続・「インフレ」攻防戦。ー "リセッション" で「インフレ」解消?
「インフレ」攻防戦。ー 「金利」「通貨」「株」を犠牲にする "覚悟" はあるのか。|損切丸|note の続編。
WTI(NYクルードオイル先物)が@100ドルを割り込んだ。日中@111ドルまであったので1日としては凄まじいボラティリティー(変動率)だが、まあ荒っぽいコモディティ(商品)市場としてはこんなものかもしれない。
"リセッション・トレード" = 株・商品・暗号資産売り+国債買い
こういうことをウォール街界隈では言い始めている。またぞろ ”ブーム” を創り出そうとしているようだが、「損切丸」としては "リセッション" というワードがどうにも気に入らない。
ここで原油のみならず、商品市況全般の動きを見直してみよう。
原油(WTI)、天然ガス、石炭、木材(ランバー)、銅、鉄鉱石、小麦、大豆の5年チャートだが、これを見て何かお気付きではないだろうか。
そう、いずれも2020年を境に相場が急騰している。
これで思い当たるのは「コロナ危機」であり、2020年3月の株式市場の「コロナ暴落」以降、2兆ドル超の「お金」が財政・金融緩和でばらまかれた。特にFRBによる金融緩和は異例の「信用緩和」であり、平時では担保にできないような社債まで買い取った。
これはほとんど「ヘリコプター・マネー」(ヘリコプターから「お金」をばらまく行為)であり、株や国債に向かった後に、それでも行き場を失った「お金」がよりリスクの高いビットコイン(BTC)やコモディティに向かった、というのが正しい解釈だろう。
何の事はない、今の「インフレ」騒ぎの張本人は「バイデン・パウエル」コンビということになる。
それを "隠す" ように今更「利上げ」「QT」(量的引締)と繰り出したために「逆回転」が起きているだけ。これが "FACT" 。 "リセッション" は "為にする理屈" に過ぎない。
商品市場の中で唯一違う動きをしたのが Gold(金)↓ だ。
こちらは上昇基調にあったのは2018~2019年で「コロナ暴落」後はむしろ頭打ち。「インフレ」の先行指標とも言われ、コモディティの中では最も成熟した市場だが、一体これは何を示唆しているのか。
実は同様の動きをしていたのが米物価連動債(US TIPS)↓ 。 バフェット氏の日本商社株買いが意味すること ー 8/31日銀バランスシート(速報)と共に。|損切丸|note @2020.9.2 の中でも紹介したが、こちらも「インフレ」を先取りして動き、予想物価率が上がると金利は低下(価格は上昇)する仕組みだ。
つまりGoldとTIPSの動きは「コロナ前」に「インフレ」が顕在化していたことを示している。原油など商品価格の上昇は "上乗せ" で悪化した ”バイデンフレーション” の衝撃。|損切丸|note が正体。
筆者が言いたいのは、底流にある「コア・インフレ」は変わっていないという事。何度か書いているが、日米欧とも人口動態の変化による「人手不足」が根っこにある。だから今回の「インフレ」騒ぎで "リセッション" との主張には相当違和感を感じる。厳しい言い方をすれば、*今の株や暗号資産、商品等の急落は「過剰流動性」バブルではしゃいだ人達が逃げ遅れて騒いでいるだけ。景気後退が原因ではない。
こう論理を展開してくると1つ大きな違和感に出くわす。
"リセッション" → 米国債買い(金利低下)は正しいのか?
筆者も含め、ある程度金利に詳しい投資家なら同じ疑問を持つはず。結論から言うと、この「金利低下」は株価を上げるための "ウォール街" の "都合" に過ぎない。事実、昨日(7/5)も急落後、金利感応度の高いナスダックはプラス圏に転じている。「金利上昇」が彼らのビジネス最大の敵である事を熟知しているが故の "リセッション運動" だ。
とは言え、商品バブル崩壊の過程で "リセッション運動" は続く可能性が高い。現在@+8.6%の米CPIも@+5%ぐらいまでは落ち着くだろう。だが金利系の ”リアル・マネー” は@2.80%以下の水準では買いの手が止まるはずだ。むしろ@2.50~2.70%まで突っ込めば、@3%台で買った米国債の利食いに動く可能性が高く、徐々に頭が重くなる展開を予想する。
これまた3ヶ月以上先の展開になるかもしれず恐縮だが(苦笑)、「コア・インフレ」に立ち帰るまで "リセッション運動" が優勢になるかもしれない。ただいつの時代でも ”ブーム” に惑わされず、絶えず検証作業を続けるのは大事なので、経済指標や ”リアル・マネー” の動きなど「損切丸」でも極力アップデートしていく。1つの見落としが大惨事につながるのは相場では良くあること。 ”浮かれず、へこたれず” 続けていこうと思う。