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(続報)ボラティリティー(変動率)急上昇が引き起こす ”VaRショック” 再び。ー 「商品相場」恐るべし。
昨日(3/9)の原油相場を見て、改めて「商品相場」の恐ろしさを実感した。アジア時間で@130ドルに肉薄していたWTI先物が、NY時間に一時@103ドルまで下落というから、半日で▼30%近く動いたことになる。筆者自身、この市場でリスクを取ったことはないが、金利トレーダーの感覚、e.g. 方向性、シナリオ設定 etc.、で臨んだらえらいことになりそう(苦笑)。
ニッケルのような流動性の低い "Bold Markets" では、相手がまだ経験の足りない中国勢ということもあって、仕掛け的なショートスクイーズで吹き飛ばすことが出来た。邦銀も米金利先物に参入した当初、米銀に仕掛けられ同じ様な ”洗礼” を受け、日本の商社も「銅」市場で大やられ。とにかく "New Comer" (新参者)はターゲットにされやすい。
だがさすがに金(Gold)と並ぶ「商品市場の王」原油はそう上手くいかなかった。このところの急騰でファンド等がWTIショートに入ったのを見聞きしていたのでニッケル同様「踏み上げ」を心配していたが、どうも "素人の杞憂" だったらしい(苦笑)。それどころか「踏み上げ」狙いで原油ロング(買いポジション)を持った向きが "逆・VaRショック" で振り落とされた。まさに真剣の斬り合いのような相場。
こういう手法は流動性の高い為替や国債市場では効かない。
ドル円などは前回1998年「ロシア・デフォルト」時、LTCM(ロングターム・キャピタル・マネージメント、ノーベル賞学者マイロン・ショールズ博士が率いた大型ヘッジファンド)の「投げ」で3日で▼25円暴落したことがあったが、それも今は昔。FXの拡大で市場が成熟しており、もう同じ様なボラティリティー(変動率)は期待できない。
そしてマーケットの「流動性の王」は何と言っても国債市場。銀行ががっちり両脇を抑えており、通常なら大きなボラティリティー(変動率)は期待できない。「マーケットの正直者」たるゆえんである。
「米国債」を筆頭にJGB(日本国債)、ドイツ国債と続くが、そのドイツ10年国債がたったの2日で@▼0.08% → @0.21%と+30BPも動いたのには驚いた。筆者は数年間ドイツマルク金利も担当したが、*これだけのボラティリティー(変動率)はちょっと記憶にない。DAXの+8%近い急騰も同様。
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*ユダヤ勢の支配する「米国債」では30BP程度の動きは珍しくない。雇用統計の発表前後に50BPも上下動、なんてことはよくあった。コンプライアンス全盛の今、 ”相場操縦” の疑いがかかる見え見えの ”罠” は仕掛け難くなったが、それでもこれだけの流動性を動かすパワーは顕在だ。その点は「世界一のマーケット」といっても過言ではない。
ボラティリティー(変動率)復活はマーケット正常化の道筋として喜ぶべき事だが、同時に「過剰流動性相場」に慣れきった世代、特にようやく「投資」「売買」で "儲かる喜び" を知り始めた「Y・Z世代」には試練となるだろう。「どうせ戻るでしょ」 相場の終焉Ⅲ。 ー 日本人が考えるべき「時間価値」。|損切丸|note をよく考えて欲しい。**「ガチホ」「積み立て投資」はあまりお勧めできない。
**5年も10年も「持ち値」に戻るまで待つ、なんていうのはまさに貴重な「時間」の無駄。何しろ気分が悪い。その上銘柄によっては「持ち値」まで戻るとは限らないし、最悪「倒産」もある。バブル崩壊後にそうなった人を何人も見たが、全員苦々しい後悔が残っただけ。
高い流動性を持つドイツ国債や米国債市場をこれだけ動かす "エネルギー" を侮ってはいけない。火山の噴火や大地震ではないが、かなり蓄積されている。少しでも外に染み出せばニッケルのように市場全体を吹き飛ばす。FXでもルーブルのようなマイナー通貨は要注意だ。
株に関しては前稿.ボラティリティー(変動率)急上昇が引き起こす ”VaRショック” 再び。ー ”ニッケル・ショック” → "原油ショック"?|損切丸|note でも触れたが、DAXやナスダックが「調整」の目処である▼20%近く(年初来)に達していたので ”狙っていた” 向きがあったのは事実。ただここからこんどん上値を追っていくかというと、筆者は懐疑的だ。
相場は既に ”戦争” から離れ「インフレ+金利」に戻りつつある。株の「イールドスプレッド」で言えば、昨日のリバウンドで@3%台に乗っていたS&Pは@2.8%台に急落している。市場の「利上げ」予想も、3月FOMCでの+0.50%はともかく、ここから半年で+2%のシナリオが復活。
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更に言えば、BEI(予想物価率)に米国債の名目金利が追い付くと想定すると、「FRBの政策金利は@2%が上限」という思い込みは危険。その程度の「利上げ」で今の「真性インフレ」を止められるとは思えず、@3~4%までは想定しておくべきだろう。
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こういう note. を書くと「引退した老兵の戯言」と批判されそう(苦笑)だが、むしろ2018年以降の「超・過剰流動性相場」の方が例外中の例外。売るにしろ買うにしろ、今後はよりきめ細かいマネージメントが必要になるのは間違いない。「ほったらかし投資」で良い思いをしただけに、その "蜜の味" が忘れられないのは理解できるが...。長い長い戦いになりそうだ。