"チャイナプレミアム" の出現と中国の苦況
かつて日本のバブル崩壊後 "ジャパンプレミアム” という現象が起きた。筆者は英銀に転職した後だったので邦銀にドルを貸す立場になったが、社内でも邦銀向けのエクスポージャー(貸出資産)を厳格に管理する方向に転換。特に無担保でドルなどを貸し出す資金枠は厳しくなり、奇しくもグローバル管理を任される立場になった
最悪期で "ジャパンプレミアム” は@LIBOR+100~200BPにも及び、特に地銀などからは顔を合わせる度に「貸出枠を!」と要請されるので、営業が頼んできても面会を断ったりしていた
裏を返せば*邦銀向けにドルを貸せばその瞬間に+1~2%儲かってしまう訳で社内では奪い合い。放っておくとシンガポール、ロンドン、NY等勝手にドルを運用してしまい収集が付かないので東京支店で管理する事になった
↑ の記事は同じ現象= "チャイナプレミアム" が発生している事を示唆している。O/N(今日~翌営業日の金利)で+10BP(+0.1%)ということは3~6ヶ月の期間物ではもっと上乗せされており、ほとんど当時の邦銀と同じ事態に陥りつつある
政治的な「米中対立」だけで銀行が信用枠を削る事はないが、不良債権問題の深刻化で中国の銀行への貸し倒れリスクが増しているのだろう。日本がデフレの沼に沈んだきっかけも銀行が「資金繰り」問題に直面してから。そうなると経済の血液=「お金」が回らなくなる
その兆候は中国の輸出入動向にも現れている ↓
2021年以降、輸出・輸入とも減少傾向が強まっており「お金」はどんどん ”脱・中国” を進めている。欧米とのリンク的役割を果たしてきた香港ハンセン指数の下落傾向とも一致する ↓
日本もそうだったが、いくら政府が株価維持のためのPKO(Price Keeping Operation)を発動しても不良債権の損失処理など根本原因を正さない限りこの船は浮上しない。いたすらに時間をかければ「ゼロ収入資産」なだけに金利コストが嵩むだけ。そうはいっても金額が大きすぎるため扱いを誤ればいかに大国でも「デフォルト」の危険もある。もっとも独裁政権だけに "そういう選択" をする懸念もある(かつてのロシアもそう)
見方を変えればそれまで大量に向かっていた「ドル」が行き場を失っており 止まらない「過剰流動性」ゲーム - バローメーターはビットコイン|損切丸 (note.com) の一断面を見るようでもある。「日経平均」はもろにその恩恵を受け、ビットコイン等は上昇に弾みがついている。おまけに米国債をはじめ金利市場が不安定なため状況は複雑
「ドル円」については金融政策のギャップが開き過ぎてトレーダーもファンドも「キャリートレード」に突っ走っている。筆者は財務省の味方ではないが(苦笑)、確かに**「購買力平価」と「円安」の乖離は著しい ↓ 訪日客が「フィリピンより物価が安い」なんていうのはちょっと異常。「新NISA」も相場を押し上げている
「昭和」「平成」と比べて留意しなければならないのは:
①HFTもAIプログラムも銀行や証券会社が創り出しており、特に株式市場においては「買いバイアス」が強い(売りには作動しない)。そして②政府は「インフレ」制御のためにある程度の「利上げ」は行うだろうが、株式市場のクラッシュや「デフレ」は望んでいない。そう言う観点からは相場の暴落よりも一般庶民がジワジワ「インフレ税」を徴収される可能性の方が高い
ただ気を付けなければいけないのは「灰色の巨像」中国。死なば諸共、と世界にケツを捲って「デフォルト」を突然宣言するリスクはゼロではない。そうなると日米欧とも道連れになるのは確実でマーケットも "チャイナプレミアム" も有耶無耶になる。おそらく国際政治の裏舞台ではそういう丁々発止が繰り広げられている。だからこその「戦争準備」なのか...。どうしても 悪い ”胸騒ぎ” |損切丸 (note.com) が収まらない