揺れるドル金利市場。ー より詳細な「利上げ」予報から。
アメリカも日本も「ゼロ金利」時代にはまさに ”死んだ市場” だった短期金利。だが中央銀行が動き出すと途端にマーケットの主役に躍り出る。
本来短期金利が専門家の「損切丸」だが、1年以内の金利は正直余り見てこなかった。だがFRBが激しく動くようになると3ヶ月や6ヶ月の金利動向が重要になる。ここは本気になって(苦笑)「利上げ」予報を出してみよう。
これがまた変な「予報」↓ が出ている:
もう突っ込み所満載。①+0.25%はいいとして、②+0.5%に利上げ幅を拡大すればマーケットが大騒ぎになることは必定。おそらくパウエル議長には取り得無い選択肢だ。③6/14に一旦停止するのも不自然。
その後④7/26に政策金利はターミナルレート@5.5%に達するが、直後の⑤9/20にはすぐ▼0.25%「利下げ」。そして⑥⑦11/1,12/13と3回連続「利下げ」。これもおかしい。仮にそんな展開になるなら④7/26時点での「利上げ」など行わないし、③6/14には「利下げ」方向に舵を切るはず。
金利トレーダーはかなり揺れている。ウォール街もファンドも年初からの「早期利下げ」→「株高・ドル安」の目論見が崩れてどうしていいか判らない状態。株やFXのトレーダーも金利に追随しているだけだと「損切り」の嵐。ドル円だけみても▼3%の「ドル安」から+3%の「ドル高」に切り返すなど、壮絶なサバイバルゲームが繰り広げられている。
*エネルギー価格の低下の恩恵を受けるDAXやFTなど欧州株で何とか凌いでいるようだが、これもどこまで持ち堪えるか。CPIで見ても反転上昇する国もあり、アメリカより状況は厳しい。「実質金利」=国債金利ー物価上昇率もかなり低いままで、まだまだ「利上げ」余地が残っている。
ドル短期金利の不可解さを見るにつけ、今後もマーケットは大荒れになること請け合い。そもそもパウエル議長をはじめFRBのメンバーですら揺れているのだから。金利水準が妥当性を持つまではまだまだ時間がかかる。株もFXも思わぬ大規模な「損切り」「レパトリ」(損失穴埋め)が出る可能性もあり、気が抜けない状況が続く。
”ボルマゲドン” (Volatility +Armageddon? )
市場の一部で囁かれ始めているようだが、これはオプション取引を起因とした相場の大変動のこと。筆者も以前指摘したが、儲からなくなってくると手が出がちなのがオプションの売り。手っ取り早く「オプション料」を受け取りたいという心理が働きやすい。
例えば3ヶ月のドル円@125円プット(売る権利)と@145円コール(買う権利)のオプションを両方売る。3ヶ月間ドル円が@125~145円内のレンジに収まれば「オプション料」は丸儲け。最近のドル円の動きを見ていると、そういう取引に傾斜している様が見て取れる。ちなみに「1日」のような超短期のオプション売買もあり巨額取引が為されることもあるので、短期の相場変動にも注意が必要になる。
怖いのは相場がレンジを突き抜けた時。例えば思ったより早く日銀がYCC廃止に動いて「円高」に振れた場合、オプションの売り手は「@125円で売る義務」があるため、相場が下がれば下がるほど損失が膨らむ。FRBが大幅利上げに動いて@145円を突破した時はこの逆。@125円あるいは@145円を境に相場がぶっ飛ぶ。これが ”ボルマゲドン” だ。
相場が激しく動くといかにも儲かりそうに見えるが、実際は逆のケースが多い。「損切り」「レパトリ」で少しでも損を減らそうとするからだ。中途半端に参戦すると大概は ”巻き込まれる” 。
これが最大化されたのが「ブラックマンデー」「リーマンショック」などの金融危機だが、いつも金利上昇がトリガーになっている。だが今は幸か不幸か金融機関の資本・流動性規制が厳格化されており危機は起りにくい。だから今東欧で起きている「戦争」ではないが、決着が付かないままダラダラと辛い状態が続くことになる。これはこれで大変で、気が付いたらスッカラカン、なんてことが起こりうる。
とにかくこれだけ金利の状況が不安定だと、何が起きるか読みにくい。ここに歴史的な日本の低金利脱却が被ってきた時のマグニチュードの大きさは正直想像が付かない。2023年に限って言えば、勇敢な人の方が討ち死にする確率が高い。相場も人生も死んだら終わり。少し臆病なぐらいが丁度いい。「休むも相場」である。