
イブのラーメン屋はいつもより空いていた。カウンターに座るおじさんたちと、家族連れがぽつぽつと。味玉の半分を娘にあげて、息子からメンマをもらい、ラーメンに辛味噌を溶かす。
「あー今日の夜はテレビなんもいいのやってないね」「UNOでもする?」「ぼくドンジャラがいい」「やだパパが勝つからつまらない」「あなたラーメン全く減ってないけどしゃべる前に食べることに集中してくれない?」
がちゃがちゃしたラーメン屋で、どうでも良いことをがちゃがちゃ喋る、結婚14年目のクリスマス・イブ。