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「金利投資」の基本。 ー 「お金持ち」の考え方。
2019年以前「金利は死んだ」と言われ、世界中の金利が@1%以下(日欧では一部マイナス金利)の状態では "不可能" だったが、「金利@3%時代」の幕開け。ー 拡大する「お金」の "闘い" 。|損切丸|note でようやく「金利投資」の基本的考え方を論じる事が出来るようなった。おかげで「損切丸」で書くことが増える(苦笑)。
(質問1)どちらの金融商品を選びますか?
①10年で確実に元金が+3割増える商品
②10年で3倍、4倍になるかもしれないが半分になる可能性もある商品
さて、みなさんはどちらを選ぶだろうか。
筆者の想像だが、おそらく今の日本なら80%以上が①を選択するだろう。逆にアメリカなら60%以上が②。今なら①米国債、②株、商品、暗号資産等のこと。金利が3%近くになって考え得る選択肢だ。
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まず日米では「インフレ」に対する "肌感覚" が全く違う。TIPS(物価連動債)のBEI(Break Even Inflation Rate、予想インフレ率)を見ると、10年BEIは@2.83%(5/2)。今の米CPIは年率+8.5%(3月)だが、10年平均で@3%弱とマーケットが予想していることになる。直近の株価下落で少し下がったが、10年@3%の運用でやっと「利益ゼロ」。これでは「投資」にならない。故に60%以上が株等のリスク資産を選好することになる。
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だが「お金持ち」は少し考えが違う。
例えば資産100億円の「お金持ち」なら10億円程度なら10年あるいは30年米国債>@3%に「投資」を振向ける可能性がある。30年@3%なら10億円が16.3億円(ネット+6.3億円、源泉税▼30%込)になる。しかも「固定」。その間米景気が減速してリセッションに陥れば丸々儲け。
では "なけなし" の貯金100万円を突っ込むとどうなるか。
10億円でも100万円でも計算上のリターンは同じ。100万円は163万円になる。問題は "なけなし" という点。「固定」リターン+63万円はあくまで満期まで保有すればのこと。例えば途中病気になって入院費が必要になれば、そこで持っている30年債は売らなければいけなくなる。その時に@4%に金利が上昇(=価格が下落)していれば「損切り」を迫られ元本割れ。100万円は80万、90万しか返ってこない。この2年間の国債市場の大変動を見ればお判りだろうが、価格変動リスクは国債も株やFXと何ら変わりは無い。
よく「分散投資」で「株:国債=60:40」などと言うのを見かけるが、あれはあくまで「余裕資金」に対して。「生活資金」まで突っ込めば、本意でない「損切り」を迫られることもある。逆に「10年+30%で十分」と思える「余裕資金」があれば投資の検討余地がある。事実アメリカでは国債ETFへ資金が入って来ているようで、2~5年後の米経済減速、リセッションに対するヘッジの意味合いもあろう。ここからはこの2年のような「超高速」金利上昇相場にはならないだろう。
(質問2)新規口座開設者に「特別金利」を付与します。どちらの金融商品を選びますか? 尚、「特別金利」以外の金利は@0.01%とします。
①1ヶ月@3%の「特別金利」定期預金
②6ヶ月@1%の「特別金利」定期預金
これはもっと簡単な「算数」。②の方が有利。「金利」を計る時の1つの "コツ" だが、見た目の「金利」を比較するのではなく「利息」で考える事。ちなみに100万円の「特別金利」で得られる「利息」は①+2,500円②+5,000円。だから銀行が「特別金利」を唱う時は圧倒的に①のパターンが多い。*見た目の「金利」でお得感を演出するが、 "裏" で計算するのは「利息」。まずは ”敵” の意向を知ることが "闘い" の第一歩である。
*見た目でいうなら、住宅ローンの「元利均等返済」もそう。こちらは「金利」ではなく「毎月の返済額」。知り合いには「元金均等返済」との比較を勧めている。当然「毎月返済額」はきつくなるが、ポイントは20年、30年で払う「支払利息の総額」。2%、3%で比較すると、余りの金額の違いに驚かれるかもしれない。即ち、それが銀行の儲けということになる。
同じ理屈が今の米国債にも適用できる。ぱっと見「金利」の高い5年@3%を買いそうになるが「利息総額」で考えると10年@2.98%や30年@3.03%とどちらが有利かは一概には言えない。例えば5年後に買う5年債が@2.96%=現状の5y5yの先々金利、以下なら10年@2.98%の勝ち。あとは個々の「資金繰り」事情と「何を持って良しとするか」の判断になる。
ウォール街からは「株は売られ過ぎ」「インフレ懸念は行き過ぎ」という ”悲鳴” が聞こえてきているが、筆者はそうは思わない。今後の米景気減速→インフレ懸念後退が論拠になっているようだが、だとすれば業績も落ちてくる。**金利の上昇とも矛盾するし、彼らの ”都合” にしか聞こえない。
**S&Pのイールドスプレッドも依然@▼2.4%近辺と高いまま。株価が下がるか金利が低下して@▼3%に戻るまでは要注意だ。ここは "マーケットの正直者”「金利」の声に耳を澄ますべきだろう。
筆者が元・金利トレーダーという事もあるが、3年前に「損切丸」を始めた当初に比べると、随分マーケットが見易くなった。 機能を停止した「金利市場」 vs 「槍が降っても上昇する株式市場」。|損切丸|note なんて書いていたのが懐かしい(金利が低すぎて…。苦笑)。
いずれにしろ「金利」が相場を客観視する重要な要素となってきたのは間違いない。ゴールデンウィーク中も海外相場は動いているので漏らさぬよう追っていきたい。まずは5/4のFOMCだ。