見出し画像

逃げ出す「お金」。向かう先は...。その後。ー 「インフレ」で「お金」が足りなくなる。

 2022.3.25. 逃げ出す「お金」。向かう先は...。|損切丸 (note.com) の続編。前回は「円安」に焦点を当てたが、この3年間「円」は対ドルで▼30%近く減価しており、まさに「円」から逃げ出した。特に黒田前総裁が「国債無制限買取オペ」を発動してから急加速「預金」は名目約1,100兆円で変わっていないが、ドル換算では▼300兆円近く資産価値を失った事になる。これでは日本人が ”貧しくなった” と感じてもやむを得まい。

 では「ドル建資産」に投資をした日本人は助かったか、と思いきや、事はそれほど単純ではない。2021年末比で言えばNYダウ▼7.6%、ナスダック▼15.4%、ビットコイン▼42.3%「円安」メリットを相殺*米国債はもっと悲惨で、長期債は金利上昇による債券価格急落でメタメタ

 *地銀 債券損益 2022年▼1,893億円(コア業務純益+1兆5,252億円)
 2023年▼6,385億円(+1兆6,818億円)

 金利の ”プロ” 不在の地銀では、今回のFRBによる急激な「利上げ」局面で ある地銀の米国債運用担当者の嘆き。|損切丸 (note.com) のようなドタバタ劇が繰り広げられたのは想像に難くない。邦銀は伝統的に為替リスクを負わない「ヘッジ付き外債投資」を行うため「円安=ドル高」のメリットも享受できなかった。業務純益が良かったのが救いだが、これなら外債投資など全くしない方が良かった事になる。 "横並び" でそういう独自の決断が出来ない所が日本式「みんな飛び込んでますよ!」の弱点ではある。

 さて今回は「ドル」がどこへ逃げているか、の話。

 標題に添付したのはドル建MMF(マネーマーケットファンド、短期国債等に投資したファンド)の残高推移だが、直近でうなぎ登りに増えており史上最高の5.5兆ドル ≓ 800兆円に達しようとしている。その原動力は何といっても「高金利」利回りは@4.2%を超え、特にシリコンバレー銀行(SVB)等の破綻以降、「銀行預金」からの移し替えが進む

 加えて足元の財政資金手当てのために財務省が短期債(TB、Treasury Bill)を大量発行しているため市場の需給が悪化「利上げ」予想とは別に ”TBプレミアム” が付き、1年以内のTBは@5%を優に超えている

 100万円預ければ年+4万円以上の利息が得られるのだから、銀行に義理堅く「預金」しておく必要は無いアップル社も@4%以上の金利を付けると発表して話題になったが、とにかく「ドル」争奪戦に拍車が掛かる。その反対側で中堅以下の米銀は「資金繰り」が逼迫しており、「預金」獲得のためにTBを上回るような金利提示が必要になってきた。まさに "淘汰の波"

 これはにも暗号資産にも原油などのコモディティ(商品市場)にも言える事だが、TBやMMFが「投資」の強力なライバルとなってきている。彼らが「利上げ」を怖れるのはこういう事。

 「お金」が足りなくなる大きな要因 =「インフレ」

 例えば年収500万円の家計で「お給料」が550万円に増えた(+10%)としよう。この間「インフレ」で支出が▼600万円に増える(▼20%)と家計に▼50万円穴が空くこの分蓄えた「預金」が減ることになり、こうして「インフレ」の国はドンドン「お金」が減っていく

 それでもアメリカや日本のような経済大国は国債で「借金」して "先延ばし" にしていけば経済を回していくことが出来る。事実「インフレ」を常態化させながら「借金」を増やして国を大きくしていったのがアメリカ。それでも "収益力" が上がるうちはまだいい。同様に「借金」だけ膨らんだが "収益力" が落ちて「デフレ」に沈んだのが日本だ。

 それを端的に現すのが「実質賃金」↓ ということになる。

 4月勤労統計調査(速報):実質賃金(前年比、除.物価変動)
 ▼3.0% 予想 ▼2.0% 前月 ▼2.3% 13カ月連続減少
 1人当たり現金給与総額(名目賃金)+1.0% 28万5,176円 予想 +1.8% 前月 +1.3% 16カ月連続のプラス
 所定内給与(含.基本給・諸手当)+1.1% 前月 +0.5%
 所定外給与(時間外手当等)▼0.3%、2021年3月▼5.0%以来のマイナス

 さてこの日本も「インフレ大国」アメリカを追うように「お金」が足りなくなっていく。メディアでは「賃上げ」を随分と喧伝しているが、時間外手当が減るなど全体にはそれ程恩恵が及んでいない**「実質賃金」は下がり、企業も家計も「お金の穴」が空き続けている

 **簡単に「首」を切れない日本では企業経営上「賃上げ」には慎重にならざるを得ず、物価に「お給料」が追い付かない。加えて「ゼロ金利」の状態では「預金」に金利も付かず、物価上昇に「お金」が追い付かない。 

 嘘はいかん、嘘は。ー またも日本の十八番 ”先送り戦略” 。|損切丸 (note.com) にも書いたが、8月から強烈に電気代が上がれば「お金の穴」を塞ぐのは困難になる。そろそろ我慢も限界だ。

 「財政健全化至上主義」で国債の利払い費を減らす事ばかりに睥睨していると、肝心の「消費」が落ち込んでしまい、取り立てる「借金」も取り立てられなくなってしまう。そんな事は優秀な官僚諸氏は理解しているはずで、ここは「金利」を引き上げて物価、e.g., コアCPI+4.1%、の半分≓+2%ぐらい「預金者」に返してあげてはどうでしょう。ねぇ、植田総裁?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?