強過ぎる「アメリカ」。ー 日本では上がらない「家賃」に変化。
まさに ”強靱” の言葉がピッタリ。発表されたサービス業ISM指数 ↑ は予想を上回る上昇。「インフレ」で四苦八苦する日欧を尻目に一人勝ち状態だ。「憧れのアメリカ」の終焉。ー「音楽」「映画」等のソフト産業の変遷と共に。|損切丸 (note.com) とはいえ、まだまだ「ドルの時代」は続く。これもエネルギーを自給できる国の強味か。
だが「ドル高」が思わぬ伏兵を生みつつある。「金利」である。アメリカでドル建社債の発行が相次いだという需給要因も関係しているが、筆者が注目しているのが 米国債「プレミアム」(=上乗せ金利)の復活と「円安」が迫る「YCC廃止」→「利上げ」。|損切丸 (note.com)
グリーンスパン元FRB議長が名言 "Conundrum" (謎)で継続するアメリカの低金利(特に長期金利)を表現したが、その根幹は「ドル買介入」に伴う日中による1.8兆ドル(現在の推定値)もの "米国債買占め" 。この "謎" が今解き放たれようとしている。
両国にとって今や問題なのは「円安」「人民元安」。今度は「ドル売介入」に臨む姿勢だが、不良債権と過剰債務に切羽詰まった中国が既に動き出している。「ドル売」のためには保有している米国債を売るしかなく、名目金利の高い長期債が多い中国の「ドル売」は米長期金利の上昇に直結する。
ドル円が@148円台に乗せようとしている日銀・財務省も臨戦態勢。米国債トレーダーが "実弾売り" に備えて先回りするのは至極当然だ。今の金利上昇は「インフレ」がどうとか「利上げ」「利下げ」がどうとかの動きではなく、いわば "謎解き" ≓ 「借金大国」アメリカの実情に近付く作業だ。
これにトルコ、ロシア、インド等々「通貨安」「インフレ」に苦しむ国々の「ドル売」が続く。筆者の経験値で言えば、10~30年の米国債金利が@5%を上回っても驚かない。
今のところ多数決で決まるFXでは「ドル金利上昇」→「ドル買」と素直に反応しているが、中長期的には疑念がある。
例えば平均買値@104円近辺と言われる財務省の外貨準備だが、40年近くかかって積み上げた「円キャリートレード」の "壮大な利食い" が起きる。 ”利食い千人力” という相場格言があるが、売りっ放しになる「ドル売」は軽視できない。前回の介入同様、思ったより "効く" 可能性が高い。
米国債を大量に保有する欧州の年金を例に "頭の体操" をしてみよう。
20年に渡る「低金利時代」を経て、保有する米国債の平均金利はおそらく@2%そこそこ。今回の「利上げ」局面でウォール街の「@2%、@3%運動」に引っ掛かって買増したとすれば、多くのファンドがMTM(Mark-to-Market、時価評価)でボロボロ。真剣に「損切り」を考える局面だ。
FXの利益も目論む彼らは、日本の金融機関と違って「為替ヘッジ」などしない。つまり米国債の「損切り」=「ドル売」。加えて損失穴埋めのためのレパトリ(Repatriation)で虎の子の米株を売ろうとすれば「ドル売・米株売・米国債売」のトリプル安になる。単純に米国債売り(ドル金利上昇) ≓ ドル買と信じているとハシゴを外されるリスクもある。
翻って日本。こういうニュースが世間を賑わしたが「遂に始まったか」という印象。自治体に「値上げ」交渉をしたが「どうして値段が上がるのか?」と問い詰められ人件費、材料費の高騰に押し潰されてしまった。同様の事象はありとあらゆる場面で起きる可能性があり、今後は*突然バスの運行が止まったり、介護施設が営業停止したりする事象が想定される。
日米の「インフレ」を比べる時に鍵になるのが「家賃」の動向だ。
賃貸物件>入居人かつ「借地借家法」で入居人が過剰に守られている日本では「家賃」が上がりにくい。だがそれも "臨界点" を迎えつつある。
投資家、あるいは大家さんの立場から考察してみよう。
これだけ人件費、原料費が上がると建築費は爆上がり状態で「家賃」が上がらなければ「利回り」が低下。都心のマンションなら@1~2%なんて物件もザラ。90%以上「借金」で賄っている ”サラリーマン大家” はもっと悲惨。「利回り」低下で新規の建築は止まり、物件を売ろうにも安値での「損切り」が続出。 "淘汰" が起きて供給過剰が是正され始めている。
特に「リモートワーク」の普及で一旦需要が減った都心の反動は顕著で、1時間通勤圏内に "脱出" した人が戻ろうとしても今度は物件不足。マンションを買おうにも既に手が届かない価格だし、40㎡超の1~2LDKの物件を探そうにも「家賃」の上昇が著しい(単身物件にも波及)。固定資産税などコスト上昇に見舞われている大家さんも「家賃」を上げざるを得ない。
この「変化」を見ると東京を中心に「家賃相場」も "臨界点" に達している可能性が高い。「インフレ噴火」はこの日本でも十分に起こり得る。
考えて見ればアメリカの "強靱さ" は "淘汰" を繰り返して培われてきた。逆に ”延命装置” でズルズルと "ゾンビ" を増やしてきた日本は「デフレ」の沼に沈んだ。せっかく「お給料」が上がる環境が整ってきたのだから、ここは「インフレは大変!」と騒ぐのではなく、チャンスと捉える視点が大事。
「金利」を上げたくない「国破れて財務省有り」の官僚も日銀も先手を打って「利上げ」に出る事はなさそう。黙っていれば「円安」でツケを払わされるのは我々一般庶民だ。「ストライキ」「転職」「投票」「投資」etc., etc. 出来る事からアクションを起こす事だろう。もう国は当てにならない。