アメリカから助け船? ー ”見” の姿勢に入るFRB.
日銀政策決定会合を受けて「円売り」が殺到する中、FOMCが冷や水。FRBは2回連続「利上げ」を見送り ”見” の姿勢に入った。
全米自動車労働組合(UAW)による米拠点の3大自動車メーカー(ビッグスリー)に対するストライキも悪影響を与えた可能性が高いが、米ISM指数は軒並み低下。米国債の買い(金利は低下)を後押しした。
もっともFRBの政策金利は「中立金利」と目される@4.0~4.5%を既に大きく上回っており、ここで小休止するのは極めて妥当な判断。今年米国債でさんざん「損」をした市場もその辺は良くわかっており、拙速に「利下げ」に走ることはない。現状でも2024年後半以降に「利下げ」開始を見込んでいるだけで、本格的に金利低下局面に入ったと見るのは時期尚早だ。
それでも待ちに待った金利低下だけに、米株式市場のはしゃぎっぷりは格別。11~12月に決算期を迎える金融業界への配慮もあるのかもしれない。
ただ喜んでばかりいられない事情もある。例えばヨーロッパ。EU全体でも3Qはマイナス成長の予測が出ており、CPIも軒並み低下。オランダでは遂に年率▼0.4%に陥った。かなりおかしい。
デフレ傾向のはずの中国にも異変。10/31には一時的とはいえレポ金利が@+50%まで急騰。今までにはなかった出来事で「クレジットクランチ」を伺わせる。まさに日本の金融危機時に起きた「ジャパンプレミアム」と同様の現象で、危ない所に「お金」が回らなくなっている可能性が高い。こうなると急速に信用収縮が起き「資金繰り」による「突然死」が増える。
元々「実質金利」が断トツで高かったブラジルも昨日▼0.5%の「利下げ」に踏み切った。欧米もそうだが「高金利」に経済が耐えられなくなってきている。半導体不況も伝えられる中、経済と「インフレ」の綱引きが激しい。
今ほっと胸をなで下ろしているのは財務官と日銀総裁だろう。昨日(11/1)実質「利上げ」措置を施した後に▼2円超も「円」が暴落したのは想定外だったはず。日銀とFRBの現場担当者は密に連絡を取り合っているので、FOMCの結果はある程度予想が付いていたはず。円金利上昇+ドル金利低下の複合作用で「円売り」を止める戦略だったのかもしれないが、 金利差を狙った「キャリートレード」。ー 頼みの綱は「円」「JGB」|損切丸 (note.com) に対する市場の需要を読み誤った。
だが皮肉なことにドル金利低下→円売り抑制は日本の「インフレ」を助長することに繋がる。@150円を超える「円安」は一種の”逆資産効果” を発揮しており、これが収まることは国内の消費を喚起する、つまり景気にはプラスだ。「人手不足」が解消してない現状では「賃上げ」を促すことになるだろう。日経平均の反発がその事を示唆している。
おそらく日銀の政策金利は@1.0~1.5% ≓「中立金利」への「利上げ」路線で変わるまい。年金の運営を考えても、もう「マイナス金利」「ゼロ金利」は百害あって一利無し。財務省が想定している@1.5%に向けて財政のリフォームが進むだろう。あとはタイミングとスピードの問題。総選挙を意識するなら「マイナス金利廃止」と「デフレ脱却宣言」を合わせてくるはず。そう言う意味では引き続き政治の動きには注意が必要になる。