「B2B製造業のコミュニケーション革命」を読んで
もしこの本を1年前に読んでいたら、私は会社を辞めていなかったかもしれない。
ちょっと大げさですけど、私が「B2B製造業のコミュニケーション革命」(氣賀崇・著、東洋経済新報社)を読み終えた感想です。
前職は、この本の対象市場である日本のB2B製造業のプロダクトマネージャーで、プロダクトのマーケティングコミュニケーションも役割として担っていました。だから、この本で書かれている「日本のB2B製造は情報発信に保守的だ」という認識や、「コーポレートコミュニケーション(CC)とマーケティングコミュニケーション(MC)、商品事業部間、日本と海外拠点間が縦割りになっていて自社の価値が伝えきれていない」という問題提起は、「そう、そうんですよね」と共感できます。この本にも進んでいる事例として取り上げられているメーカーにいましたので、積極的に取り組んでいました。統一したブランドメッセージの発信や、必要な商品情報の提供はしっかりやれていたのではないかと思います。それでも、担当者としては、歯がゆい思いや、もっとやれるし、もっとやりたいという気持ちがあったのは確かです。その歯がゆさや、もっとやりかたったことが、この本にはとても分かりやすく書かれています。
この本の冒頭に書かれている「伝わらなければ存在しないのと同じ」というメッセージは、ほんとにその通りだと思います。だから、可能な限りの情報をコンテンツ化しデジタルの基盤に乗せ、デジタルコミュニケーションを駆使して潜在顧客に伝える。プロダクトマーケティングの立場でこれを実現したいな、と思っていました。
そしてもう1つやりたかったことは、デジタルで顧客とダイレクトにつながることです。情報を一方向で顧客に伝えるだけでなく、顧客と双方向でコミュニケーションできるようになりたい。そうなれば、価値伝達がより確実にできるようになりますし、顧客の声も直接聞けるようになり、新たな価値創造の機会も広がります。いわゆるコミュニティマーケティングのようなことをデジタルの力を使ってやりたいな、しかもグローバルで。そんな妄想を持っていました。この本では、ベテラン従業員が貢献できる分野としてコミュニティの運営が例として挙げられていました。それを目にしたときに、私の最後の仕事としてやれたかもしれないし、やれていれば楽しかっただろうな、そんなことをちょっとだけ思いました。
この本は、B2B製造業の経営層の人に読まれることを想定して書かれているとのことですが、マーケティングコミュニケーションの実務担当者にとっても役立つと感じます。自分の担当領域が、デジタルマーケティング全体のどこに位置付けられてるかを俯瞰することができますし、デジタルマーケティングの現状確認や戦略立案のチェックシートにもなりそうです。
B2B製造業でマーケティングコミュニケーションやプロダクトに関わる方には読んでほしい一冊でした。