続・ "Tariff Man" (関税男)の泣き所 - 「世界恐慌2.0」は避けられるか
"Tariff Man" (関税男)の泣き所 - "Deal" の落とし所はどこにあるのか|損切丸 の続編
これはトランプ大統領が就任前に漏らした言葉だが、フーバーとは第31代アメリカ合衆国大統領(1929~1933)の事。「世界大恐慌」の大統領として知られているが、その時の ”失策” をいくつか挙げてみよう:
1.スムート=ホーリー法
「高関税」による保護貿易政策で国内産業を保護。このことが「世界恐慌」を深刻にさせた一因とする分析もある
2.フーバー・モラトリアム
第一次世界大戦で英仏に融資した戦債の返済を1年間猶予。その1年間の間に景気は回復するだろうと期待
「世界恐慌」については様々な考察・研究があるが、おしなべてフーバー大統領への評価は低い。流れとしては第一次世界大戦後に疲弊したイギリス・ドイツ・フランス等に代わってアメリカが「世界の工場」として台頭。アメリカによる覇権が確立した。それを受けて「お金」もアメリカに殺到。その後の株価暴落の遠因となっている
展開としてはリーマンショック(2008)後に「世界の工場」となった中国に似通っており高水準の債務で金利が上昇したことがある。この「高金利」が株価暴落の引き金となったが、どこか今の状況と重なる
そういう歴史的流れを知った上での発言なのか。負債が膨大であることも株価が高値圏にあることも十分認知しているのだろう。それでも同じ「高関税」政策を打ち出す神経が計り知れない。案の定株価は急落し、メキシコ・カナダへの+25%「関税」発動は1ヶ月延期となった
支持者に対して公約を守ったという対面も保ちたいのだろう。不法移民やフェンタニル等の麻薬の流入を止めたことを成果として喧伝したいのかもしれない。とにかく大統領でいる4年間は何が何でも株価を維持させる政策に終始すると筆者は見ている(上手くいくかどうかは別問題)。最終目標は「ノーベル平和賞」との観測も強い。人間、最後は「名誉欲」らしい
それにしても日経平均もビットコインも1,000pts単位でブンブン振り回されてはたまったものではない(苦笑)。どさくさで儲かっているトレーダーもいるかもしれないが、こういう相場では損する人が大勢。「ゼロサムゲーム」なので "取られる側" に回らないよう守りを固めるのが肝要
こうなるとようやく「インフレ」が沈静化して「利下げ」を進めてきたFRB・ECBは金融政策運営に苦慮する事になる。「利下げ」したくて堪らないECBは3月にも追加「利下げ」に踏み切る構えだが「ターミナルレート」を@2%近辺で見ているのは行き過ぎ。FRBに至っては再度「利上げ」転換まで視野に入れなければならない
では日銀の金融政策はどうか。こちらは▼2%を下回る異常な「マイナス実質金利」を是正しなければいけない。幸い(?)日本の家計はアメリカと違って株価下落による悪影響を受けにくい。「国富」を考えれば「円キャリートレード」で膨張した「円安」を正常値に戻すのが先決。従来から筆者が主張しているようにここから@1.5%までは「金利」として株価への悪影響は限られる。銀行・生保株等にはむしろプラスだろう
1点気をつけなければならないのが日銀が ”フーバーにはならないこと” 。500兆円近い過剰流動性を引上げる作業は並大抵では無く、扱いを間違えれば「世界恐慌2.0」の引き金を引いてしまう。だからこそあの異様なまでの慎重さな訳で、財務省やFRB・ECBと綿密な情報交換をしながら「利上げ」に臨むことになる。そういう観点では1月の「利上げ」を混乱無く乗り切ったことは大きな自信になっており、今後は臨機応変に動いてくるだろう
円金利市場は7月「利上げ」を基本線で動いているようだが、筆者はもう少し早い展開、最速5月の「利上げ」を見ている。市場の安定度などチャンスがあれば早めに動いてくるだろう
今後も *「トランプ2.0」の衝撃Ⅲ - アメリカは「鎖国」に向かうのか?|損切丸 をテコにマーケットをブンブン振り回してくる輩は後を絶たないだろう。それでも "Tariff Man" (関税男)の泣き所 ≓ 株価を落とす訳にはいかない、を軸に考えていけば大きな判断ミスは避けられるはず
将棋の対局で見ている客が横でゴチャゴチャ言うのを ”横将棋” と言って忌み嫌われる。スポーツでも何でもそうだが、実際に対戦している本人しかわからないことは多い。マーケットも全く同じ。傍観者、エコノミスト等何の責任も負わない ”横将棋” は無視して自分の感覚を信じること。対戦 ≓ リスクを取っている、のは自分自身なのだから。そうすれば後悔しなくて済む(ちなみに「損切丸」はリスクを取っている前提で書いてます。苦笑)