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「黄門様」はもういらない。

 「選挙と金融政策だけはウソをついてもいい」

 筆者が駆出しの頃、マーケットではこう嘯かれていた。だから78歳の黒田総裁にとっては昨日(12/20)の「サプライズ」は半ば当たり前。さしずめ「黄門様」が正体を明かして「控えおろう!」と「印籠」を出したようなもの。何で文句を言われないといけないのかピンとこなかったかもしれない。

 おっと、30代以下の方には「水戸黄門」シリーズを知らない方がいるかもしれないので一応触れておくと、 ”天下の副将軍” 水戸光圀公がその正体を隠して全国を行脚し、大名などの悪事を暴く勧善懲悪の人気時代劇。最後には ”印籠” ↑ が出てきてみんな恐れ入る、という筋書きだ。

 「最後には正義の味方が出てきて一件落着」的なモノは極めて「昭和的」でもあり、「ウルトラマン」「仮面ライダー」と根っこは同じ。政府や大企業に任せておけば万事上手くいく「高度成長期」はそれで良かったが、日本もここまで豊かになると既に時代にそぐわなくなっている

 思い返せば「バブル崩壊」がその転換点であった。だが政府丸抱えで不良債権処理に取り組んだのは多分に「昭和」を引きずっており、結果時間だけ浪費して上手くいかなかった。その後も大規模な財政支出や「利下げ」を繰り返し、直近では「XXXノミクス」や「東京オリンピック」もいかにも「黄門様」的既に輸出主導から内需型に転換した日本には合わない「供給サイド」=企業寄りの政策モデルのままだ。

 今回の「黒田ショック」はその最後を飾るイベント「黄門様」時代は歓迎された「利下げ」「円安」は ”印籠” のようなものだが、今では「需要」を殺す「悪」に転じて忌み嫌われ始めている。その変遷をマーケットを通して長く見てきた「損切丸」としては隔世の感がある。

 しかし*ネットやメディアの "手のひら返し" が凄いドル円が@150円を突破した時は「ドル円が200円、500円になる!」「日本は破滅」と悲鳴が上がっていたのに、今度は「金利が上がって大変」「急激に▼7円も円高」と大騒ぎ。一体どっちなの?(苦笑)

 九州出身の奥さんと暮らしている東北人の筆者が感じるのは、北に行くほど「文句」が多い、即ち「他人依存が強い」50代以上はまだ「黄門様」願望が強いのかもしれない。聞けばネットでガチャガチャ言っているのはその世代が中心らしい。e.g., イギリス人もワーワー言うが、日本人と大きく違うのは「文句」ではなく「自己主張」が中心

 「損切丸」でもずっと書いてきたが、ここまで極端な「円安」にマーケットが走ってしまったのは、黒田総裁自身が 「円、どんどん売ります!」の免罪符。ー 世界的な「真性インフレ」下、「金融緩和」しているのはトルコと日本だけ。|損切丸|note を与え続けた来たから。あれだけ「金融緩和」の「印籠」をジャジャーンと出し続ければ、こうなるに決まっている

 少なくともYCCの上限金利切り上げは半年前に切るべきカード。そうすればドル円は現在の@130円近辺止まりだった。つまり「放火魔の消防士」、マッチポンプである。今もそうだが「マーケットなど何とでもなる」という「昭和的」驕りが透けて見える。「国債無制限買取オペ」が最たる例だ。

 だが実際には金融技術は格段に進歩し、AIプログラム1秒間に何万回も取引するHFT(High Frequency Trades、高頻度取引)等々、マーケットの姿は激変している。ああいう立場にいるので情報は入っているだろうが、人間70歳も超えると考え方を変えるのはドンドン難しくなる。筆者自身も頭が固くなってきているのを感じるし、80を超えた親を見ていると益々そう。どんなに頭の良い人でも「年」には抗えない世代交代は絶対に必要である。

 前稿 ようやく終わる ”狂気のバズーカ時代” → 本格化する世界の「QT」(量的引締)。|損切丸|note でも詳説したが、今回の決定の "肝"「固定金利オペ」の柔軟化。この辺りは ”知恵袋” と言われる雨宮副総裁が中心となって事務方と揉んだのだろうが、「無制限オペ」を残して総裁の面子に配慮しつつ、対象年限も金額も「必要に応じて」「随時」に変更されている。来年4/8の総裁交代に向けて準備している印象だ。

 次期総裁に中曾元副総裁がなるのか雨宮副総裁がなるのか定かではないが、「AI時代」に合わせて金融政策ももっと科学的なモデルに転換を図って頂きたい。それが時代の要請であり、マーケットを活用しているFRBに学ぶべき点が多い。これは政策全般にも言える事だが「供給型」から「需要型」への転換が急務。そうすれば「少子化対策」が最優先課題になるはず

 「印籠」で全てをひっくり返す「黄門様」はもういらない

 これは同時に我々も金利が上がったの「円安」「円高」「インフレ」だのと「文句」ばかり言うのではなく、与えられた状況に自ら対応していく ”気概” が望まれる。それは時には「投資」リスクを取ることでもあるし、選挙権の行使も含まれる。まずは出来ることをすること。

 凍り付いていたJGB(日本国債)もやっと溶け始めた。これを怖れるのではなく、上手く利用していくこと「預金」にしがみつくのが安全という "神話" は「インフレ」で崩れ住宅ローンも見た目の金利が低い「変動型」が「固定型」より安いという "幻想" も吹き飛んだ。ここからは覚悟を持って挑んだ方が報われる時代。相場が荒れるの悪い事ばかりではない。それだけチャンスも増える。日本人ももっと前を向いていく時が来た。

 

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