カンボジアからタイへ ガタゴト陸路列車の旅 - 後編 -
カンボジアのポイぺとからタイのバンコクまで陸路国境越えをして列車の旅をしてみたのですが、列車に乗るまではなかなか順調でした(前編参照)。では、いざ、乗車いたしましょう!
三等車両のみでの運行
13時に切符を買える窓口が開くというので、呑気に座っていたわたしたちの目の前で人が並びはじめました。さすがタイ、ちゃんと並ぶんですね。並ぶってことは自由席か、と気づきまして並んで切符を買いました。現金を支払って紙切れを頂戴します(49バーツ)。49バーツをUSドルに換算すると2ドルちょっと、妙に安いことにびっくりしました。だって、5時間半くらい乗るんですよ。どの車両でもいいようなので、真ん中あたりに乗ってみました。バリアフリーではありません。手すりをもってどっこいしょ、と乗り込む感じのちょっと懐かしい列車でした。すべて2席ずつ向かい合わせのボックス席。わたしが田舎の高校時代に通学に利用していた羽越線を彷彿とさせるもので、天井には扇風機。エアコンのないこのタイプを三等車両というそうです。国境からバンコクまでは三等車両のみでの運行でした。
ずっと暑い、ずっと田園風景
列車はほぼ満席。隣のボックスのおばあちゃん(タイ人らしい)がわたしたちの荷物は席に置かず上に上げろと言うものだから、がんばって上にあげました。そうしてあと2人座れる状態をつくったところで、おばあちゃんがわたしの隣に自分の荷物をどーんと置きました。なんとちゃっかり者め。ソーセージやらしゅうまいやらをつまみながらビールを飲んでいて異言語を発しているわたしたちの隣に座りたい人もいなかったみたいですが、笑。幸いお天気はよく、青い空と緑の田んぼ、最初は、わ〜きれいだねなんて言っていましたが、その風景がずっと続きます。4時間くらいですかね。窓は全開にできるタイプなので車両には風が吹いていました。けど、湿気をふんだんに含んだその風で、わたしの髪の毛は梅雨時のくせっ毛乙女の悩みそのものになる始末。つまり、ずっと暑くて汗だくでした。その証拠に乗車中一度もトイレに行かなかったんです。ビールを飲んだのにね。列車にはちゃんとトイレがついていました。
売り子と客層の変化
車中ひっきりなしに売り子が通りました。氷と水やジュースが入っているバケツを両手にもったお兄さんや、手作りのちまきみたいなお菓子や米に何かが乗ったものを売っているおばちゃんたちがタイ語で何かを言いながら車両間を行ったり来たり。腰にコルセットを巻いて両手に重そうな商品たちを持ったおばあちゃんが2往復めくらいに商品を持つ手が片手だけになっていたのを見てほっとしたりしました。うとうとして4時間ほどたったころ、なんとなく風景が田園から街っぽくなってきました。とともに、車両中の客層の様子がガラリと変わっていたのです。浅黒くてパジャマみたいな服を着たおばちゃんたちは、身綺麗にした女子学生に、汗じみた帽子のおっちゃんたちは、スポーツカットの男子たちに変わっていました。そういえば売り子さんたちももう来なくなっています。これは、確実に大都会バンコクに近づいているということ。こういう観察は飛行機にはないですね。パスポートのチェックが1回と切符のチェックが1回ありました。パスポートに関しては顔写真のページをひらいて待っていたのに、わたしのだけは、いいよっ! って手をはらわれて、見てくれなかった。なんでよ!? 見てよ。
最後の難関
次の停車駅がどこなのか、だいたいの時間で考えるしかありません。わたしたちは終点ではなくBTSに接続するパヤタイ駅で降りたかったので、Google Mapと時計を頼りにそろそろかと通路を右往左往してドアに向かっていると、「あんたたちが降りる駅はまだよ」みたいなことをジェスチャーしてくるおばちゃんに会いました。確かに列車は予定より少し遅れていて、降りる駅の2つ手前でした。よくわかったね、おばちゃん。世の中ボディランゲージがあればなんとかやっていけるんじゃないかと思いました。そして降車駅のパヤタイ駅に到着。前の人たちについて降りようとしたとき、人々が視界から消えました。先に降りた友人が「すごい段差、気をつけて! 」と言うんです。外は暗くてよく見えませんが、乗る時よっこらしょと上った列車の階段を降りた先は、ホーム・・・ではなかったんです。いや、ホームなんでしょうけど、いわゆるプラットフォームがないんですよ。だもんで列車と地面がすごい段差になっていたというわけです。キャリーケースを下ろすのに一苦労。この列車に乗るなら絶対リュックだ! 後の祭りでしたが。もう夜だったから写真を撮れなかった(というか大都会バンコクなのにショックで動揺もしていた)のでYoutubeでこんな動画を見つけましたので貼り付けてみます。ここバンコクよね? という感じでした。
大都会のスカイトレイン
19:40ころ、バンコクのパヤタイ駅に到着したときには、”汗どろ”という表現がぴったりなわたしたち。顔はぺたぺたしていたし、髪の毛はぼそぼそしていました。近代的な大都会のスカイトレインBTSに乗り換えたとき、わたしたちから漏れた言葉は、「すずしぃ〜〜」。列車の中でInstagramに列車の写真を載せたらカンボジア人の友だちから「その列車に乗ろうと思ったけど三等車両だけだからやめて車にしたわ」というメッセージがありましたが、まぁ、そういうこと。エアコンの快適さを痛感した乗り換えでした。それから、BTSに乗っている老若男女のこざっぱりとしてきれいなこと。着ている服も髪型も女性のお化粧も洗練されてるんだもの。自分の姿がちょっと恥ずかしくなったのでした。同じパヤタイ駅で、バンコクの表と裏を垣間見たというか、急速に発展するとこういう取り残しの部分もあるということがわかりました。
バンコクのホテルに泊まり、翌日は飛行機でプノンペンにさらっと戻ったのですが、飛行機の簡単さによって列車旅の贅沢さを逆に感じたりしています。たった2泊3日の旅でしたが、長い旅をしてきたような感覚になりました。いい旅でした。また乗る? って聞かれたらわかりませんが、笑。のんびり旅が好きな方にはお勧めします。