「金利」より「量」 Ⅱ。 ー ”ワールドダラー” と株価。
「金利」より「量」。 ー FOMC@5/4より。|損切丸|noteの続編。
”ワールドダラー”
= FRBが米国内に供給するマネタリーベース+米国以外の中央銀行が外貨準備として保有する米ドル。世界の金融市場にどれだけ米ドルが流通しているかを示す、国際的な過剰流動性の指標の一つ。
長期的にダウ平均は ”ワールドダラー” の動きとほぼ連動。
2020年3月の「コロナ暴落」以降の株価の急騰について肌で感じていたものを、こういう具体的な数値で検証すると合点が行く。 ↓ は ”ワールドダラー” の増減率と世界株価の推移を示したグラフだが、「過剰流動性相場」であったことを見事に示している。
以前 「株式投資」と「金利」の相関関係。|損切丸|note について書いたが、金融工学的に証券や株価の価値を定義するとこうなる ↓
これをもっと単純化して判りやすく示したのが「イールドスプレッド」。株価のPER(1/予想PER)と10年国債金利を金利差で示したものだが、米S&Pでは長期的に@▼3%近辺に収束している ↓ 。ちなみにTOPIXは▼5~▼6%で推移しており、米株対比で割安。
こういうことをとことん突き詰めていたのが、いわゆる ”クォンツ” と呼ばれる連中で、中にはロボット工学や原子力の研究をしていた経歴の持ち主もいる。理論に基づく投資を実践してそれなりの実績を上げていたが、2020年以降の「過剰流動性相場」で苦汁をなめることになった。
もともと おかしいのは株価ではない、金利だ!!|損切丸|note だった訳だが、「異常な低金利」をベースに算出しても株価は割高でショート(売り)から入った株式投資戦略は大やられ。「理論」が「圧倒的な量」に吹き飛ばされ、一部の ”クォンツ” ファンドは白旗を挙げる結果に陥った。
だが「真性インフレ」の顕現化を受けてFRBは「利上げ+QT」を開始。「お金」の逆流はこれから本格化する。
単純に ”ワールドダラー” が2020年3月以前の7兆ドルに戻るとすると、株価は少なくとも2020年末の価格は超えないことになる。現在の株価の動向はそれに沿って動いているように映る。
DCF法を適切に運用するには将来のキャッシュフローと割引率を設定しなければならないが、「インフレ」で物価高騰が予想される時=金利の上昇局面では、将来の「現金」価値予想が極めて困難になる。結果、*DCF法による "正しい株式価値" を算定できなくなってしまう。
アカデミックに書くと小難しくなって恐縮だが、簡単に言えば「金利」が上がった今、株と国債投資のどちらがいいのか比較がしやすくなった。
例えばNYダウを@30,000ドルで買ったとする。10年米国債は@2.85%だから、10年後にNYダウが米国債と等価になるには@38,550ドルになる必要がある(単利計算)。それ以下は「負け」。円をドルに換えて投資する日本人にとっても理屈は同じで、10年後に@40,000ドルを超える確信があるならリスクを取る価値があるが、それ以外なら米国債の方が得。何せ10年間で+28.5%のリターンは「確定」なのだから。
異常な低金利の終焉にあたって、投資家は考え方を改めなければならない。金利がゼロ(あるいはマイナス)の時は「選択肢」が存在しなかったが、今は違う。「金利投資」が有力な「選択肢」になる。
ただ「インフレ」が+8%とか+9%という現状で「金利上昇」が不十分と判断する投資家も多い。結果、長期国債にも株にも投資せず「現金」待機が増えているのは理に適う行為ではある。「お金持ち」の一部は資産の何%かを@3%近辺の米国長期債に振向けているので金利の上昇は一旦止まっているが、これはあくまで「リセッションヘッジ」。「インフレ」への警戒感が後退している訳ではない。
残念ながら「選択肢」を@0.25%で強制的に抑えられている日本人はもう少し辛抱がいるのかもしれない。その間、金利の高いドルを中心に「円安」が進むのはある意味やむを得ない。 「シルバーデモクラシー」に "静かな反乱" 。 ー 「お金」の ”脱・日本” 。|損切丸|note の側面もあろう。だがこのまま「円安」「インフレ」を放置すれば、固定収入の年金暮らしがほとんどのシルバー層も野垂れ死にだ。
「円安」「インフレ」に強い銘柄を選んで "割安な" 日本株に投資するのも選択肢の1つ。気をつけなければならないのは「日銀の心変わり」。アメリカでも突然の パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸|note で相場が急旋回したが、日本も「黒田ライン」といわれる@135円を突破すれば何が起こるかわからない。その辺りは注視していく必要がある。いずれにしても「預金」「現金」だけに集中した投資はもう危ない。