
#21【潜入レポ】『セクハラ・性暴力のないキャンパスへ~学生からの提言~』
2019年6月20日(木)四ツ谷にある上智大学の一角に、有名大学の学生たちが集まりました。メンバーは…
【登壇者】
Speak Up Sophia 横井桃子さん(上智)蔵内晴恵さん(上智)
Voice Up Japan 山本和奈さん(ICU)パリ・ウマリさん(一橋)
Tottoko Gender Movement 野島久嗣さん(東大)戸谷知尋さん(東大)
Believe Campaign@創価大学 市川杏さん(創価)中根未菜美さん(創価)
谷虹陽さん(慶應)
shaberu 春藤優さん(早稲田)ホン・ジウさん(早稲田)
【ゲスト】
Business Insider Japan 竹下郁子さん
【モデレーター】
林香里先生(東大)三浦まり先生(上智)
彼・彼女らは、現役大学生として自分の大学へ提言を行いました。
今回はイベント全体の流れやそれぞれの主張を軽くおさらいして、私の意見を記したいと思います。以下登壇者の名前は苗字のみにさせていただきます。
ちなみに、私は入場した瞬間から、ここに私の出身校・中央大学が並んでいないことに恥ずかしさと悔しさを抱いていました。同じ土台にすら立てていないことに苛立ちすらも覚えました。
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▷ ディスカッション・意見交換 ◁
開会のあいさつ等済むと、さっそくモデレーターの三浦先生が司会となって、登壇者に向けた質問や意見を交わす時間となりました。ひとつずつさらっと記していきます。
① 当事者意識を持ってもらうことの難しさ について
山本 性に関することのみならず、いかなる問題も当事者意識を持たせることは難しい。しかし、国際比較をすると日本では特に、芸能人や有名人がメディアを通して、ジェンダー等へのエンパワメントをしないことが大きな原因になっているように思います。また、有名人でも一般人でも、「ふつう」から外れた「意識の高い発言」が嫌われる傾向があるため、日常的に発言しづらく、人に当事者意識を持たせることが難しくなっている一因なのではないか。
ウマリ 性暴力で受けるのは身体的な・見える傷ではなく、精神的な・見えない傷だからこそ、気付かれずに深刻化する。当事者だけでなく、周辺にいる人たちも「数年後には治るから問題ない」と思い、問題意識が低いままになっている。
[左:山本和奈さん、右:パリ・ウマリさん]
② 活動を始めたきっかけ・集客/大学との連携の難しさ について
横井 活動を始めたきっかけは2つ。①怒り←伊藤詩織さんの『BlackBox』を読んで、眠れなくなるほど日本の現状に苛立ちと変える必要性を強く感じた。②エンパワメント←性暴力や同意について学ぶうちに「私の体は私のものだ」という感覚を経た、自分もエンパワメントされ、人もしていきたいと意識した。
蔵内 同性に対する自分の対応を見て、自分の加害者性に気付いた。同時に自分の被害にも気づけた。自分以外にも被害者だけでなく加害者もいるはず、彼らを減らしたいと思い、活動に参加するようになった。
[左:横井桃子さん、右:蔵内晴恵さん]
上智は昨年2回の性的同意(:セクシュアル・コンセント)のワークショップ(以下「WS」)を開催しました。その背景には、大学側との協力がありました。
2人
▷点と点が繋がって、線になりました。まずは理解のある大学教授と繋がることから始め、次第に教授の中や学生の中に広まっていった。
▷大学のシステムの中に、学生の気持ちを大学側に伝えられる窓口があるといいのにな。
▷教授・学生センターなどの大学側主導だけじゃなくて、学生全体が動けるようにすべき。連帯できる基盤を作って。
▷性的同意WSには日本人は来ない… 特に男子はマジでいない!!
▷イベントを企画する際には、学校との共催でやるべし!ムーブメントを広めるために大学との協力は必須
③ 署名活動 について
谷 慶應の教職員と学生の連名で声明を出しました(5月)。そして現在は、慶應関係者による署名を促しています。卒業生まで含む慶応義塾大学関係者を対象にしているにもかかわらず、署名の集まりが芳しくない。ぜひご協力をお願いします。
三浦先生 学生が署名活動をするのは新しい動きですね!
[谷虹陽さん]
ジウ 早稲田大学には、学生が相談を受けられる窓口・経路はある。けど、「それを知っている人がどのくらいいるのか」「すべての被害者がその経路を通るか」は疑念が残っています。被害に遭った方が、大学から呈示された手段を取るか悩んでいるのが現状なんです。
また、被害に遭った事柄について、大学として判断を下したりはするものの、被害者支援・ケアまではいっていない。カウンセリングやトラウマ治療等をはじめとした、被害者支援策を充実させてほしい!
そして、窓口のうちの一つである「GSセンター(ジェンダー・セクシュアリティ・センター)」もセクマイ(セクシュアルマイノリティ/性的少数者)用のイメージが強いから、セクシュアリティの違和などでは悩んでいない学生や性暴力の被害者・加害者などが行きづらい。アクセスが弱いんです。
三浦先生 窓口・相談室を作っても、学生からの信頼を得られてないのは大変心苦しいです。
[左:春藤優さん、右:ホン・ジウさん]
④ 大学内での活動 について
戸谷 東大内における悲惨な性犯罪・性暴力事件、並びにそれに対する大学側の酷い対応を受けて(ハラスメントであると認定する教授や弁護士が誰なのか、ハラスメント認定基準は如何なるものかなどの)情報公開を求める署名をこれからする予定です。
野島 いまサークルで中心となっているのが院生ばかりなので、学部生の勧誘やコアに動けるメンバーの勧誘・育成をしていきたい。先生たちとの協力関係もこれから築いていくつもりです。
また、保守的な大学を動かすためには、国内外における成功例の提示が効果的かなと思っているので、調査研究と発表の場を作りたいと思っています。
[左:野島久嗣さん、右:戸谷知尋さん]
中根 創価では、複数の学部で性的同意WSが必修授業に組み込まれました!《会場からの拍手》
それが達成された背景には、学生へのアプローチと大学へのアプローチの2つを根気強く続けたことがあります。約3年かかりました。
まず、学内から2000人もの署名を集め、学生の支持を得られました。動きが波及して、キャンパスハラスメントに対する教授陣の意識が向上したと思われます。この際には、コアバリューに言及するときの責任の重さを実感しました。これら署名をもとに、学校との長く粘り強い交渉を続けました。
[左:市川杏さん、右:中根未菜美さん]
⑤ 大学側や周囲の大人にできること について
林先生 マッチョでマスキュリンな東京大学を変えるには、長い時間と大きな労力がかかりますね…。ジェンダー等を「いつか何とかなる」と、ちっぽけな問題と思っているんです。当たり前のことに疑問を持つ・intellectualityを要請するテーマであるはずなのに、それが出来ていないと私は思います。
竹下 ビジネスインサイダーでは長らく就活セクハラアンケートについてご報告します。
▷回答者は660人(男性137人・学生5割以上)
▷被害ある 326人=半分以上
※これに答えているというバイアスがあるとしても…
▶学生から相談しやすい空間づくりを作ってください!
どう学生を守るのか具体的にアナウンスを。Ex.メール・トイレに広告等
・内定率・就職率ばかりを気にするキャリアセンターには相談できない
・被害に遭ったことが周りにバレたらどうしよう:セカンドレイプのおそれ
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▷ 各大学への提言 ◁
以下に、登壇者たちが各大学に対して行った提言の大枠をまとめます。
上智開催だったので、会場内にも上智生・ソフィア生が多く、参加者に対し横井さんが「自分が被害に遭った時に、誰にどこにどうやって話せばいいかわかりますか?」と訴えかける姿は、説得的で変革の必要性を私は強く感じました。
きっと同じ投げかけを中大で行えば、中大生はボーっとしてしまうでしょう。いや、そもそも「え。どーせ性暴力被害になんか遭わないし」と思考停止する人が少なくなさそうで鳥肌が立った…。
ICU出身の山本さんは、性暴力に関するアクティビストとして大活躍しています!彼女の発する言葉は力強く、活力に満ちているなと私も触発されています。
彼女の愛するICUは、セクマイへの対応・配慮は充実しているよう。しかも日英語のバイリンガルでなされるという。一方で、ICU生には「人へのレッテル貼りやプライドの高さゆえの、被害加害意識の低さがある」と冷静に分析していました。好きだからこそ内部への厳しい目を忘れないんだなと感心しました。いわゆる「意識の低い人」にも理解が広まるように、ジェンダーの授業の必修化を訴えていました。
一橋大学で勉強する外国籍のウマリさんは、少し緊張しながらも自分の言葉で話を進めました。一橋大学法科大学院で起きたアウティングによるゲイ男性の自殺事件にも言及した上で、右のような提言を残しました。
東京大学はいい意味でも悪い意味でも、日本のスタンダードを形成していく立場にある、と関係者は口をそろえて言いました。大学の教授・教職員はじめ、学生までもジェンダー意識の低さを持っているという。女性が2割しかいない「異常」な空間で「スタンダード」が形成されていくことにつき、私は不安を隠せません。少しでもマジョリティ特権を自覚した上で、マイノリティへの理解ある人が増えるといいなと願っています。
創価大学では、中心となっていたメンバーが抜け、次第に世代交代が起きているようです。そんな中でも変わらず勢いが衰えることなく、性的同意の理解推進や性暴力防止啓発などにおいて、先頭をきって進んでほしいと思っています。
私も本当は横で共に戦いたいけれど、中大としては、創価だけではなく、ほかの先進的な大学に数年後あとを追うように進んでいくことしかできないんじゃないかと失望と諦めの念を抱いています…。
谷さんは性に関するイシューのみならず、ほかの社会問題についても広い関心をもって活動されている男性です。この分野で男性が顔出して意見を述べることは、恥ずかしながら・悲しいことにまだまだ少ないのが現状です。谷さんを皮切りにあとを追うような・理解ある男性が増えるといいなと思っています。
早稲田大学はICUに並んで、ジェンダー意識が高い大学である(厳密には、大学として動くための機関が存在している)と思っています。「中大も真似でいいから早くGSセンター作ってよ」と思っています。もう卒業していまいましたが…。
以前私はGSセンターに、お勉強のために見学に行かせてもらったり、詳しいお話を聞かせてもらったりしました。繋げられるので、中大の中でこの意思を継いでくれる後輩はいないものかなぁ。DMください!
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▷ まとめ ◁
提言のあとはフロアからのご意見をうかがって閉会となりました。
大学側の「人」(たとえば大学教授や事務部署職員などの1人ひとり)の関心がまだまだ低く、宣伝をしても届かない層が極めて多いことに、幻滅しました。また、的外れな意見や「大人」から若者に対する意見もあり、残念な面も少なからずありました。
しかし、嘆いてる暇は私たち・若者にはありません。
私たちが「若者」であるうちに社会を変えてやりたい!!とさらに熱が入りました。
これからの社会は、どのアクティビストも言っているように「連帯」が必要です。徐々に連帯することができるようになった社会だからこそ、次世代に向けて一歩ずつでも動き続けなければいけないな!と活力の源になるイベントでした。
最後に
今回のイベントで印象に残ったセリフをメモしておきたいと思います。
このイベントに行けて本当に良かったです。久々に刺激を受けました。
企画してくれた方に最大の感謝を。
おわり。
ーーーーー岡野めぐみ【SEX界のフィクサー】
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