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” Cash is King" → "王" の帰還 ー 鍵を握る米国債の「イールドカーブ」

 押し寄せる「利下げ」の "波" Ⅳ ー 「お金」の "日本還り" がもたらすもの|損切丸 (note.com) からの繋がりで

  ” Cash is King" (現金は王様)

 市場の混乱時にマーケットではしばしばこういう言い方をする。困った時は「お金」。前稿.”必勝法” なきあと彷徨うマーケット ー ここをどうやって生き延びるか|損切丸 (note.com) で ”鍵は日銀の利上げ” という言い方をしたが、より直接的には "王" (お金)の帰還「バズーカ」でJGBをもぎ取られた日本の金融機関が代替で外貨投資してきた額はざっと500兆円"王" と呼ぶにふさわしい巨額である

 2023年までのマーケットはこの "ベースマネー" が基礎となっており、更に「コロナ危機」時に追加された+2兆ドルがこの3年間の相場を主導してきた。 ”ガチホ” や ”ほったらかし投資” が機能したのも全て "王" のお陰。何しろ売っても余った「お金」の行き場がないのだから最強の「押し目買い戦略」が効くのも当然

 怖いのはこれを「長期投資」とはき違える事。確かに20年、30年で見れば株価や不動産の名目価格は一定の上昇を見てきた。だがそれは「インフレ」あってこそ。仮にCPIが平均+3%で推移すれば10年後には1.3倍の値段になるわけで、これは10年国債@3%に投資しても同じ。決して ”ほったらかし投資” が最良なわけではない

 そう言う意味では30年近く「ゼロ金利」だった日本が異常だった訳で、「円キャリートレード」ブームも全てその点に起因している

 実際「基調インフレ」は2016年にはプラス転換しており、原則論を言えばここで「ゼロ金利解除」すべきだった。その後2020~2021年に「コロナ危機」が起きたため "錯覚" が起きたが、2021年に 「お先に!」 ー 着々と進む日銀による「ステルス・テーパリング」。|損切丸 (note.com) に着手した事からも、日銀は全て判った上での政策運営だった可能性が高い

 ここで大きな壁になったのが財務省の「財政健全化至上主義」低金利を維持するために「GOTO」キャンペーン等で補助金をばらまき、それを 

 CPIの「低め誘導」。ー お給料も年金も国債金利も全て「低め」に。|損切丸 (note.com)
 
「CPIの誤謬」。- 日本で「賃金」が上がらない理由。|損切丸 (note.com)

日銀が「利上げ」出来ないよう抑え込んだ。当然「年金」も「お給料」も低く ”誘導” され、これでは「五公五民」への布石と指摘されても仕方が無かろう。まあ前総裁が元財務官なので "そういう事" だったのだろうが、それにしてもやることがあからさま。最後っ屁の「国債無制限指値オペ」は酷かった。これではマーケットが 「円、どんどん売ります!」の免罪符。ー 世界的な「真性インフレ」下、「金融緩和」しているのはトルコと日本だけ。|損切丸 (note.com) と捉えても仕方がなかろう

 ただ強すぎる "薬" は副作用も大きい「円安」誘導は上手くいったが、そこで止まらないのがマーケットの怖い所。効き過ぎた "薬" をテーパリング(=元々 ”薬抜き” の意味の医学用語)するには大きな痛みを伴う。それが現状。ただ今回は ”薬抜き” しないと高熱(=インフレ)で体が持たない

 ここからはここ数年の「押し目買い」相場とは全く異なる展開になる。30年前を知る筆者のようなオールドタイマーにとっては ”逆回転” が起る感覚。*「長期投資」の甘言に乗った ”ガチホ” や ”ほったらかし投資” は厳しい局面を迎えるかもしれない

 巷では「新NISAが大変!」のような解説が目立つが、2024年に始まったばかりでその額はせいぜい2兆円「オルカン」も流出超に転じたようだし全然大変じゃない(苦笑)。むしろ1,000兆円近い "ベースマネー" 乗った「マグニフィセント7」やビットコインの変調が心配ではある

 「利上げ」に合わせて▼2兆ドル近く引揚げてきたFRBも、さすがに限界を感じているのだろう。ここにきて「利下げ」に転じたのはそういうこと。ウォール街は歓迎のようだが、過去のパターンでは金融緩和初期に反発した株価はその後下落基調に転じている「株価至上主義」のアメリカでは株価の下落は個人消費など広範に影響が及ぶため、早めに動いて来た印象だ。まさにリセッション(景気後退)を防げるかどうかの瀬戸際日本を含め海外資本の逃避を促す「ドル安」にも注意が必要

 「クラッシュ」を起こしたくないのは日銀も一緒。まず第一関門の「ゼロ金利解除」では「ドル円」が▼20円、日経平均が▼4,000円下落するなど強めの反応が起きたが、株価も戻しておりここまでは上出来。ここからは「円安」に戻らないようマーケットを睨みながら慎重に「利上げ」を探っていくことになる。とりあえずは@1%が目標だろう

 個人的には "王" の帰還で「お金」が戻ってくるJGB(日本国債)や日本株はさほど心配していない。やはり恩恵を受けてきた米株、そしてその大元になった米国債の動きが気になる「利下げ」局面入りで今は買われている(金利は低下)が「ドル安」が本格化すれば長期債は売りに転じ「イールドカーブ」で言えば「スティープニング」(長期>短期の傾斜化)が起きる

 「インフレ」も含めFRBが上手くコントロール出来るか"サバイバル" のポイントはその1点に集約される。政治的配慮が過ぎて「利上げ」が遅れ ”バイデンフレーション” の衝撃。|損切丸 (note.com) を生み出した張本人がパウエル議長だけにかなり不安は残る。だから筆者は未だに積極的に「ドル買い」にいけない


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