「相場」が生まれて「熱狂」し、そして「成熟」するまで。
標題添付のチャートが何か判る方はかなりこれに詳しい人(正解は近年ブームになったある資産の5年チャート)。最も*タイムスケールの違いはあるが相似形のチャートはあちこちにあるので、意外に見分けられないかも。
↓ は上海総合指数(10年)、日経平均(1949~)、ナスダック総合指数(1981~)のチャート。ナスダックだけが過去の高値を抜き、2011年以降は ”別の資産” として発展している。
20数年見てきた経験上でいうと、 "生まれた相場" は①創成期②熱狂期③選別期④成熟期の変遷を辿る。
①創成期
その市場が世間の注目を浴び始めた時期。一般的な例なら「UNIQLOって言うブランドの服が売れているらしい」というように "ブーム" になる前の段階。「相場」なら「値上がり」が噂になって認知度が上がる時期だ。
②熱狂期
噂になった「相場」が広く認知され参加者が増加する時期。その分価格変動は激しくなるが「利確」などの売りをこなして相場が上がると、参加者は段々 ”熱く” なってくる。多少のデコボコはあるが、基本的に「買い」で入った市場参加者はみんな儲かるので「幸福感」に包まれる時期でもある。
③選別期
「幸福」な時間が続いた後に訪れる「試練」の時期。相場は一方方向に上がる訳ではなく、**単純な売買だけではなかなか儲けるのが難しくなる。「損」をした人の多くは対外発信をしないので、世間の話題にあまり上らなくなるのが1つの特徴。
**オプションなどのデリバティブが流行るのは大体この選別期。売買の方向性(δ、デルタ)だけでなく、時間的価値(θ、セータ)を使って「相場が動かない事」に賭ける戦略を取ったりする。ストラドルやストラングルののようにコール(買う権利)、プット(売る権利)両方を大量に売ると相場は一時膠着状態に入るが、権利行使日が近付くと突然値が飛んだりする。まるで「時限爆弾」。厄介な相場である。
④成熟期
③選別期で多くのトレーダー、投資家が振り落とされ、 ”猛者” だけが生き残る。この人達は厳しい生存競争を生き抜いており、見え透いた ”仕掛け” ”トラップ(罠)” は効かなくなる。こうなるとまさにプロ同士の叩き合い。相場は合理的売買で安定するが、その分「一攫千金」の ”夢” は減る。
「ドル円」「米国債」「JGB」等の ”古株” は既に④成熟期に入って久しく、***一気に「大金」を掴むのが難しい。
***2020年後半からの米国債売り相場は「過剰流動性からの正常化」という歴史的転換点だったため、珍しく一方方向の相場になった。 e.g. 10年米国債@0.65%→@1.78%(+1.13%)@103円台から@111円台にラリーしたドル円も同様である。
****メディアが取り上げる機会が減ってきたビットコイン(BTC)はまさに③選別期。続ける人と辞める人がはっきり分かれ、「相場」の ”熱” が引くのが感じられる。米国債売りやFXのドル買いで稼いできた ”古株” トレーダー達も、ある意味③選別期を迎え真の意味の ”腕” が問われる。
****「エルサルバドルが法定通貨としてBTCを用いる」という記事を見て相場の下落を予想したのは筆者だけではなかろう。 ”ゼロサムの原理” からすれば、何も知らない ”羊たち” =エルサルバドル国民が喜ぶような相場上昇を ”血に飢えた狼ども” が許すだろうか。BTC利用を強制される国民が心配。おそらくBTCが流通するタイミングで何か仕掛けてくる。「他人の ”損切り” は拾え」である。
LTCM破綻(1998)の時もリーマンショック(2008)の時も「もうこれで投資銀行業界は終わり」と思った「損切丸」。未だに「アルケゴス」ショックが起きる「モラルのなさ」には呆れるしかないが、今もしぶとく続くのは、金融業界が米国経済のコアをなす一部ということなのだろう。
さて今度はどんなマーケットを生み出そうとするのか。「方法論」はほとんど変わっていないようなので、本稿で書いた「変遷過程」を頭の片隅に入れておくと、少しは「引っ掛かる」確率を下げられると思う。
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