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2つの「異変」 - 10年米国債のタームプレミアムと「イールドスプレッド」がプラス圏へ

 「金利」に関してマーケットで2つの「異変」が起きている

 1つは10年米国債のタームプレミアム(期間リスクによる上乗せ金利)。通常なら5年より10年、10年より20年と不確実姓が増すわけで、期間が長くなるほど "プレミアム" が付く。この2年間続いた「逆イールド」の方が稀であり、また「コロナ危機」後の+100兆円単位の ”超金融緩和” でマイナス圏へ "ディスカウント" されていた事の方が異常( ↑ 標題添付グラフ)

 最近の米国債の売りにビックリしている人も多いと思うが、「損切丸」的にはやっと「普通」に戻って来た感覚。そう、「金利」はこうでなくちゃ(笑)。これは日本の「ゼロ金利政策」下でも起った事象だが、とにかく ”超金融緩和” "リスクプレミアム" を押し潰し、社債や株価を押し上げてしまう。いわゆる「金余り」による弊害

 そしてもう一つの「異変」が「イールドスプレッド」のプラス化。これは米国S&Pの「配当利回り」が米国10年債の利回りを上回っている事を示唆し、通常では考えられない出来事。ちなみにヒストリカルな標準偏差は▼2~▼4%のレンジ

 「バブル」期の日本の株価でも同じような言説が一部で散見されたが、本格的な株価下落が始まるまで1年以上タイムラグがあった。今回も同じパターンだろうか、それとも...。株価か金利、どちらかが ”高過ぎる” と見る事も出来るが、まだまだ燻る「インフレ」の ”種火” |損切丸 状況下、判断は難しい。投資家には 「お金」が信用できない? - 鍵は ”希少価値” |損切丸 も根強く、「金余り」≓「インフレ」の根は深い

 直近のNYダウ、ナスダック、日経平均等々の株価指数が調整地合にあるのは「金利」上昇が起点である事は間違いない。あとは程度の問題。過去の金融危機のように政府・中央銀行が「金利」、特に長期金利を上手く制御できずに急上昇を招くようであれば要注意。 「本物の危機」の時、金利は上昇する。|損切丸 アメリカもヨーロッパも日本もギリギリの所でマーケットとのせめぎ合いが続いている

 順調に「利上げ」から「利下げ」へフリーハンドを握っているFRBとECBはまだまし"Market is friend" (市場は友達)で市場との意思疎通を図っているからだ。問題は未だ昭和的感覚で「投機筋」などとマーケットを蔑んできた日本だろう

 「ゼロ金利政策」→「バズーカ」→「異次元緩和」「マイナス金利政策」と金融機関を抑え込んで金利を抑制してきたと自負している政府・日銀「マーケットは抑え込める」と "誤解" している節がある。確かに400兆円を超える企業剰余金や1,000兆円余の「預金大国」がそれを可能にしてきた点は否めない

 ただその ”緩み”発行国債の半分以上を ”子会社” 日銀に ”引受” させ、ここに至っている。その限界を如実に表したのが今の「円安」。一般の事業会社が ”子会社” に発行社債の半分以上を ”引受” させたらどうなるか。そんな会社は「資金繰り」に窮していると見做され株価は急落するはずだ。*今の「円安」は原理的にはそれと変わらない

 *「国は通貨発行権があるからいくら国債を発行しても大丈夫」「税は財源ではない!」などと強弁する向きが後を絶たず辟易とするが、一度優秀な財務官僚と面と向かって議論してみればいい。政治家も然りでレクチャーでコテンパンにされるだけ。国民から得た税収をどう使うかが財務の役割で、それ以上でもそれ以下でもない。毎年+70兆円の税収で▼110兆円(内医療費▼40兆円)も使うこの国は完全に "穴" が開いた状態これ以上無責任に国債=「借金」で先延ばしにして自分の子供に負担をおっかぶせようなどとは、少なくとも筆者は思わない

 「賃上げ」が「インフレ」に追いつかず、急激に社会保険料を引き上げられて生活は苦しい。だがここで「減税」「金融緩和」は出回る「お金」を更に増やすだけ「インフレ」対策としては間違っている。そういう警鐘を鳴らしているのが「円安」であり、マーケットの声と捉えた方がいい。「投機筋」が無理やり「円安」を作っているというのは詭弁に過ぎない

 必要なのは今までのような「低金利」「給付金」等の "痛み止め" ではなく、今回の選挙戦で一部政党が主張している ”手術” 、e.g., 医療費の自己負担増。この "痛み" を避けて通れば「円安」「株売り」等別の "痛み" が襲ってくる。1つ希望が見えるのはそういう "苦言" を呈する政党の議席増が見込まれている事。「円安」をきっかけにようやく日本人も目覚めつつある

 今週末はその選挙、来週は米雇用統計、そしてその1週間後には米大統領選が控える。まだまだ2024年相場は終わっていない「金利」の動きに目を凝らしつつ粘り強く対応していきたい

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