人民元に付いていく韓国ウォン 其の3 - 「米中(部分)合意」で相場が逆回転?
正直「酷い相場付き」になってきた。トランプ大統領の対中戦略の変化に沿って、株、為替、金利ともドタバタと動いている。しかも今までの流れと反対方向に一気に振れている印象だ。
為替で言うと、まずは人民元。対ドルで一時@7.20近辺まで売られていた人民元は思惑からじりじりと値を戻していたが、昨日の「米中部分合意」の後@7.09まで元高が進んだ( ↑ 標題.ドル人民元1年チャート)。中国からの輸出が回復するわけであるから理にはかなっている。
同様の理屈で韓国ウォンも対ドル、あるいは対人民元でウォン高に振れている。( ↓ 人民元ウォン1年チャート)。中国への輸出が多い韓国でも輸出が回復するので通貨が高くなるはず、との理屈。対人民元で@175近辺まで値を下げていたウォンも@167程度まで急激に戻している。
同様に激しく動いているのがドル円や米国株である。特に米国株についてはちょっと節操がなくなってきており、最近取引を敬遠されている方も多いのではなかろうか?米国金利についても同じような事が言え、これまでの金利低下を一気に戻すような金利の反騰が短期間におきている ↓
1週間で米国債10年物の金利が+20BP=+0.20%も反騰するのは、「米中合意」だけで解釈するのには無理がある。水準で言うと8月15日時点の金利を一気に超えてしまった。取引に厚みがあるはずの米国債でこの動きはちょっと頂けない。技術的に言えば、前回FOMC(9月17~18日)の最中におきたレポ金利の急騰(9月20日投稿.「NY連銀、19日もレポで資金供給へー3日連続。$レポ金利は一時10%へ上昇。」ご参照)が米債ロングのポジションを抱えるトレーダーの心理を不安定にしたと考えられるが、この金利急騰こそ市場の流動性が落ちて市場機能が低下したことの証左でもある。ドル円の上昇はこの米金利の急騰に多分に影響を受けているのだろう。
冒頭で「酷い相場付き」と言う言葉を用いたが、これには理由がある。「投資銀行業界」はおそらくそういう言われ方をして以来、最も厳しい状態にあると言わざるを得ない。欧米の大手銀行グループでは軒並み万単位の人員削減が決行、あるいは予定されており、この流れは当分止まるまい。そうなると収益が上がらない部門、トレーダーが真っ先に削減の対象になり、みんな必死なのである。中には駄目元で無茶なバクチを仕掛けてくるトレーダーもいる。リストラの局面で何度もそういう光景を見てきたが、今回はかつてないような規模の首切りであるから、現場は殺伐としていることだろう。
ドル円も株式市場もアジア通貨も、どれも動きに無理がある。「損切丸」が専門だった金利市場も、特にドル金利はかつてないほど合理的ではない動きだ。「逆イールド」を煽った向きも、最後の勝負に出ていたのかもしれないが、ドルのイールドカーブは徐々に正常化してきている。
この相場は巻き込まれないのが賢明。必要に迫られていない方はしばらく様子見が無難だと思う。(レイオフが進むにつれて)嵐はいずれおさまるが、その過程で相場がどういう動きになるかは理屈だけでは割り切れない。お金に関する事で、生活や大袈裟に言えば命がかかったりすると、人は考えられないような行動に出るのを何度も見てきた。そんな殺気だった戦場に自ら進んで足を踏み入れる必要はない。
大事なのは、おかしいから、とか思い込みだけで向こう見ずに逆張りしたり無理に流れに逆らったりしないこと。今は平時ではない。向こうは巻き込み事故で犠牲になる人を探しているのである。
おりしもこのnoteを書いている10月12日には未曾有の「台風19号」が上陸してきており、カテゴリーが「レベル5」ということで大変な事態になっている。(停電するとかけなくなるから、今のうちに書いておこう)先程から避難勧告やら大雨警報やら喧しいが、今のマーケットも同じような感じがしてきている。「レベル4」から「レベル5」といったところか。今盛んに流れているメッセージが的を得ているようだ。
「命を守る行動を」
嵐の場所を避けるのが最も賢明だが、それでもそこに留まらなければならない時は、できるだけの備えをして嵐が過ぎ去るのを待つことである。天気はいずれ回復するのだから。平時に戻ってからじっくり勝負すればいい。