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続・「過剰流動性」の総本山は日本 ー 気になる「円キャリートレード」の行方

 やはり「過剰流動性」の総本山は日本 ー 「結果」を得るには一度「苦況」を乗り越えなければならない|損切丸 (note.com) の続編

 7月米ISM製造業総合景況指数 46.8 予想 48.8 前月 48.5
・雇用指数 43.4 予想 46.6 前月 49.3
・新規受注指数 47.4 予想 48.6 前月 49.3
・仕入価格指数 52.9 予想 54.4 前月 52.1

 「マーフィーの法則」ではないが悪い時には悪い事が重なる。 ”9月利下げ示唆” をしたパウエル議長は既にある程度状況を把握していただろうが、7月のISM製造業指数が予想外の悪化( ↑ 参照)。仕入価格がやや高止まりしているが、雇用の悪化を見ると今日(8/2)の雇用統計 ↓ も不安になる

 7月米雇用統計:
 非農業部門雇用者数(前月比)予想 +24万人 前月 +20.6万人
 失業率 予想 4.0% 前月 4.1%
 平均時給(前年比)予想 +4.0% 前月 +3.9%

 米国債を見ると年内残り3回のFOMCでそれぞれ▼0.25%の「利下げ」を織り込む動き。全体的には「リセッション」(景気後退)リスクを見始めておりターミナルレート(利下げの着地点)は@3.5%まで下がってきた

 とまあ株を売る理由には事欠かないわけだが、筆者は今回の下落の根本原因はもっと物理的現象 ≓ 「過剰流動性」の巻き戻しと見ている。 "総本山" は日本≓日銀であり、その「利上げ」が号砲となった

 *長年に渡る「過剰流動性」の "毒" は米株を中心に広範囲に行き渡っているヘッジファンド(HF)なら「円キャリートレード」で調達した「ドル」をナスダック、NYダウ、あるいは金(Gold)、WTI(NY原油先物)、ビットコイン(BTC)等のポジションとして積み上げてきており、その巻き戻しが起きている。元々多額の「円」を持っている「新NISA」≓ 日本の個人投資家や財務省の「外貨準備」もその一部

 *大型HFロングターム・キャピタルマネージメント(LTCM)破綻@1998の "直接被害者" (苦笑)だった「損切丸」の実体験に基づけば、今回の「過剰流動性」は同等、もしくはそれを上回る規模。ただ銀行規制や決済システムの高度化によりマーケットの強度は増しており "3日間でドル円が▼25円下落" のような短期的な暴落には至るまい。それでも内包している 「円高」のマグマ|損切丸 (note.com) に鑑みるとドル円が@162円 → @137円(▼25円)まで落ちてもおかしくはない

 とは言え2日間で▼3,000円近く暴落した日経平均もかなりの衝撃。今の相場を見ているとHFにとって「ドル円」と「日経平均先物」が主戦場と化している事がわかる。あまり動かないユーロやポンドと比較すればその違いは明らか。「資金フロー」がしっかりしていない日本株に狙いを定めるのは当然で、逆に言えば「円」絡みの相場が無ければ ”おまんま食い上げ” 

 「やっぱり株なんてやるんじゃなかった…」

 「新NISA」投資家からこういう "悲鳴" が聞こえてきそうだが**早々と「損切り」に動いた新参者もいるだろう。ただつらいのはHFも一緒。ここまでの相場になると ”レパトリ” (損失穴埋めのための売買)の "嵐" が吹き荒れているのは確実で、LTCM程大手ではないにしろ中小のファンドが閉鎖・破綻に追い込まれても不思議ではない。彼らもまた必死なのである

 **「損切り」は辛い。誰だって「損」をするのは嫌だが、経験談で言えばその後の相場で十分取り返せる。憤ったり嘆いたりしてそこで止めてしまうのは勿体ない。一旦「損切り」してポジションをフラットにした後、改めて相場を見直してやはり「買い」だと正しく判断出来れば取り返して "お釣り" がくることだってある。精神的に追い込まれると近視眼的になりがちだが「損切り」後の相場の方が何倍も大きいのはよくある事。筆者もそれを見逃して後悔した事が何度もあった。諦めるにはまだ早い

 @150円台で「オルカン」やS&Pを抱えて悶々としている「新NISA」勢の気持ちもわかる。だがここはムキにならずに冷静にマーケットを見つめ直して見ること。@135円ぐらいがドル円の適正値と見てきた筆者はまだエントリーポイント(相場に入るタイミング)を見出せていないが、ここはチャンスでもある。既に "重い荷物" を抱えてしまった投資家には酷な局面だが、冷静に相場を見切れているならそのまま抱え込んでもいいし、ドル円をヘッジ売りという手もある。一旦 "荷物" を降ろすのも選択肢だ

 まあ30年も相場に関わってくると周期的にこういう "嵐" に遭遇するが、出来れば苦しみたくないので段々ずるくなって "先回り" するようになる。 "慣れ" の部分もあるが、経験的に苦しい所を乗り切らないと果実を得られない事を熟知している点も大きい。大袈裟に言えばまさに「人生」そのもの。自問自答が何度も繰り返される:「切るのか、持つのか、お前はどっちなんだ?」「自分」を知るいいきっかけにはなるだろう

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