ヨーロッパが来た! ー 「さよなら低金利」(但し日本は除く?)。
ヨーロッパ=ユーロの国債金利上昇が激しい。2021年前半まであれ程頑なに「インフレは一時的」と言い放っていたのが嘘のような変貌ぶり。変化の背景にあるのは、やはりエネルギー価格の高騰。事実3月のCPI(年率)は欧州各国で軒並み急伸 ↓ 。もはや "緊急事態" レベルである。
ドイツ @+7.3% ← 2月@+5.1% (変化+2.1%)
フランス @+4.5% ← 2月@+3.6% (変化+1.1%)
スペイン @+9.8% ← 2月@+7.6% (変化+2.2%)
イタリア @+6.7% ← 2月@+5.7% (変化+1.0%)
ドイツ2年国債は遂にプラス金利まで浮上( ↑ 標題チャート)、ECB理事からも「今年9~12月の利上げ」の声が聞こえ始めた。マーケットも向こう1年間で+1%の「利上げ」を織込み、明確にアメリカを追い始めている。
今回の侵略戦争をきっかけに近い将来 ”ノルドストリーム” からの天然ガスが途絶える事態も想定され、更なる「インフレ」に対し金利調整が必須。イタリアでは1ヶ月の電気代金が13万円を超える家庭もあるようだから、せめて金利で国から ”給付” する必要もある。一種の経済対策でもある。
少し前までは中国国債金利、e.g. 10年@2.83%、が突出して高い印象があったが、YCC(Yield Curve Control、長期金利のイールドカーブを操作しようとする金融政策。日銀が10年JGB(日本国債)を@0.25%にロックしている政策がそれ)を断念したオーストラリアや、ヨーロッパでもギリシャの10年国債が中国の名目金利に接近。@2.8%台の金利は既に「高金利」ではなくなり、市民も投資家も「金利」を見る "目線" は着実に上がっている。
こうなると日本の「低金利」が突出して際立つ。ある意味2007年以前、日米の金利差が4%以上あった時代に戻るとも言えるが、状況は大きく変化:
つまり日本は2007年以前のような「低金利政策」を維持できる環境ではなくなっている。今の「円安」は必然であり、あとは "程度" の問題。動きが急だった分スピード調整は起きているようだが、このままでは流れは止められない。特に「円安」と「貿易赤字」のスパイラル現象は深刻だ。
必要な施策としては:
産業構造の変革は2~3年でどうにかなるものではなく、時間稼ぎとして日銀の「利上げ」シフトは不可避。現総裁は「バズーカ」の亡霊(苦笑)に囚われているようだが、2021年前半からのECBの "変節" 同様、突然の "宗旨替え" が起こるだろう。おそらく*YCCは放棄せざるをえなくなる。
それでは何故アメリカは+2~3%「利上げ」しても平気なのか?
その答えも実は「金利」が語っている。
日米欧中を「企業」に見立てて比較して見よう。
まずはアメリカ。疑いの余地がない世界一の「大企業」だが、驚くべきはその大きさではなく中味。借金は59兆ドル(7,000兆円強)と日本全体の約3倍もあるが、そのほとんどが有望な産業投資に振向けられ、しかも膨大なリターンを得ている。その結果が+40兆ドルを超える米株の時価総額であり、3%程度の「利払い」ではビクともしない。GAFAをはじめ、パンデミックや戦争で製薬会社や軍需産業も相当稼いでいる。
一方対照的な日本は、過去の栄光にしがみつく典型的「オールド・エコノミー」。世界3位の規模は保っているが、経営の根本は「現状維持」。 ”アメリカ・コーポレーション” のような積極投資は行ってこなかった。結果、経営はじり貧状態なのに「接待費」等の無駄使いが止まらない。どんなに低金利でも文句を言わない社債(国債)の保有者に救われてはいるが、最近赤字が嵩んで "外" からの借金も考えざるを得なくなっている。
中国はいわば勃興する新興企業。「安売り」を前面に世界2位の規模に成長し、「借金」も ”アメリカ・コーポレーション” 並みの59兆ドル。事業拡大優先で不動産投資に邁進したが雲行きが怪しくなってきた。日本で言えば、バブル期の西武やダイエーのイメージに近い。
ヨーロッパを代表するドイツは「借金」を悪とした「ケチケチ会社」。ただ周辺国は金使いが荒く、援助、指導に四苦八苦。「コスト」に拘り過ぎて、工場稼働のためのエネルギー購入先とダントツの販売先を、2つの「ワンマン会社」にあまりに傾斜し過ぎたことが経営リスクに。売り先と原料仕入れ先の分散を迫られている。
こうやって見ると「金利」は多くの事を物語っている。
・ドンドン金利を上げても平気なアメリカ
・本当は嫌だったが「利上げ」に向かわざるとえないヨーロッパ
・未だに社債(国債)所有者の "善意" にすがって変わろうとしない日本
・「利下げ」しても「実質金利」が下がらず、借金返済が困難な中国...
手前味噌になるが、2020.4.18 コロナ後の世界 Ⅱ - これから起こりそうなこと。|損切丸|note で予想したことが2年越しでやっと実現。侵略戦争の勃発までは予想できなかったが、世界が2つに分断されて「ブロック化」しているのは紛れもない事実。「インフレ」の起点になっている。
まあ他国の事はとにかく、日本人として気になるのは日本がどうなるか。マーケットが「円安」という明確なメーセッジを送っているのに、政府・日銀は未だに「現状維持」に固執しているように映る。そうやって衰退していった "Rising Sun" をいくつも見てきたが、期待も込めて「ここが勝負所」。Z世代は着実に育っているので、あとは「オールド・エコノミー」が邪魔しないこと。円金利上昇がそのサインとなる。
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