「ドル高」「円安」の終焉(?)。ー 「GDPギャップ」プラス転換が示唆する事。
注目の米雇用統計だが、米国債市場が急上昇(金利急低下)の後に急落とまたも大荒れ。ドル円も大分振り回された(苦笑)。以下、筆者の分析:
まあFRBによる「利上げ」ストップには十分だが、それで「ドル高」終焉とはいきそうにない。ヨーロッパの景気がアメリカより悪いからだ。
これでも ”底打ち” はしてきている。だが如何せんユーロ圏のPMIは好不況の分かれ目である50を大きく割り込んだまま。やはりエネルギーをロシアに依存し過ぎたツケは大きい。不良債権で苦しむ中国に傾斜し過ぎたドイツやフランスの自動車等製造業も心配。
そこにイギリスの不調も加わる。「利上げ」「ポンド高」を受けて、あれだけ上げてきた不動産価格が遂に下落傾向を示している ↓
だからポンドやユーロを対ドルでシンプルには買いにいけない。アメリカ同様「インフレ」が収まらないのも悩ましい ↓
ただ「円」はちょっと状況が異なる。
2019第4四半期~2023年第1四半期のほぼ4年に渡って続いたマイナスGDPギャップが遂にプラス転換。まあそれ自体は丁度「コロナ危機」時に当るので実は驚くに値しないが「損切丸」が注目しているのがその前の時期。
2016~2018年には明らかにプラス方向に転換。「デフレ」脱却は既に明確だった。「2016年以降日本はインフレ期に突入」は筆者の自説だが、三大都市圏のパートアルバイトの平均時給が上がり出した時期 ↓ とも符合する 。2019~2022年の「コロナ危機」はいわば一種の "ノイズ" で、「人手不足」は既に始まっていた。GDPギャップもこれに沿って動いており、ようやく ”本線” =「インフレ」に戻って来た。
「損切丸」でも再三再四書いているのでくどいと思われるかもしれないが(苦笑)、今日本で起きている「インフレ」は「円安」のせいでも「ウクライナ戦争」のせいでもない。▼8百万人の「団塊」の引退に伴う「人口動態」がコアであり、極論すれば「XXXミクス」「バズーカ」があろうがなかろうが、日銀総裁が代わろうが関係ない。
既にピークを付けている*原油価格やドル円をみれば明らかだが、企業が「値上げ」を急ぐのは原材料費上昇が主因ではなく「人手不足」に直面しているからに他ならない。
モノの「値段」って何だろう? ー 「卵」価格高騰に思う。|損切丸 (note.com) でも書いたが、モノの「値段」の約半分は「人件費」。これがサービス業になると比率はもっと上がる。
「人件費」が上がれば輸送コストも上昇し「インフレ」の発火点になる。だからFRBはあんなにPCE価格指数や平均時給に神経質になる訳で、「人件費」をガンガン下げられた日本の「デフレ」30年の方が異例中の異例。まさに "経営者天国" だったが、それで味を占めた薄利多売型の経営者は今大きな "しっぺ返し" に遭っている。
前稿 続・米「インフレ」の粘着力。ー 日本では「タクシー行列」に "異変" 。|損切丸 (note.com) でも日本の「需要」復活について書いたが、そういう観点から消去法的に「円」を買ってくる可能性はある。いみじくもGDPギャップのプラス転換がその事を証明している。
あとは日銀・財務省次第。本気で「円安」にトドメを指したければ、大胆な行動が必要になる。マーケットの意表を付くなら、例えば何の前振りも無く「マイナス金利解除」と「ドル売り介入」を同時に発動するとか。そうすればドル円を130円台まで押し戻せるだろう。
支持率低迷に喘ぐ政権としても選挙に向けて何か「策」は必要なはずなので案外無い話でも無い。多少のJGB市場の混乱には目をつぶって腹をくくれるかどうか。逆に何もしなければズルズルと「円安」が続く。ここは「日本」が試されることになる。