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「医療費」の "無駄" - これが「財源」?「お金」の "リアル" とは
「103万円の壁」を巡って激しい政治攻防が繰り広げられているが、「医療費」についてちょっと面白い記事 ↓ を見かけたので抜粋して紹介する
「健康保険料高すぎ!」「もう限界」国民の負担を増やす前に厚労省がやるべき、2~7兆円もの医療費を削減できる3つの医療改革とは(集英社オンライン) - Yahoo!ニュース
1.70歳以上の窓口自己負担を一律3割負担とする(▼1.0〜▼5.1兆円)
*窓口負担割合:
0〜6歳:2割(医療費自己負担ゼロの自治体居住者を除く)
7〜69歳:3割
70〜74歳:原則2割(現役並み所得者は3割)
75歳以上:原則1割(一定以上の所得がある場合は2〜3割)
2.OTC類似薬を健康保険の対象から外す(▼3,200億円〜▼1兆円)
*OTC医薬品:薬局やドラッグストアなどで医師の処方箋なしで直接購入できる風邪薬・湿布・胃腸薬・ビタミン剤・うがい薬・目薬・漢方薬など
*湿布は年間54億回も処方され(処方箋1枚あたり70枚。現在は一度に処方できる湿布の枚数は63枚まで)その医療費は▼1,300億円に達する
3.無価値医療を健康保険の対象から外す(▼9,500億円〜▼1.2兆円)
*薬や医療機器が承認されると自動的に保険適用になり、保険収載されるのは日本独自の制度。他の先進国ではしばしば、承認された医療サービスのうち保険でカバーされるのはその一部に過ぎない
*32名の各科専門医と共に同定した無価値医療は33個(暫定)、医療費にして▼1,000〜▼2,000億円。実際には無価値医療の数はもっと多いはず
*アメリカの研究では総医療費の2.0〜2.6%が低価値医療(含.無価値医療)。日本でも約▼9,500億円〜▼1.2兆円の医療費に相当
東京大学 重岡仁先生:日本のデータを使った研究
・70歳になって自己負担割合が3割から1割に減ると、顕著に医療サービスの需要および消費量が増える
・医療サービスの窓口負担が10%増加すると約▼2%需要が減る
・窓口負担の増加によって大きな健康への悪影響は認めない
(理由)高額療養費制度によってカバーされる手術や抗がん剤などの命に関わる医療に関しては受診控えは起こらず、一方風邪での外来受診など健康に影響のない不必要な医療サービスが抑制されるため(※ウイルス感染である風邪には有効な治療はなく、医療機関を受診してもメリットはない)
これで最大▼7兆円保険料が減らせるという。こんなに立派な研究があるならもっと表に出て然るべきだが、財務省・厚労省などが止めているのか、「老人票」が減るのを怖れる与党も野党も知っていて下手な "攻防劇" を演じているのか。いずれにしろ「お金」の "リアル" に迫るならこういう具体的な議論を国会でも闘わせるべきだろう
これを「財源」と呼べるなら「178万円の壁」は明日にでも実現する。そもそも今の与党税調のように「減税するならどこかで増税」のような辻褄合わせに終始すれば「投資」的観点で見ても何の効果ももたらさない。これが「失われた30年」の正体。そのくせ自分の身内や利害関係者に大盤振る舞いするから「借金」=国債残高が1,200兆円まで膨張。そのツケを「増税」という形で国民回しているだけだ。これでは日本経済が復活するわけがない
まあそれでも風邪薬や湿布を貰えなくなる高齢者を中心にブ~ブ~文句が出るのは目に見えており、それで食っている町医者とその背後にいる「I 師会」から "異論" が噴出するだろう。全ては「組織票」という政治圧力が正論をねじ曲げてきた結果だが「6公4民」まで国民負担が増えればもう限界。「I 師会」にも良識派は存在する訳で、もう終わりにする時が来ている
だが70歳以上の国会議員が牛耳る永田町では「何で日本経済の立役者である我々がツケを払うのか!」という感覚は抜け難い。だから「103万円の壁」があんなにウダウダしているわけで何ともいらいらする。多くの人が呟いているように、やはり「選挙」で意思表示するしかない
マーケット的にいうと、こういう「変化」を拒む姿勢はネガティブな反応を生む。「日経平均」が先進国の株式市場で唯一年初来大きなマイナス(▼1,216円、▼3.0%)は偶然ではない。「税金」≓ 国の「投資」のほとんどが ”捨て金” になっており効率的に使われていないからだ
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幸か不幸か「円安」という "黒船" のお陰で日銀はやっと「利上げ」に動き出した。これで+1%なら「国債」(1,200兆円)から「預金」(1,100兆円)へ+10兆円もの「利子」が移動する。これで「正常化」の端緒にはついた。あとはこの国のグランドデザインをどうするのか。10年後、20年後を見据えたビジョンを示さないと「少子高齢化」には歯止めがかからない