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見えてきた「日経平均@3万円」 ー  「乗り遅れるな!」の号砲は鳴るのか。「 ”ゴルディロックス” 無限列車」。

 昨日(12/4)朝刊に掲載された「鬼滅の刃」の全面広告には驚いた。お父さん達が子供のために駅の売店で並んで新聞を買ったというから凄まじい「ブーム」。映画館で*「千と千尋の神隠し」を立ち見した時は映像技術に度肝を抜かれたが、興行成績で "あれ" を上回るかもしれないとは...。

 *「タイタニック」1997年には「山一証券破綻」「千と千尋の神隠し」2001年「9・11」、そして「鬼滅の刃」2020年「コロナ危機」と映画作品の大ヒットと「クライシス」には何か「縁」があるようだ。

 さてこちらの「ブーム」はどうか。NYダウナスダックも連日の高値更新、遠く霞んでいたはずの「日経平均@3万円」も見えてきた。沈んでいた英・FTSE「ワクチン接種」開始で息を吹き返しつつある。

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 昨日の米雇用統計も非常に "心地良い" 。感染状況の悪化が影響して11月の非農業部門雇用者数+24.5万人と予想(+46万人)を大きく下回ったが、米政府はこれを「追加経済対策」が必要と解釈し、株価が好感。まさに「 ”ゴルディロックス” 無限列車」  ↓ 

 だが「金利市場」の受け止め方は少し違う

 FRB内部では「金利をマイナスにすべきではない」との意見も根強く、「マイナス金利政策」までは踏み込まないと思われるが、「景気悪化」を示す指標を受けて「超低金利政策」がしばらく続く可能性が高まった。結果、2年以内の金利は低く押さえ込まれているが5年超の金利は上昇している。

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 標題に ”イールドチャート” も添付したが、各年限の金利の推移に注目して欲しい。2年米国債の金利が低位を維持しているのに対し、8月以降5年超の金利は上昇に転じている。明確に金利カーブは「スティープニング」(傾斜化)しており、**将来の金利上昇を織り込み始めた

 **前稿(12/3)「物価連動債」研究。↓ もご参照願えればと思うが、「期待インフレ率」を示すBEI(Break Even Inflation rate )も着実に上昇している。10年は@1.92%、30年だと2%を超えて@2.02%に達している

 金利トレーダーは「利上げが遅れれば遅れるほど将来の利上げ幅は大きくなる」と考える。先々金利の "5yr - 5yr"(5年先の5年金利)を見ればわかるが、その動きは加速度を増している。このまま金融緩和を継続すれば更に株価が高騰し、 ”資産効果” によりインフレ傾向が強まるという ”読み” だ。

 だがこの程度の金利上昇では米株価の上昇は止まらない。もちろん金利上昇過程で何度か「調整局面」はあるだろうが、あの国で10年国債@2%程度までは許容範囲。実際にFRBが利上げに動くまで大きな影響はないだろう。

 加えて大事なのは「損切丸」で再三再四指摘してきている「過剰流動性相場」の終わり鍵を握る「日本・鯨」は「日銀の資金繰り」が▼66兆円もの不足に陥っており、既に弾は尽きている。これがこれまで「死んでいた金利市場」を動かす大きな契機になっているのは間違いない

 ただ、ドル金利がある程度上昇すれば「鯨」も利益目的で再度米国債投資に動き出す可能性はある。 ”円投” ベース = ベーシススワップや為替直先を使って為替リスクを負わずに円をドルに換えて運用する手法(10/21 ↓ 金利の上昇余地を計る。ご参照)で見ると、10年で@1.30~1.50%程度まで上昇しないと運用のうま味がない。逆に言えば、そこまで「実需の買い」は見込めず、金利の上昇余地があることになる。なぜか複数の投資銀行が同じ水準を金利上昇の目処と言っているが、偶然なのか(不思議。笑)。

 映画では「心を燃やせ!」というような決め台詞が出てくるが、果たしてマーケットに「火」はつくだろうか。「日経平均@3万円」に向け、「乗り遅れるな!」の号砲が鳴る展開になるのか。個人投資家が鍵になるだろう。

 だが... 「金利」を専門とする者としてはどうしても「金利」に目が向いてしまう。「イールドスプレッド」など金利との関係で今の株価を維持できるのか、未知数の部分も多い。今のところ動きを見せていない「円金利」「JGB」市場がいつ動き出すかもとても気になっている。何せ「誰かが赤信号を渡ると一斉にみんなで渡り出す国」のマーケットである。

  ”炎上” するのは「金利市場」だったりして。

  しばらくは「株高・金利高」が共存するマーケットが続くと予想はするが、”クライシス” 経験者の性か、どうしても身構えてしまう。いずれにしろ「現・預金の価値が減じる未来」は動かし様がなさそうなので、何にどう投資するかは、水準とタイミングの問題だろう。もっとも「過剰流動性」下で長い間はこの2つを論じる事が出来なかった訳だから、マーケットも随分まともにはなってきた。喜ばしいことでもある。

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