なぜ「円買い介入」は効かないのか? -「円」の需給からアプローチしてみる。
「 "投機" には断固として対処する」
69歳の財務大臣はこう言い続けるしかないのかもしれないが、本当に今の「円安」は "投機" だと思っているのだろうか?
ご自分もFXをやってみるとわかるが、短期の値幅を取りに行くのは結構大変。なぜなら自分が買った分どこかで売らなければいけないからだ。
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つまり大臣が言っている "投機" は売買い同額であり、「ドル円」の「需給」には影響がないことになる。この言い方はまさに「昭和」からの「前例踏襲」であり、今のマーケットを全く理解していない証。これではトレーダーからの RESPECT(尊重)は得られない。
現代のFX市場は何十年もの積み重ねで成熟・洗練されてきており、本来「ドル円」は最も儲けにくい市場の1つ。「昭和」の方々が思うようないい加減なものではない。それがこれだけ一方的に「円安」に振れるのは明確な理由があるからに他ならない。
根本的には 「貿易赤字」→「円安」→「貿易赤字」の "無限ループ" 。|損切丸|note。我々が払っている電気、ガス代等の「円」が毎月▼2兆円ずつ「ドル」に換えられて海外に流失している。この "悪循環" を止めるにはまず「円安」自体を止める必要がある。
それでは「ドル売り・円買い介入」は有効か?
残念ながら「否」。この点を「円」の需給からアプローチしてみよう。
標題は「ドル買い・円売り介入」のフローチャートだが、その手順は:
その結果:
今回の「ドル売り・円買い介入」ではこの真逆が起きる。マーケットでは「金利差」という言葉で語られる事が多いが、正確には「介入」により「円余り+ドル不足」を引き起こす。
「円」の需給だけに着目すると、償還されたFB▼1兆円分が銀行に戻る。つまり「円安」を解消したいのに「円余り」が起きるという矛盾が生じる。この動きを端的に示すのがTONAR(無担保コールO/N金利)の低下 ↓ 。
筆者が 「無理」を押し通す日銀。- 日本国債(JGB)市場の "歪み" が意味するもの。|損切丸|note で
提言:政策金利は最低でも+1%引上げるべき
と主張するのはそのため。「介入」と同時に「円余り」を解消しない限り今の「円安」は止められない。日銀・財務省が何兆円「ドル円」を売っても、結果として余った円はFXで「円売り」に回る。これを止めるにはFRBの「QT」(量的引締)のように「余った円」を日銀が「回収」するしかない。
"投機" "投機" と叫ぶ「昭和感情論」ではなく、「介入」にももっと科学的アプローチが必要。「X、Y&Z世代」はもうその事に気付いている。
「利上げ」反対チームの主な論点が ↓ 。1つ1つ反論を試みてみよう:
①1~2%の金利で破綻するような住宅ローンは、そもそも家計の「資金繰り」に無理があったのではないか。「利上げ」は住宅売却、ローン返済を促し、家計を見直す良い機会になる。
②結論:日銀は破綻などしない。YCC(イールドカーブ・コントロール)を廃止したオーストラリア中銀は量的緩和で買った3,000億ドル相当の債券の評価損で実質「債務超過」に陥ったが、財政措置によって穴埋めされた。日銀にも同じ措置が施される。実はFRB、ECBも同様だ。
③結論:「日本」は破綻などしない。「利上げ」した分の利息は国内の国債保有者や預金者に渡るだけなので日本の「資金繰り」には中立。大変なのは「利息」を払わなければいけない財務省・日銀、ひいては「お金」をばらまけなくなる政治家とその ”支援者” 。
大枠で言えば、+1%の「利上げ」で1,200兆円の国債利払いは▼12兆円増えるが、1,000兆円もの「預金大国」日本では、これは一人当り+12万円の「給付金」が広く配られるに等しい。つまり現在の様に政権に近い一部の勢力だけに「お金」がばらまかれる政策を是正する効果がある。これが本来「金利」が持つ科学的かつフェアな「所得分配機能」だ。
日銀・財務省が(+1%「利上げ」で)▼12兆の国債利払いや日銀保有JGBの評価損▼5兆円を避けるために今年だけで▼30%の「円安」。1,000兆円の「預金」で▼300兆円も「評価損」が出ており、これでは "割" に合わない。
繰り返すが「異次元緩和」「国債無制限買取オペ」で「円余り」を放置したままでは「円安」は止められない。優秀な官僚も判っていて自分達の事情=国債利払い+評価損回避、を優先させるのは悪質なサボタージュ。もっともそれを許容している選挙民にも問題がある。もう「シルバー層」も自分達が追い詰められつつある事に気が付くべき。このままではこの国は怖ろしい「姥捨山」と化してしまうだろう。
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