個人配信新シリーズ開始への道のり。その2。「ホームグラウンド探し」
こんにちは。
今日は個人配信を始めるにあたり、自分の作品をどこでどうやって配信していくのかを決めたのかのお話をします。
私だけの視点で書いたものですし、
読む人によっては誤解を生むかもなので各社さんの実名は出しません(最後のコンパスさんは今後も配信が決定しているので出します)。ご縁頂いた会社、サイトの方々は本当に作品と作家さんを大切に頑張ってくださってるのだなと感じました。電子書籍世界も紙と同様に辛い辛いエピソードを多くの作家さんが味わっておられると思うので、どこもわかりやすい極楽ではないと思います。私は運が良かったのです。
ありがとうございます。
私の場合作品を「配信サービス会社」に委託して
各ストアに配信して頂くという道を選びました。アプリやサイトの連載ではなく、分冊版をコツコツ配信している作家さんは、今は珍しいことでもなく、びっくりするほど沢山おられるのを知ったのは近年のことです。
そんな作家さんたちにお話を直接聞けたらなあ!といつも思っています。
私は漫画家になって34年たちますが、個人配信はまだまだド新人なので、
沢山失敗しました。
以下、漂流記です・・・。
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最初に過去作品配信代行をして頂き、
新作もここで分冊で出していこうと思った会社さんは、ちゃんとサポート担当さんはいらっしゃいますが基本は作家側が自力でデータを作り、ストアに渡す書誌作成やセールの申請をして、結果立派な電子印税取り分が生まれる仕組みでした。
「長年担当さんや編集部、印刷会社さんに丸投げしていたけれどもこれからはそこを頑張らねば」「セールの申請も書誌の作成も、テキスト入力もミスの無いようにしなくては」「うわ‥どんどん経費がかさむ…怖い…」「売るためにはあれもこれもすべきだよ!!」「もっともっと」
というふうに、初めて新作をゼロからつくり、プランを考えるということでめっちゃ緊張し無駄に頑張りすぎました。
先方とのやり取りで齟齬が生じても落ち着いて説明すればいのに
テンパってしまって上手く出来ず、
でも素敵な人と思われたいのでやらんでもよいことまで立派にやろうとし、
結果クタクタになり原稿はずんずん遅れ、焦ってるうちにある日容量の限界を超えてしまい、ぷちんと・・・・。
どうやら私にできるのは、漫画を描くことだけだったようです。
一人で個人配信のあれこれを完璧にやろうとすると無理が生じる、却って迷惑をかけてしまった。
思い詰めず、リラックスしてやっていける場所を見つけて出直すしかなさそう・・・。
でもどうしたらいいんだろ?新作の原稿はすでに170枚出来てるのに、
最初の場所での分冊版配信を諦めることになりました。
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しばらくぼんやりしてましたが、10日ほどして、某サイトで連載をしてる友人作家さんに相談しに私は特急に乗りました。
「山田さん、普通に原稿料貰える電子の連載すればいいじゃない?私が連載してるサイトは紙の単行本販売を前提の無料連載とは違う、
有料連載枠があるよ。前もって相談すれば割と柔軟性ある対応をしてくれるから無理なブラック作業も避けられると思うよ。
既にこれだけの枚数が完成しているんだし、速攻使える完成原稿があるなら、私が担当ならうちで連載しましょう!っていうけどなあ~」と
ナチュラルな助言を受けました。
「最後かもしれないオリジナルを絶対打ち切られたくない気持ちはわかる。
でも、漫画は描くだけで大変なんだから、苦しい状況では続けていくのがちょっと・・つらくなっちゃう。もったいないよ。連載会議にはかけられるし100%通るとは言えないけどまずはそのサイトの編集さんと話をしてみれば?」
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(うん・・・もう突っ張るの疲れた・・・普通がいい)
失敗で気弱になっていた私は
初志をあっさり変更し、紹介して貰ったサイトレーベルの編集さんたちとZ00Mでお話ししました。
とても気持ちよい方々で、初回から信頼感が生まれました。
しかし連載企画は通らなかったです。
何故かというと、新作は過去に描いたある作品の流れを汲むっちゅうか、ぶっちゃけ続編だったこともあり、過去作初回から読んでいない人には伝わりにくい部分がありました。データ提出前に数枚ネームを描き足して工夫したけど「この時代ってどんな?」「この〇〇って、なに?わからない」という意見が会議メンバーに数名出たので、ストレスなく作品の魅力を読者さんにお伝えするのは難しい、もし連載するなら大幅に描き直して頂くしかないと思う」という結論になったそうです。
Zoomでご縁頂いていた担当さんは「それをすると別物になってしまう。ここまで完成している作品を発表させてあげることができなくなってしまう。だから、無理に描き直して再度企画を出してくださいとは言えない」と思ったと、正直に伝えてくださいました。
「別の完全新作ならもっと大きな可能性があるということも言われたんですが・・・」でも、別の作品は今は描きたくなかったので、ここでのお仕事も見送ることになりました。
なったのですが、割とさらっと立ち直りました。
なぜかというと、
「よし、加筆修正するぞ!!気が済むまでな!!」
という方向に舵を切っちゃったからです!
最初のZooM会議で完成原稿の気になるところを言ってもらってました。
規定枚数を守らねばならない紙雑誌で長い事描いていたからついついエピソードを詰め込んでコマ数が増えて、スマホで読者さんが読むにはもっと見やすくゆったりした画面で、セリフのフォントサイズもぐんと大きくする方が良かろうと聞いていたのです。確かにそうなのでした。
私も電子書籍よく買いますが、読むのは22インチの作業用液タブです。私のスマホすごく小さいので、スマホでは眼が辛いのです。
自分がそう感じるのならば、作り手として表現を工夫すべきだろう。
私は長年「詰め込んだらお得感もある紙文法」で描いていたけど、
「膨らませることでより伝えやすくなる電子文法」にシフトチェンジしたのですこの時。革命!!
(続編というより新作のつもりでもう一度、更に面白くなる表現やエピソードをたっぷり加えよう。ここで出てきたキャラは後の違う場面まで取っといて、あれもこれも見直そう。1銭も出ないけどまだぎりぎり生活費があるうちにやってしまおう。ここまで描いた完成原稿を大幅加筆修正したら内容が普通は崩壊するけど、
より面白くなるかもしれん気がする。面白くなってきたわ久々に。
大幅加筆修正をして再提出したら今度こそ企画会議には通るかもしれないけど、もうそれは無しってことにして、また別の場所で、初心に戻ってまだやれることをしよう)と決めました。
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で、そこから速攻また別の配信サービス会社の「コンパス」(こちらは実名出しますね)さんとやりとりし、新作の分冊版と、新しめの作品データをいくつかお預けすることになりました。コンパスさんは私が最初お世話になった配信代行さんよりロイヤリティはやや低め、でもキャンペーンやセールを作家に労力掛けさせずきめ細かくやってくださると伺っておりました。「漫画家さんには漫画だけ描いていてほしい。自分たちが代わってそれをやってあげたらネームの1本くらい描けるでしょ」と言うのを聞いて、おお、いいな!と思いました。出来る限り丸投げできることは丸投げしたい!
あと、こちらは私も愛読していた花とゆめの元編集さんが立ち上げた
会社なので、懐かしい少女漫画の匂いがして、肩の力が抜けてほっとしたのを覚えています。
どこのアプリ、サイト、配信サービスにも、特色があるなと思いました。
タイミングもあるし、相性もあるし、
どこは○○だし、ダメだ!というのではなくて、
自分に合うところで、無理なく進めていけるのが一番ですよね・・・。
だって漫画は描くだけで大変だから・・・。
それでも続けていきたいものだから・・・・。
そんなこんなで完成原稿の加筆修正をひと夏かけてやり倒しました。
170枚の原稿は230枚くらいに増えました。
ただ50枚書き下ろしたのではなく、「右頁下半分を左頁上に移動、拡大して描き足し、新エピソードはめ込んでこのコマはカットこのコマは拡大」とかやっていたので作り直したページは数えるのも怖いものになりました。
しかもジャンルは殺人的にちまちま描きこむ戦国ものなのでした。
ではまた明日。