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「どうせ戻るでしょ」 相場の終焉Ⅲ。 ー 日本人が考えるべき「時間価値」。
「侵略戦争」で「どうせ戻るでしょ」 相場の終焉はほぼ決定的。日経平均は@26,000円を割れ、ダウ先物も@32,300ドル突入(▼700ドル)など、相場は明らかにフェーズが変わった。
「10年も経てば必ず戻ってくる米株は ”ガチホ” (何があっても持ち続ける)」「米株の毎月積立ては継続」「下がれば安く買える」
若いが故の "向こう見ず" も長期投資戦略も良い。実際長期の米株チャート ↓ を見ればそう思えてしまうのも無理はない。NYダウは30年で実に10倍になっており、バブル高値(1989.12.29 @38,915.87円)さえ更新できていない日経平均とは対照的。米インフレ率が平均+3%としても、物価上昇分は+100%(2倍)程度であり、その差は歴然だ。
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「君たちが買っているのは ”時間” だ」
これは残念ながら2015年のお亡くなりになってしまったウルグアイの「世界一貧しい」ムヒカ大統領の名言だが、なかなか言い得て妙だ。近年なら宅配サービスが典型的だが、*自分が忙しい、あるいは面倒くさい分の ”時間” を上乗せして払っていることになる。持ち帰りのお弁当やお総菜もそう。
*筆者はアイスコーヒーが好きで、退職前まではお気に入りのコーヒー店で売っているボトル入りを良く買っていた。だが退職後に「自分で煎れたら?」と奥さんに言われ、渋々豆を買って自分で煎れたが、味も調整できるしコストは3分の1以下。結局有り余る ”時間” を「お金」に戻す事になった。何でも自分で作ればかなり安上がりになるものである。
”買っている” を ”投資” に置き換えても同じ。例えば米株の ”ガチホ” 戦略だが、NYダウがここで▼30%下落しても10年後には元へ戻るかもしれない。だが、例えば3年後に病気で入院とか、家を購入とかの必要がある時に株価が下落していたら「損切り」するしかない。「借金」すれば利息がかかる。これが**日本人には決定的に欠けている「時間価値」の考え方。
**そのような特殊事例抜きでも、例えば10年米国債を@2.0%で買えば10年間のリターンは単純計算で+20%。株が▼30%から米国債と同等のリターンを得るには+50%が必要だが、それは確定されたものではない。過去の30年と未来の30年が同等になるという考え方は危険でもあり、天邪鬼の筆者は過去に良かった銘柄はこれからは苦戦するのではないか、と考えてしまう。大体目の前の「侵略戦争」さえろくに予想できないのに30年後を確定的に考えるのは無理がある。「おまかせ」「積立て」で相場から目をそらしているだけなら、あまりお勧めできない。
「毎月10万円貰えるバイトと1年後に150万円貰えるのどっちがいい?」
Z世代にあたる娘になぞなぞで聞いてみたが、思いの外「的確」な答えが返ってきてビックリ。
「1年後にその会社が続いている保障があるの?」
これは「時間価値」と並立する「時間リスク」を言い当てている。「損切丸」で何度かご紹介している相場用語のNPV(Net Present Value、"将来価値" の現在への引直し)が同じコンセプトで、よく20年や30年のスワップを精算する時に用いる。いわゆる「時価会計」の考え方。相場のプロはどこの市場でも常に「時間価値」「時間リスク」を考えて売買している。
”65歳から支給を100として、60歳からが▼30%(=70)、70歳からが+42%(=142)”
この note. を読んでいて 年金資金総額 分岐年|損切丸|note を想起した方は大分勘が良い。この場合「時間リスク」は「自分がいつ死ぬか」。ほぼ推測不能であり、これに対する▼30%や+42%の「時間価値」が適当なのかは検証不能。はっきり言って ”バクチ” だ。「お金」に余裕のない人なら60歳から▼30%で受け取る「時間価値」の方が高いかもしれない。
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”ガチホ” も「おまかせ」も「積立て」も頭から否定はしないが、「相場から目を背けるため」なら感心しない。リスクを負う以上、いつ何時でも「撤退」「損切り」できるようマーケットと向き合う必要がある。そうでないと「いつも上手くいかない」と後悔が続いてしまう。
第2次世界大戦後の国際体制の下で、核保有国によるあからさまな「侵略戦争」は初めてではないか。大変な事態には違いないが、株や他の資産市場の "調整" はあくまで「過剰流動性の修正」が主因であり、「戦争」は ”相場の為にする理屈” と筆者は捉えている。
「戦争が収まれば株はドッカーンと戻る」
もしそう "祈っている" なら空振りに終わるかもしれない。今の「インフレ」は強力であり、金融引締はいずれにしろ不可避。それこそ2021年前半までのような「どうせ戻るでしょ」 相場は期待できまい。
バブル崩壊以降、30年以上 ”日本株の塩漬け” に苦しんだ人を何人も知っているが、10年は長い。それこそ「時間の無駄」だ。「時間価値」「時間リスク」は人それぞれであり、その点を良く考えれば、こんな世の中でも案外「出口」が見つかるかもしれない。特に20~30代の「時間」はとても高価。くれぐれも無駄使いしませんように。