「お金」が足りなくなる? ー 米国債の「逆イールド」が示唆する危うさ。
最近のマーケットの流行り言葉に "ミンスキー・モーメント" というのがある。解説は ↑ の通りだが、要は「借金しまくってバブルになった後のクラッシュ」ということ。
ミンスキー氏はシカゴ出身のいわゆる ”ケインジアン” (財政拡大策を説いた経済学者ケインズの系譜)で、後にノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授に影響を与えている。「リーマンショック」(2008)を言い当てたとされ、アベノミクスの論理的後ろ盾ともなった人物だ。
古くは日本の「バブル崩壊」がこれに当るし「リーマンショック」がその最たる例。ただ、ここではこの言葉の起源としてノミネートされている1998年のロシア財政危機を取り上げてみよう。
1998年には大手ヘッジファンド・LTCMの破綻により金融危機が起こり、「損切丸」はど真ん中の当事者。その時の経緯については 1998年と2022年の「債務不履行」。 余りに違う状況と時代背景。|損切丸|note をご参照頂きたいが、とにかくドル円が3日間で▼25円も落ちて、筆者の手元に数兆円もの「お金」が突然戻って来た。まさに「予測不能」。
当時筆者が強く思ったのが「これで投資銀行は終わり」。FRBの指導の下、欧米の銀行が基金を集める「奉加帳方式」でLTCMを救済したが、今後巨額の「お金」を振り回すやり方はしないだろうと確信した。
ところが、である。事態は全く逆の方向へ。これでウォール街をはじめ投資銀行業界には「何かあれば金融当局が救ってくれる」というモラルハザードが蔓延し、「お金」の額は更に膨張していった。その結果大風船が "破裂" したのが「リーマンショック」だった。
さすがにこの時は銀行規制が厳格化され、「資本」と「流動性」=「資金繰り」管理にキツイ縛りがかけられた。大手行は一種の "保険" として年間数千億円ものコスト負担を強いられ、それまでのドル箱であった「お金」を5倍、10倍と回転させる、いわゆるレバレッジ・ファイナンス(Leveraged Finance)が出来なくなった。
2020年の「コロナ危機」も一種の "ミンスキー・モーメント" だったが、世界中の「お金」の流れが止まるような "クラッシュ" が起きなかったのは一にも二にもこの銀行規制のお陰。そう言う意味では学習効果があったとも言えるのだが、問題はその後政府・中央銀行が取った行動だ。
とにかく "クラッシュ" の後始末に懲りていた金融当局は、遮二無二「お金」をばらまいた。その額何と2京円余り。 "破裂" は防げたが、風船はもっと大きくなってしまった。
また "ミンスキー・モーメント" がやってくるのか?
論点は3つ:
筆者の想定:「リーマンショック」のような "大惨事" は起りにくくなっているものの、今回の米地銀の破綻のような "小噴火" があちこちで起きる
悔やまれるのはFRBがボルカールールを一部緩和したことで、D-SIBs(Domestic Systemically Important Banks)の危機管理に綻びが出てしまった事。これは ”緩み” の誹りは免れまい。油断である。
結局「借金」のツケは誰かが払わなければいけないので、始まった"壮絶" な「サバイバルゲーム」 ー 「資産防衛」3つのポイント。|損切丸|note は避けられない。 "生け贄" があちこちで生まれ、我々生活民は「インフレ税」を払わされている。これが現状。
一気に起きる "ミンスキー・モーメント" でない分、逆に対応が難しい面もある。感覚としては「儲ける」というよりは「コスト」をどれだけ軽減できるか。投資や相場には個々の力量が試される。そう言う視点で株もFXもコモディティも不動産も、そして「預金」「現金」も見ていくべきだろう。おっと "小噴火" も続けば "大惨事" もありうるので、気は抜けないのだが。
"警報" は米国債など「金利市場」が鳴らすことになる。今の「逆イールド」はただ脅えて「FRBよ、何とかしてくれ!」と懇願しているだけのようにしか見えず、かえって危うい。モラルハザードここに極まれり、である。
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