「AI」時代のマーケット。ー 相場を動かすのは「人」か「AI」か、それとも「見えざる手」か。
かつて重度の肉離れ(完治3ヶ月)でお世話になった整体師さんに定期的に通っているが、時折こんな話になる。おそらくマッサージは「AI」からは遠い職種だと思うが、*5年、10年経てばどうなるかわからない。
本格的な「AI時代」が到来しているのはマーケットも同じ。いや、マッサージなどに比べれば遙かに「AI」に適した職場だ。1秒間に数千回売買を繰り返すHFT(High Frequency Trading、高速・高頻度取引)が日本株市場に導入された時に専門家に聞いたら:
「例えば個人が証券会社に買い注文を出した時、取引執行にかかる時間が2秒だとすると、その間にHFTが売ったり買ったり繰り返し個人の先回りをして利鞘を稼ぐ」
これで100%確実に儲かる?? 何だか狐につままれたような話だが、要は「成り行き」で買いを出す個人投資家の買値が悪くなるだけ。事情に詳しい投資家なら注文を「指値」に変えるなど対応を迫られたはずだ。(今はどうか判らないが)「買い」局面にプログラムが発動される事が多く、相場の暴落など「売り」局面では作動しないように出来ていた。
とにかく「AI」はデータも蓄積できるし人がやれば数時間かかるような計算も瞬時、筆者が作るようなお手製のエクセルシートなどを機能面で遙かに上回る。**「金利」で面倒な「複利」もお茶の子さいさいである。
マーケットも「多数決」で決まるので「選挙」と似ている。そうなると「個人1回」 vs 「AI数千回」では勝負にならない気もするが、実はここには "落とし穴" がある。HFTが1万回売買すると、そのうち9,999回分は買った分は同額必ず売るし売った分は買い戻す。つまり相場の「需給」に対するインパクトはゼロで、必ずしも「AI」が有利ではない。むしろ「売り切り」「買い切り」の "実需" に基づいた注文の方が相場には重い。
↑ 標題添付はアダムスミスの「国富論」で出て来る「見えざる手」の例として引用されるグラフで、筆者の「相場はあるべき値に落ち着く」という主張とほぼ同義語。中央銀行が制御する「金利」はその最たる例だが、これはドル円のようなFXも日経平均やNYダウなど株価も同じはず。最後は「需給の均衡点」に落ち着く。マーケットではこれが毎秒、毎時間、毎日繰り返されており、だから 相場に "行き過ぎ" なんてものはない。ー マーケットは "リアル" の積み重ね。|損切丸 (note.com)
だが時に相場には「モンスター」が現れる。
古くはオランダのチューリップ相場や1929年世界大恐慌前のNYダウ、或いは景気がいいのに「円高」対策で金融緩和をして招いた日本の「バブル」もそう。いずれも理論を無視した政策で振れ幅が大きくなってしまった。
直近なら「インフレは一時的」と判断を間違えて「利上げ」が遅れたFRB、そして「インフレ」に突入しているのに頑なに「マイナス金利」「国債無制限買取オペ」=YCC(イールドカーブコントロール)政策を続ける日銀と言う事になる。前者の修正はようやく終わりそうだが、後者に至っては「円安」で答えが出ているのにまだグズグズ言っている。
こうなると「人」の弊害の方が大きい。いっそのこと中央銀行の政策判断を「AI」に任せてみてはどうか。正しいデータが入力されて「適正金利」をはじき出せば政策を間違える事もないし、政治家の先生方や財務官僚の顔色を窺う必要もない。10年も経っていずれ「Z世代」に世代交代が進めばそれに近い政策運営になるだろうが、この国はあと10年も待つ余力はない。
「数」も「AI」も所詮「人」が作ったもの。噂の「ChatGPT」も間違いが多い事が指摘されているし「人」が創る物に「完全」はない。逆に言えば「不完全」だから面白いのであって、そこにマーケットや相場の醍醐味が潜んでいる。あとは変化するパターンに「人」がどれだけ対応できるか。
どれだけ技術が進んでも「見えざる手」は無くならない。できれば他の人の "前" に出たいもの。「AI」は使い用である。