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中高年社員のキャリアに『計画的偶発性理論』のすすめ

 少子化による労働力不足への対応策として、中高年人材の活躍が期待されています。一方、希望退職やリストラで中高年社員は複雑な立場に置かれています。このような不確実な時代に、中高年社員が前向きにキャリアを考えるためにはどうすればよいのでしょうか。そのヒントを私は偶然のきっかけから得ました。それが『計画的偶発性理論』です。

中高年人材の活用は社会課題

 少子化で労働力人口が減少する中、政府は中高年社員の活躍を促進しています。2021年に高齢者雇用安定法を改正し、65歳までの雇用を企業に義務づけました。また70歳までの雇用の確保を努力義務に掲げています。

 企業も中高年社員が活躍できる環境を整えてきています。厚生労働省 2023年「高年齢者雇用状況報告」によると、99.9%の企業が65歳までの雇用確保を実施済みです。また、41.6%の企業が70歳まで働ける制度を導入しています。

でも企業存続にはリストラも必要

 企業は中高年社員を働き手として期待している一方で、リストラの対象にもしています。2024年は多くの企業で希望退職が行われ、前年比で3倍もの希望退職者が募集されました。対象者の80%は黒字企業によるものです。企業は「変化が激しい時代に、存続し持続的に成長するために必要な施策」だとしています。バブル世代の大量入社で、年功序列のために賃金が高くなった中高年社員を多く抱え、経営を圧迫していることも理由のようです。

50代会社員だった私のケース

 私は新卒で日本のメーカーに就職し、34年間働いていました。定年まで働き、その後5年間再雇用されるつもりでしたが、業績悪化に伴う希望退職の発表を受け、退職を決意しました。悩みに悩んだ末、転職と個人事業の開業というセカンドキャリアを選びました。

キャリアを変えた「計画的偶発性理論」

 私が希望退職を考えていたとき、偶然にもキャリアコンサルタント養成講座でこの理論を学びました。このことが私の決断に大きな影響を与えました。

 「計画的偶発性理論」は、スタンフォード大学の心理学者・ジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア構築理論です。この理論は、予測不能な偶然を計画的に活用することで、キャリアを発展させる方法論です。

 私が転職し個人事業を開業できたことには3つの偶発性があると気づきました。①会社員時代の人脈、②コロナ禍で取った資格、③SNSをやっていたこと。この3つです。

 転職先は、業界団体で知り合った方を頼った結果、決まりました。転職エージェントではなかなか見つからず困っていたのですが、社外で築いていた人脈が大きな助けになりました。

 また、コロナ禍で在宅勤務が増えたことで1日に2時間の余裕が生まれました。その時間を活用して中小企業診断士とキャリアコンサルタント資格を取得。この資格が個人事業のスタートを後押ししました。

 個人事業の開業を決心させたのはSNSでした。私はビジネスSNS・LinkedInを始めとし、複数のSNSをやっており、多くの方と交流していました。その結果、IoTに関連した相談や業務委託の依頼が舞い込みました。これが個人事業の開業につながるきっかけとなりました。

「知っている人が起業していた」「コロナ禍で勉強時間ができた」「SNSで仕事をもらった」。この3つの偶発性が、59歳での転職と開業というセカンドキャリアにつながりました。

計画的偶発性は会社で働き続けるためにも重要

 私が希望退職に応募するかどうかを悩んでいた時、社内のキャリアコンサルタントと面談をしました。その方によると、「最近は50代後半や定年直前の方が新しい部署へ異動されて、活躍するケースが増えている」とのことでした。中高年社員が新たな環境に身をおくことで、人材としての価値が新たに生まれる。これも偶発性が作用している例と言えるでしょう。

人生の後半戦に「計画的偶発性理論」を

 予想外のことが起きる変化の激しい時代に、計画的偶発性理論は中高年社員にとって羅針盤のような役割を果たしてくれるでしょう。偶発性を味方につけ、自分らしいキャリアを創造していくことで、人生の後半戦が豊かなものになるのではないでしょうか。


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