米国債 "逆イールド" の検証。
9月ミシガン大消費者マインド指数 59.5 予想 60.0 前月 58.2
(1年先のインフレ期待) +4.6%に低下 - 2021年9月以来の低さ
(5-10年先のインフレ期待)+2.8% - 2021年7月以来の低水準
昨日(9/16)のミシガン大学指数を含め、直近の景気先行指標を並べてみた。どれもいわゆる ”アンケート調査” なので若干の齟齬はあるが、押し並べて「景気減速」を示唆。企業や消費者の今の "雰囲気" を現している。
ウォール街による年初の「金利@2%運動」や「@3%運動」、 "偽りの逆イールド" を株価を上げるための方便と糾弾(苦笑)してきた「損切丸」だが、 "証拠" が揃ってきた今回は検証してみようと思う。
現在の米国債金利と "逆イールド" 、「利上げ」予報はこう ↓
「利上げ」到達点が筆者も想定した「@4.0~4.5%」に達したこともあり、今回は "偽りの逆イールド" と決め付けるのは危険。FOMCを直前に控え、表面的には米国債の動きが止まったように見えるが、実は激しい戦いが繰り広げられている。主戦場は「イールドカーブ」とTIPS(物価連動債)。
まずは「イールドカーブ」。一時▼15BPまで急縮小していた2-10年は今や歴史的水準の▼40BP以下にまで拡大。*そういう指標、データも揃ってきており、「将来の景気減速を織り込んでいる」と解釈して間違いない。
ではこれを信じていいのだろうか?
金利投資家目線で言うと、現在マーケットは「政策金利@4.25%」を着地点としているが、これで「インフレ」を抑制できる保証は今のところなく、@4.5%、あるいはそれ以上まで金利が上がる可能性もある。ここで5年の@3.63%や10年@3.45%に「お金」をぶち込む必然性は薄い。
では長期金利を押し下げている力はなんだろう。高い確率で「2年債売り+10年債買い」などの「イールドカーブ」取引だ。そうなるとFRBが金利を上げれば上げるほど長期金利は下がるという ”シーソー効果” を生む。金利市場では良く見られる現象だが、あまり調子に乗ると痛い目に遭う事も。
やはりポイントは ”リアル・マネー” の動き。米国債1年は一時@4%を超え、2年も@4%を超えてくれば金利投資家が買いに動く可能性が高まる。現在の「利上げ」予報では2023年央には「利下げ」に転じることになっているが、この時期が延びるようだと金利は上がってくる。
「2年債売り+10年債買い」を仕掛けているトレーダーにとって最大のリスクは:①FRBによる「利上げ」の天井が見えてくる②投資家が1~2年の米国債を買う②「2年売り+10年買い」のポジション解消を迫られる③ ”逆シーソー効果” で10年、30年などの長期ゾーンが売られる(金利は上昇)。筆者にも経験があるが、突然バッサリ斬られたりする(苦笑)。
TIPSも似たような展開。今週だけで5年BEI(予想物価率)は@2.48% → @2.68% → @2.49%とバタバタ動いているが、これも「インフレ」がどの時点で抑え込まれるかの勝負。ただ、「利上げ」の到達点がある程度見えてきたこの段階では長期保有目的のTIPS投資は難しいかもしれない。
パウエル議長が「利上げは必要無い」と言っていた2021年前半からの1年半に渡る「インフレ」レースも第3コーナーを回った。ここからは "勝負" の第4コーナーを向かえる。本命のアメリカにヨーロッパ、中国、**日本と各馬 "ムチ" が入りそうな展開だが、先行逃げ切りか、大外から "捲り" か、はたまた落馬事故か、いずれにしろ気が抜けない。レースの結末やいかに。
1つ付け加えると「金利@2%運動」や「@3%運動」で散々「株買い」を煽ってきたウォール街だが、おそらく今回「@4%運動」はない。最近はむしろ「株が売られる」という論調が目立つ。推測だが必要な額の株は既に売ったので、今度は「株買い」のチャンスを狙っているのではないか。
マーケットで何度も見てきた手口なのでどうしても "天邪鬼" になる。これはわざと北軍が負けると見せかけて株価を落とし底値を拾っていた、という、南北戦争(1861~65)以来の "伝統" の「ユダヤ方式」。この手法で今のアメリカ経済の礎を築いたといっても過言ではない。相場で大事なのは表に出たモノをそのままを信じるのではなく、確かな "FACT"、データに基づいた自己検証をすること。それが長く生き延びるためのコツになる。