「金利」と「イールドカーブ」が指し示すもの。ー 際立つ日本の "異常性" 。
BoE (Bank of England、英国中銀)が+0.5%「利上げ」を決定した。5月のCPIが+8.7%(←前月+8.7%)と高止まりしたことで一部の市場関係者は予想していたが、「利上げ」を一時停止したFRBとは対照的だ。
これは ”コモン・ウェルス” (Commonwlth、旧英国連邦国)のオーストラリアやカナダにも言える事だが、法体系等が似通っているため人件費や「家賃」が上がり易い( 続・日本の「インフレ」の正体。ー 「家賃」が決め手の「低インフレ」。|損切丸 (note.com) 参照)。こう言う局面では人やモノの需要が高まる構造的に「通貨高」になる。アメリカも広義の ”コモン・ウェルス” に入るが、ポンドは「強いドル」に対しても年初来+5%、対円なら+14%も強くなっている。
標題に日米欧の a. 10年国債金利、 b. 政策金利、CPI、実質金利(= a. ーCPI)をグラフにして貼ったが、各中央銀行が「物価」と「実質金利」を目安に政策金利を決定していることが見て取れる。
戦争中のロシアや「大借金」+「不良債権問題」に苦しむ中国は共に独裁国家でもあり極めて特殊だが、「政策金利」と「物価」「実質金利」が乖離している国が2つある。そう、「日本」と「トルコ」だ。
それでも大統領選が終わったトルコでは一度 "首" にした中銀総裁を戻すなど「正常化」を図る動きも見られ、先日+6.5%もの「利上げ」(!)を敢行。もっとも市場では政策金利を@20~40%まで引上げるという予測もあったようだからトルコリラの下落は止まっていない。まだまだ先が長そう。
やはり問題はGDP世界3位の日本の "異常性" だろう。
間違ったFRBによる「利下げ」観測 ≓「逆イールド」によって@130円台前半に戻していたドル円だが、気が付けばもう@143円台。それもこの* "異常性" を鑑みれば当然だろう。
最近爆騰した日経平均も半分は「円」の「通貨価値下落」による名目価格押し上げに過ぎない。マンション価格など不動産価格の上昇も同根。「インフレ」の一部と言ってしまえばそれまでだが、「国富」の観点から本当に日本人のためになっているのか、真剣に考え直して見る必要がある。
日本は「10年国債金利ー政策金利」がプラス、つまり「順イールド」を形成する数少ない国でもあり、その点では必ずしも金利が低いとは言えない。だが如何せん元になる政策金利@▼0.10%が低過ぎる。「お金」に困って「実質金利」が高止まりするブラジルやロシア、中国、ギリシャ、スペインにしてみれば羨ましい限りではあるが、「預金大国」日本も「バズーカ」でそのリソースを使い果たし、 ”水位” は限界まで上がりつつある。
一方2021.12に パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸 (note.com) で「インフレは一時的」を自ら撤回して「正常化」してきたアメリカ。政策金利は@5%に達し、ある意味目的を成し遂げている。その過程で「過剰流動性」解消による株価の調整など紆余曲折はあったものの、ここまで良く堪え忍んだ。最近のマーケットを見ると大幅な資産価格の調整 ≓ クラッシュの危機は去ったように見える。これがあの国の強さの源泉でもある。
FRBによる「利下げ」も向こう1年間は見通せない状況となっており、ようやくFRBとマーケットの平仄が合ってきた。これで市場も安定していくだろう。こうなるとやはり「円」の "異常性" が際立つことになる。マーケットを動かしたくてウズウズしている ”赤鬼” にとっては突っ込み所満載。おそらくドル円を起点に日経平均やJGBで今後も仕掛けてくるだろう。一部の外資系金融機関が東京のスタッフ増員に動いているのも頷ける。
1年半の猶予。ー 対称的に「利上げ」を続ける「借金大国」アメリカ。|損切丸 (note.com) を宣言してしまっている岸田政権並びに植田日銀。果たして ”赤鬼” の揺さぶりに耐えられるのか。これまでも対応を見ていると不安を感じるのはおそらく筆者だけではあるまい。スルスルと@143台まで進んだ「円安」がその "空気" を象徴している。何だか気味が悪い。
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